yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第八十二話 続けることの凄み -【仙台篇】 評論家 秋山ちえ子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第八十二話続けることの凄み

昨年の4月6日、放送ジャーナリストの草分けとして活躍し、ラジオ番組のパーソナリティを45年に渡って続けた評論家が亡くなりました。
彼女の名は、秋山ちえ子。
大正6年に仙台に生まれた彼女は、99歳で亡くなる最期までラジオを愛し、ラジオでつながったひとたちを大切にしました。
スタジオには、愛用のストップウォッチを必ず持参。
時間どおりにキチンと終わるように気を使いつつ、もちろん、ひとことひとことに、思いを、魂を込めました。
番組の最後には、必ずこの言葉。
「それではみなさん、ごきげんよう」。
秋山は、ラジオの放送をこう表現しました。
「私は、毎日毎日、一粒の種をまくつもりでやっています。毎日まくことが、何より大事。毎日まけば、一粒が、やがて二粒になり、三粒になり、やがて芽を出して、美しい花が咲くでしょう」。
その言葉どおり、彼女が毎年夏に放送し続けた朗読『かわいそうなぞう』は、多くのひとの心を打ちました。
彼女のまいた種は、海外まで届いたのです。
シンディ・ローパーが、秋山の思いに共感して、英語版を朗読してCDにしたのです。
シンディ・ローパーは、こうメッセージをしるしました。
「『かわいそうなぞう』を読んだとき、私は、戦争にはたくさんの哀しみがあるのだということを、とてもとても感じました。戦争は、ほんとうに多くの哀しみに満ちているのです。この本が、世代を超え、若い人にも読み継がれることで、平和のありがたさを忘れないことを願っています」。
秋山ちえ子の願いは、毎年、そして毎日続けることで、たくさんの花を咲かせていったのです。
そんな彼女が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

昨年4月、99歳で亡くなった秋山ちえ子は、放送ジャーナリストの草分け的な存在だった。
1917年、大正6年1月12日、仙台に生まれた。
小学6年生のとき、愛宕山にある放送局で、クラスみんなでそろって唱歌を歌ったのが、最初の放送とのかかわりだった。
マイクの前で歌う、しゃべる。このマイクの向こうに、たくさんの聴いているひとがいる。
それが不思議であり、謎であり、魅力的だった。
その後、東京女子高等師範学校、現在のお茶の水女子大学を卒業。
ろうあ学校の教師になった。
学校の先輩に北条静という女性がいて、「放送研究会」に誘われた。
自作自演の童話のラジオ放送をやった。心が躍った。
5年間、教師をしたが、結婚して夫の赴任先、中国に渡る。
彼女は振り返る。
「確かに、そこで放送との縁が切れてしまいましたが、もしそこで日本で放送に携わっていたら、戦争に関わる放送をしていたでしょう。お国のために戦ってください!というような。戦後、軍に協力したひとは追放でしたから、むしろ中国に行ったことで、私は放送の世界に居続けることができたのです」。
彼女は、まさに放送に選ばれたひとだった。
ひとには皆、そのひと自身がたどるべき道がある。
日々を大切に生きてさえいたら、一度それても、必ず戻る。

ジャーナリストで評論家の秋山ちえ子は、戦後、1948年10月から放送を始めた。
ラジオ局は連合軍の占領下。
GHQによって、CIE、すなわち民間情報教育局が設置され、ラジオ課の指導を受け、放送が行われた。
秋山は、「婦人の時間」という番組を担当した。
当時、日本の女性、家庭の主婦は、社会性が乏しいと言われ、主婦を代表して、日本中をまわりレポートすることになった。
「私が見たこと聞いたこと」というコーナー。
丹那トンネルの取り換え工事の現場を見に行く。
ネズミを退治した長野県の村を取材する。
7年間で300カ所にも及ぶ場所に出向いた。
放送の2時間前に、検閲を受けた。
あるとき、呼び出される。
「学校の給食で、6年生と1年生のコッペパンの大きさが一緒なのは違うのではないか」という記事に赤字が入った。
「これはGHQの占領政策を批判するものだ!この記事はそういう主旨で書いたのか?!」
しばらく目をつけられた。
秋山は、幼い頃から、困っているひと、弱い立場のひとの気持ちに寄り添って生きてきた。
その温かいまなざし、繊細な視線が、放送で共感を生み、やがて彼女を一流のジャーナリストに成長させていった。

ジャーナリストで評論家の秋山ちえ子には、生涯を通じて大切にしていた大きな二つの柱があった。
ひとつは、弱いもの、困っている人たちのために尽くすということ。
そしてもうひとつが、戦争のない世界をつくりたいということ。
世界中を100カ所くらい訪ねたが、普通の人々にとって最も悲惨なのが、戦争だと思った。
自分にできることは何か?彼女は自問した。
戦後まもなく出版された『愛の学校・二年生』の中に、『かわいそうなぞう』という作品があった。
太平洋戦争の終わりごろ、動物園のゾウが3頭、餓死させられた話だ。
書いたのは、土家由岐雄。
秋山は、この話に感銘を受け、8月15日にラジオ番組内で朗読した。
リスナーから問い合わせが殺到した。
「その本がほしい!その本はどこで買えますか?」
本は絶版になっていた。
秋山は作者・土家の許可を得て、小さなパンフレットにしてリスナーに送った。
次の年にはある出版社が単行本にした。
毎年、8月15日に朗読する。
続けること、その大切さを誰より知っていた。
本はあっという間に100刷りを越え、100万部を突破。
作者の土家は、8月15日が過ぎると、秋山にお礼状を送った。
土家は、95歳で亡くなる前年も、こうしたためた。
「秋山ちえ子様 私はもう目が見えなくなりましたけれども、心の目で字を書くことはできます。15日の放送を正座して聴いて、お礼状を書きます」。
秋山は、ラジオの力を信じていた。
ラジオには、決して爆発的に大きな事を起こす力はないかもしれない。
でも、毎日毎日、毎年毎年、続けることで、種は芽を出し、やがて花を咲かせる。
結果を急いではいけない。大切なものこそ、時間をかける。
そうして彼女はストップウォッチを片手にスタジオに入り続けた。
今日という一日に、一粒の種をまくために。

【ON AIR LIST】
True Colors / Cyndi Lauper
Yesterday Once More / Carpenters
経る時 / 松任谷由実

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと浅利のネギ蒸し

放送ジャーナリストの草分けとして活躍し、ラジオ番組のパーソナリティを45年に渡って続けた評論家、秋山ちえ子。今回は、彼女の生まれ故郷である仙台の特産、ネギを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと浅利のネギ蒸し
カロリー
47kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 長ねぎ
  • 1/3本
  • 浅利(殻つき)
  • 12個
  • 大さじ2
  • 少々
  • ラー油
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • 長ねぎは千切りにする。
  • 3.
  • 耐熱皿に(1)と浅利を入れ、(2)をのせ、塩と酒をふりかけ、ラップをして電子レンジ(700W)で約3分30秒加熱する。
  • 4.
  • 蒸せたら好みでラー油をたらす。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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