yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第九十三話 今を生きる -【横浜篇】作詞家 安井かずみ-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第九十三話今を生きる

横浜に生まれ、横浜に育ち、そのグローバル感や文化的な薫りを全身にまとった女性作詞家がいました。
安井かずみ。
アグネス・チャン『草原の輝き』、浅田美代子『赤い風船』というアイドルソングから、『雪が降る』、『ドナドナ』、『レモンのキッス』のような海外の歌の訳詞まで、ヒットを連発する売れっ子の作詞家。
およそ4000曲にも及ぶ創作のジャンルの広さ、歌詞の斬新さ、色濃いオリジナリティは、他の追随を許しません。
そんな彼女の華やかで、アーティスティックな人生は、横浜と無縁ではありませんでした。
生まれたのも横浜。病弱のため、療養したのも横浜の郊外。
中学、高校は、横浜にあるフェリス女学院に通いました。
常に流行の発信地だったその場所は、彼女に類まれな感性を授けました。
特にフェリス女学院での6年間は、彼女にとって終生、忘れられない思い出を育みました。
丘に登る石段、道の両側の緑の匂い、礼拝堂と図書館の神聖なたたずまい。
特にキリスト教との出会いは、彼女の心に大きな錨(いかり)を下ろしました。
「作詞をするのは、一枚の絵を画くのと同じだと思う。とても小さな日常の中のきっかけを頼りに、キャンバスに言葉を置く」。
彼女は、過去の歌も未来の歌も書けないと言いました。
「大切なのは、今、このとき。作詞とは、今、今日私がこの世に生きている証拠の産物であってほしい」。
そのために、彼女が自分に課したこと。
それは、正直に生きるということ。
ほんとうに生きていれば、同じ愛の歌でも、ルネッサンス時代の愛の表現と同じ何かに辿り着く。
ほんとうに生きていれば。
55年の生涯を全速力で走るように生き抜いた、作詞家でエッセイスト・安井かずみが人生でつかんだ明日へのyes!とは?

作詞家でエッセイストの安井かずみは、1939年横浜に生まれた。
家は旧家で大きな屋敷。
長男である父は両親と暮らすことを余儀なくされたが、そこには何不自由ない暮らしがあった。
安井家の念願の初孫として誕生したかずみ。
生まれつき、体が弱かった。
母は、父方の両親にかずみを奪われるように乳母を雇われ、我が娘から引き離された。
母のやることといえば、馬車を引き立てて、義理の母や義理の妹と歌舞伎などの観劇のお供をすること。
嫁と姑の確執があった。
かずみが病弱だったこともあり、父は一念発起する。
旧家のしきたりに逆らい、跡継ぎを弟にゆずり、家族3人で家を出た。
財産も捨て、サラリーマンとしての給料だけで生きていく覚悟を持った。
かずみは常に、明日の命があるかどうかもわからぬ状態。
医者は半ば、さじを投げていた。
一家は、母方の祖父母の家に身をおくことにした。
横浜の郊外には、まだ自然がたくさん残っていた。
父は思った。
「実の母の愛に包まれ、自然に抱かれれば、かずみもきっと元気になる」。
安井かずみの最初の記憶。
それは中庭に面した陽のあたる廊下で、ぬり絵をしたり絵を画いたりする自分の姿だった。
守られた幸せ。
しかしそこに、子ども特有のあふれる生命力は皆無だった。

数々のヒット曲を生みだした伝説の作詞家、安井かずみは、幼い頃、とにかく体が弱かった。
たまには我が子を抱いて、外に出かけたい。
母がそう願い、外出すれば途端に高熱を出し、生死をさまよう。
泣きじゃくる母の背中を見ながら、子ども心に思った。
「私が病弱に生まれてしまったから、みんなに迷惑をかけてしまう。この世に生まれてきて、よかったのかな、私」。
安井かずみに、おもちゃ屋の前でだだをこねた記憶はない。
親を困らせる発想もないし、だだをこねる体力もなかった。
ただひたすら家の中で絵を画いた。
その集中力は、祖父母も驚嘆した。
シローという秋田犬だけが友達だった。
かずみより体の大きなシローは、彼女が耳をひっぱっても尾っぽをつかんでも動じなかった。
父の願いどおり、徐々に体が強くなっていった。
祖母に連れられてのぼった裏山。
そのとき見た夕焼けが忘れられなかった。
安井かずみの感性は、外に出られなかったときに想像力で培われ、外の世界を知ったとき、乾いたスポンジに水が沁み込むように、あらゆる風景を吸収することで完成した。
それでも、彼女の根っこには「自分はいつ死ぬかわからない。自分はこの世に生きていいのかわからない」という思いが宿った。
ときおり熱にうなされると、母が誰かに話している低い声が聴こえた。
「この子は、丈夫です。かずみは健康です。大丈夫、この子はすぐよくなります…」
母の想いに、涙があふれた。

小学校に通うと、安井かずみはさらに自分が特別な存在であることに気づかされる。
通学時は、必ず祖母か叔母がついてくれる。
皮の子ども靴にソックスをはいている生徒は誰もいなかった。
「皮靴の子」と野次られる。
母の手作りの服も、かなりハイセンスだったに違いない。
友達はまったくできなかった。
教室では誰とも口をきかない。
引っ込み思案の性格もあり、集団の中でどう話していいかわからなかった。
安井かずみは大人になって、国内外、華やかな交友関係で有名になったが、彼女の『集団嫌い』は幼いときのままだった。
常に人間関係は一対一を望んだ。
大人への接し方はわかる。
でも同年代の子どもたちとのコミュニケーションのとりかたがわからない。
同級生の鮮やかな生命力に臆する。
不躾(ぶしつけ)な言動に傷つく。
何の疑いもなく明日を信じる感性に驚く。
自分は、他のひとと違う。それが全ての出発点だった。
絵を画く人生を望んだが、あるきっかけで歌詞を書くようになり、才能が開花した。
まだ海外旅行が珍しかった時代にも、積極的に世界中に出かけた。
出会うひとみんなに強烈な印象を残し、人気を博した。
生きることに貪欲、自分の気持ちに正直、ひとはそんなふうに言った。
でも、おそらく彼女の生き方は、諦めと不安に根差している。
「明日、死ぬかもしれない。自分は、生きていていいんだろうか?」
そんな安井かずみが、選んだ道。
それは、今を生きること。
今をほんとうに、生きること。

【ON AIR LIST】
危険なふたり / 沢田研二
Fine On The Outside / Priscilla Ahn
夢がかなうまで / Keri Noble
不思議なピーチパイ / 竹内まりや

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと筍、小松菜の煮びたし

作詞家 安井かずみが生まれ育った地、横浜にちなみ、横浜のブランド農産物にも認定されている、小松菜を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと筍、小松菜の煮びたし
カロリー
151kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 小松菜
  • 1束
  • 筍(水煮)
  • 1/2
  • 油揚げ
  • 1枚
  • 鶏もも肉
  • 1/2枚
  • 【合わせ出汁】
  • 出汁
  • 400cc
  • みりん
  • 大さじ2
  • しょう油
  • 大さじ2
  • 大さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、小松菜は3~4cmに切り、鶏肉は一口大に切る。
  • 2.
  • 油揚げは油抜きをして1cm幅に切り、筍は薄切りにする。
  • 3.
  • 鍋に【合わせ出汁】と筍、油揚げ、鶏肉を入れ、中火にかけて5~10分煮る。
  • 4.
  • 最後に霜降りひらたけ、小松菜を入れ、さっと煮る。
  • recipe LIST

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RECIPE LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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