yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百八十五話 我が道を貫く -【長野篇】思想家 佐久間象山-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百八十五話我が道を貫く

長野県長野市松代町に生まれた、江戸時代後期の開国論者がいます。
佐久間象山(さくま・しょうざん)。
1864年8月12日、象山は京都で、尊王攘夷派の河上彦斎(かわかみ・げんさい)らによって暗殺されてしまいます。享年54歳。
勝海舟や吉田松陰、坂本龍馬を育てた教育者であり、哲学者だった彼は、生涯を通して「東洋の道徳、西洋の芸術」と唱え続けました。
ここでいう道徳とは、人間の規範、儒学に基づいた思想。
ひとの道に反してはいけないという教えです。
本来、儒学の世界では、道徳と政治は切っても切れない関係。
政治家に求められるのは、道徳を心身で具現化できる素養なのです。
この道徳という東洋ならではの美徳こそ、手放してはいけないと、象山は説きました。
そしてもうひとつ、近代化に向けて日本が学ぶべきは、西洋の芸術だと訴えました。
ここでいう芸術とは、絵画や音楽のことではなく、科学技術。
文明発展のために必要なテクノロジーのことです。
実際に象山自身、大砲の鋳造方法を考案し、大砲をつくり、使う、砲術家として、その名をとどろかせました。
長野県松代町の真田宝物館にある、象山記念館には、彼が自作した電気治療器が展示されています。
この機械で、妻のコレラを治療したと言われています。
発明家としての才能もあり、弁も立つ、幕末のカリスマ。
そんな象山は、ふてぶてしいまでに自信過剰な一面を持ち、勝海舟から諭されることもあったといいます。
しかし、彼はどこ吹く風。
40歳のとき、満を持して、群衆や藩主の目の前で大砲の演習を実演。
しかし砲身が爆発し、全てが粉々に壊れてしまいました。
人々は、大笑い。藩主もカンカンに怒ります。
でも、当の象山は高笑い。
「失敗があるから、成功があるんです! 西洋式大砲を作れるのは僕しかいないわけだから、もっと僕に実演の機会を与えてください!」と言い放ったのです。
誰かの顔色を気にせず、我が道を進んだ賢人・佐久間象山が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

幕末の思想家・佐久間象山は、1811年、松代城に生まれた。
佐久間家は、松代藩真田家の家臣。
なぜか跡取りが生まれず、一族は衰退の危機にあった。
ようやく生まれた男の子。それが、象山だった。
この出生のめぐりあわせは、象山の生涯を左右した。
象山は、子どもができぬと家が滅びるという恐怖を叩きこまれ、また一方で、家族親類一同から、これ以上ないほどの寵愛を受ける。
一生は自分一代の闘いではないという刷り込みと、絶対的な自己肯定感を得た。
自分は、この世になくてはならぬ人間であり、次世代につなぐ何かを残さなくてはならない。
そんな人生の命題を、幼くして与えられた。
父は剣術にも長けていたが、学問にも造詣が深く、象山は『論語』『老子』、四書五経の勉強にいそしんだ。
物覚えが速く、運動神経も優れた我が息子に、父はさらなる期待をかけた。
象山が、ときにまわりに対して不遜(ふそん)な態度をとるのを、父は見過ごしていた。
象山はまだ、傲慢が周囲の反感を買うことを知らなかった。

佐久間象山の自信過剰ぶりは、のちにまで伝えられた。
素晴らしい業績を残しながら、正当な評価を得られていないのは、彼の不遜な言動に起因するのかもしれない。
とにかく、敵が多い人生だった。
そんな象山も、己がかなわないと思う相手には、進んで首を垂れた。
16歳のときに出会った、鎌原桐山(かんばら・とうざん)は、人生最初の師匠になる。
桐山は、すごかった。
武技、剣術、小笠原流礼法から、茶道、中国の古典や哲学、漢学まで、全知全能の神のようだった。
象山はおよそ8年間、桐山に、儒学、朱子学を徹底的に叩き込まれる。
ここで、道徳が政治とイコールでなくてはならないという思想にたどりつく。
ただ、何かが足りない。
誰かが説いた思想を丸暗記するのが学問なのか?
自分なりの答えを見つけたい。
一生を賭け、次世代にまでつなげる何かをつかみたい。
佐久間象山は、23歳にして、江戸を目指す。
江戸では、象山書院という塾を開いた。
江戸時代は、200年を超え、閉塞感に満ちていく。
飢饉、天災が続き、全国に一揆が勃発。
もはや、国内だけで経済をまわすのは困難と思われた。
象山の主君・真田幸貫(さなだ・ゆきつら)は、目をかけていた象山に、命を告げた。
「西洋を学びなさい。西洋の文化、技術こそ、明日への扉です」
佐久間象山、32歳の冬だった。

佐久間象山は、藩主・真田幸貫(さなだ・ゆきつら)の命を受け、西洋学の研究に励んだ。
20代の頃、あまりに傲慢な態度で松代藩の重鎮を怒らせたことがあり、一時は幽閉されたが、幸貫は、辛抱強く、見捨てずに重用してくれた。
その恩に報いるためには、西洋学の第一人者になることだと思った。
特に、海を守る、海防、反射炉の建設や大砲を作る砲学は、どの藩より先んじる必要があった。
砲学の権威、江川英龍(えがわ・ひでたつ)は、象山を嫌った。
象山は確かにどの門下生より優秀だったが、不遜な態度に失礼な物言い。許せなかった。
一方の象山は、「そんなまだるっこい教え方では、明ける夜も明けぬ。こっちは勝手にやらせてもらう!」と強気の姿勢で、独学という茨の道を歩む。
孤独な闘い。
まわりからは、バカにされ、陰口をたたかれる。
でも、一歩もひかない。

「傲慢であることの責任は、自分でとる。
オレはオレのやり方でしか生きられないんだ。
言いたいやつは、勝手に言えばいい。
だが、死ぬ間際にきっと思い知るだろう。
ひとの悪口を言っている間に、人生なんて終わってしまうんだ」

【ON AIR LIST】
OWNER OF A LONELY HEART / YES
TOO MUCH PRIDE / Don Henley
BLUES MARCH / Benny Green Trio
へでもねーよ(LASA EDIT) / 藤井風

★今回の撮影は、「象山記念館」様、「象山神社」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
アクセスなど、詳しくは下記のリンクよりご確認ください。
象山記念館
象山神社
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとオクラの梅だれ

今回は、長野市松代町の特産でもある、長芋を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとオクラの梅だれ
カロリー
63kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • オクラ
  • 5本
  • 長芋
  • 60g
  • 大さじ2
  • 梅干し
  • 1個
  • 【A】薄口しょう油
  • 小さじ1
  • 【A】みりん
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、長芋はせん切りにする。梅干しは叩いておく。
  • 2.
  • フライパンにオクラを入れて酒をふり、フタをして弱火で2分ほど蒸し茹でする。霜降りひらたけを入れて、更に4分ほど蒸す。
  • 3.
  • 火が通れば水気を切って冷まし、オクラは小口切りにする。
  • 4.
  • 具材を器に盛りつけ、叩いた梅と【A】を合わせ、回しかける。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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