yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百七十三話 心に革命を -【日本の文豪篇】太宰治-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百七十三話心に革命を

今年、執筆75周年になる小説『斜陽』を書いた文豪がいます。
太宰治(だざい・おさむ)。
39歳で亡くなる、1年前に書かれたこの作品は、戦後の日本にとっても、そして太宰治にとっても、世間を揺るがすベストセラーになりました。
「斜陽族」という流行語まで生んだ小説には、チェーホフの『桜の園』を思わせる貴族の没落が描かれています。
執筆75周年を記念して、今月末から11月にかけて『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』という映画が公開されます。
この映画の脚本は、世界的な映画監督・増村保造(ますむら・やすぞう)と、脚本家・白坂依志夫(しらさか・よしお)が、生前残した草稿を元にしています。
日本映画界を牽引した二人の、どうしても映画化したかった積年の想いが、ようやく結実するのです。
太宰は、『斜陽』を東京・三鷹の田辺肉店の離れで完成させました。
三鷹駅周辺には、太宰ゆかりの場所がいくつも点在しています。
よく通った酒屋の跡地には「太宰治文学サロン」があり、旧宅の玄関前にあった百日紅の木も健在です。
2020年12月8日には、三鷹市美術ギャラリー内に「太宰治展示室 三鷹の此の小さい家」が開設されました。
『斜陽』他、初版本や直筆原稿も展示され、かつての太宰宅を訪れたような、不思議なトリップ感を味わうことができます。
太宰が、『斜陽』で書きたかったこと…。
それは本編の中にある、こんな一文に集約されるのかもしれません。

「私は確信したい。人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」

わずか39年の生涯でしたが、太宰は多作でした。
それを可能にした一因に、多くの作家が筆を休めた戦時中も、旺盛に書き続けたことがあげられます。
検閲を逃れるために、古いおとぎ話になぞらえて小説を書いたり、自らの体験をベースに世の中を描いたりしました。
戦争が終わり、日本に革命は起きたか?
起きませんでした。
それどころか、戦時中、声高に語っていた常識は崩壊し、手のひらを返すように、体制におもねる大人が散見されたのです。
太宰は、思いました。
「この世の中は嘘つきばかりだ…そして自分もまた、その中のひとりだ」
心の革命を最後のよりどころにした無頼派・太宰治が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

文豪・太宰治は、1909年、明治42年6月19日、青森県津軽に生まれた。
本名・津島修治(つしま・しゅうじ)。
津島家の屋号は、「やまげん」。
県下屈指の大地主で、父は衆議院議員、貴族院議員を歴任した。
六男として生まれた太宰は、乳母に預けられ、家督を継ぐ重責から逃れる。
成績は優秀。
ひとの顔色を見て、裏の心を敏感に察知する少年だった。
津軽人としての誇りと、都会へのコンプレックス。
ブルジョアに生まれた至福と、恥ずかしさ。
二つの相反する思いが、彼を孤独にしていく。
よりどころは、小説だった。
16歳の頃には、自分で小説を書いていた。
一方で、非合法な政治活動に参加。
放蕩三昧を心配した家族が早めに身を固めさせようとしたが、20歳のとき、カフェの女給と最初の自殺未遂。
女給は命を落とし、太宰だけが助かる。
政治活動、女性、そして小説。
どれも命がけだった。
太宰の20代は、小説、酒、自殺未遂に明け暮れる。
30歳のとき、井伏鱒二の口利きで結婚。

東京・三鷹に移り住んでから、ようやく落ち着いて作家生活に没頭できるようになった。
ただ、彼の心の革命は、終わるどころか、新しい始まりを迎えていた。

太宰治が三鷹に暮らして、およそ2年後。
太平洋戦争が勃発。
ものを自由に言えない空気が、世の中を支配する。
多くの作家が不本意ながら口をつぐむ中、太宰は違った。
書いた。書いて書いて書きまくった。
まるで己の人生を早く終わらせるかのように。
『女生徒』『走れメロス』『思い出』『新ハムレット』…。
検閲にひっかかり、特高警察に呼び出されても、あるいは空襲警報の最中、暗闇に閉ざされても、小説を書き続けた。
時代の大きな流れに逆らえないときこそ、小さな物語、小説が必要だ。
民衆が何も言えぬときこそ、作家が呼びかけなくてはいけない。
せめて、心に革命を!
『斜陽』の中に、こんな一節がある。

僕は、僕という草は、この世の空気と陽の中に、生きにくいんです。
生きて行くのに、どこか一つ欠けているんです。
足りないんです。
いままで、生きて来たのも、これでも、精一ぱいだったのです。

太宰治は、『斜陽』という作品に、2つのモチーフを考えていた。
敬愛するチェーホフの『桜の園』。
そしてもうひとつは、自分の実家、津島家に代表される名門旧家の没落。
そこに、3つ目のピースが加わった。
それは、太田静子(おおた・しずこ)という女性の日記。
太宰に小説の手ほどきを受けていた静子は、自分が書いた日記を差し出した。
1947年2月。
静岡県沼津の旅館にこもり、太宰は一気に『斜陽』を書き始める。
新聞の連載は大好評。
本が出版されると、大ベストセラーになった。

小説の語り部、没落貴族の令嬢・かず子は、離婚して母と二人暮らし。
酒びたりの小説家・上原に出会うことで、それまでの価値観を疑い、あらたな人生を歩むことを決断していく…。
太宰治は、戦前、戦中、戦後という目まぐるしく変容する社会の中に、普遍的なもの、変わらないものを探した。
ある価値観が崩壊しようとも、人間には、真理があるはずだ。
いや、一度、己の価値観を疑ってみなくてはいけない。
心の革命。
その先にこそ、きっと、世の中を正常に戻す、一筋の光がある。
『斜陽』の終盤。かず子は、手紙にこう書いた。

けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。
どうか、あなたも、あなたの闘いをたたかい続けて下さいまし。

【ON AIR LIST】
斜陽 / Mr.Children
12の練習曲集作品10 第12番ハ短調「革命」 / ショパン(作曲)、小山実稚恵(ピアノ)
意識 / 椎名林檎×斎藤ネコ
ラピスラズリの涙(映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』主題歌) / 小椋佳

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとかぶの薬味スープ

今回は、今が旬の食材、かぶを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとかぶの薬味スープ
カロリー
202kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 100g
  • 長ねぎ
  • 1/2本
  • しょうが
  • 1かけ
  • かぶ
  • 中2個
  • 鶏もも肉
  • 100g
  • 小さじ1/2
  • 【A】味噌
  • 大さじ1/2
  • 【A】白ごま
  • 大さじ1
  • 【A】クルミ
  • 大さじ1
  • ごま油
  • 小さじ1/2
  • ゆずの皮(千切り)
  • お好みで
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。長ねぎはみじん切りに、しょうがはすりおろす。かぶは皮をむき、4等分のくし切りにする。
  • 2.
  • 鍋に水600mlを沸かし、一口サイズに切った鶏もも肉、長ねぎ、霜降りひらたけ、しょうが、塩を入れて中火で煮込む。
  • 3.
  • 鶏もも肉に火が通ったら一度火を止め、かぶを入れ、フタをして5分ほど煮る。
  • 4.
  • 【A】をすり鉢で良く合わせ、(3)に加え、ごま油を回し入れる。
  • 5.
  • 器に盛り付け、お好みでゆずの皮を飾る。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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