yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百五十五話 急がず、先をとる -【大分篇】第35代横綱 双葉山定次-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

閉じる

第二百五十五話急がず、先をとる

大分県宇佐市出身の、伝説の力士がいます。
双葉山定次(ふたばやま・さだじ)。
今から、80年以上前の前人未到の大記録、69連勝は現在も破られていません。
しかも当時は、1年間に2場所。
あしかけ 3年以上かけた連勝は、大関でも関脇でもなく、前頭筆頭からのスタート。
そこから横綱になるまでの長い道のりの果てにありました。
双葉山は、現役当時、決して自ら語ることのなかった大きなハンデを二つ抱えていました。
ひとつは、幼い頃から右目がほとんど見えなかったこと。
もうひとつは、右手の小指の先を事故で失っていたこと。
双葉山は、そのハンデを憂い嘆くよりも、自分にしかできない相撲を模索し続けました。
そうして決めた流儀が、なるべく無駄な動きをやめようということでした。
無駄な動きは、相手に自分の思惑を知られるきっかけになる。
彼は決して、「待った」をかけませんでした。
さらに、彼が心がけた戦法は『後の先(ごのせん)』。
後の先と書くこの立ち合いは、まず、相手より一瞬、後に立つ。
でも、当たり合ったあとは、すばやく先をとっている、という戦い方です。
相手より後に立つことで、相手の動きが読めて、低く、いい角度でもぐりこめる。
ただ、そこからの素早さがないと、先がとれないリスクがあります。
右目が見えない分、少しでも長く相手の動きを察知したい。
そんな思いが生んだ、従来のセオリーを覆す立ち合い。
相撲ファンは驚嘆し、感動しました。
急がず騒がず、状況をじっくり見て、最短の道を進む。
そうして彼は、誰も成し遂げることができない偉業を達成したのです。
相撲界のレジェンド・双葉山定次が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

相撲の神様・双葉山定次は、1912年2月9日、大分県宇佐郡天津村、現在の大分県宇佐市に生まれた。
兄と妹を病気で亡くし、子どもは、双葉山ひとり。
父は、海辺の街で海運業をしていた。
6歳のとき、友だちと遊んでいて、右目に何かが突き刺さった。
何が刺さったのかわからぬまま、病院に連れていかれる。
友だちが放った吹き矢だと、のちに言われた。
右目の視力をほぼ失う。
でも、まだ幼かったので、右目が見えないことがフツウだった。
父は、誰が息子の目を傷つけたか知っていたが、追及もせず、息子にも言わなかった。
恨みは心を濁らせる。
我が子に、これ以上何かを失ってほしくなかった。
少し気弱だが、心根の優しい元気な子として育つ。
10歳のとき、母を亡くした。
船に乗り、ほとんど家にいない父。
祖母との二人暮らしになる。
成績は優秀、進学を考えたが、父が木炭の売買で失敗。
多額の借金を背負うことになる。
定次も船に乗り、稼ぐ。
船の仕事は、きつかった。
荷物を積み込むのも重労働だったが、揺れる船の上も大変だった。
大分から広島や大阪まで、何日もかけて石炭を運ぶ。
ただ、この仕事が奇しくも、定次の体をつくった。
荒れ狂う海が、稽古場になった。

大分県出身の第35代横綱・双葉山定次は、幼くして家計を助けた。
でも、今のお金にして2億以上の借金。気が遠くなる。
船のリールを巻き上げているとき、右手をはさみ、小指の第一関節を失う。
それでも船に乗り続け、父を励ました。
ある年の村の奉納相撲。
体格のよかった定次が急遽、出場することになる。
相撲は、弱かった。
相手を投げ倒す術がわからない。
対戦中、「押せ! 押せ!」の声援に従い、押し倒す。
勝った。
気がつくと、連勝。
地元の新聞に「怪童現る!」と掲載された。
立浪部屋から誘いがくると、父は茶の間でうつむきながら言った。
「なあ定次、このままではうちはどうにもならん。どうだろう、相撲とりになってみないか」

15歳で立浪部屋に入門した双葉山定次は、最初の稽古で兄弟子たちを負かし、「あれ、もしかしたら、ボクは強いのかな」と思った。
しかし、これは兄弟子たちのはからい。
わざと負けてくれた。
そこから、厳しい稽古と雑役の日々が始まる。
想像を絶する過酷な船の仕事をしてきた定次には、どんな環境も苦にならない。
むしろ弱い自分が嫌で、誰よりも早く起きて稽古に励んだ。
そんな稽古の虫は兄弟子たちの反感を買う。
石がたっぷり入ったバケツを背負わされ、200回のスクワットを強いられる。
フツウであれば恨みを持つところだが、定次は「有難い」と思った。
「わざわざ、僕を鍛えようとしてくれているんだ」。
やがて兄弟子たちをほんとうに負かすようになり、誰も変な手出しをしなくなる。
双葉山定次は、中国の故事が好きだった。
特に、木でできた鶏と書く、木鶏の話。
木彫りの鶏のように、何事にも全く動じない最強の姿を保つ闘う鶏でありたい。
そのためには、おのれの心が澄んでいないとダメだ。
邪念は、命とり。
右目が見えなくても、右手の小指が相手のまわしにかからなくても、後にして先をとれば、必ず勝てる。
そうして双葉山定次は、レジェンドになった。

【ON AIR LIST】
THE MESSAGE / Grandmaster Flash & The Furious Five
MO MONEY MO PROBLEMS / The Notorious B.I.G. Feat. Mase & Puff Daddy
JUMP AROUND / House Of Pain
KING OF ROCK / RUN D.M.C.

音声を聴く

今週のRECIPE

閉じる

霜降りひらたけの卵炒め

今回は、大分県宇佐市の特産でもある、こねぎを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの卵炒め
カロリー
144kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • こねぎ
  • 1本
  • 2個
  • ひとつまみ
  • サラダ油
  • 小さじ2
  • 【A】酒
  • 小さじ2
  • 【A】鶏がらスープの素
  • 小さじ1/2
  • 【A】水
  • 大さじ1
  • 【A】塩
  • 小さじ1/3
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • こねぎは小口に切る。卵を割りほぐし、塩とこねぎを混ぜる。
  • 3.
  • フライパンにサラダ油をあたため、霜降りひらたけを炒め、【A】を加える。
  • 4.
  • 霜降りひらたけに火が通ったら(2)を入れ、霜降りひらたけにまとわせるようにして火を通し、仕上げる。
  • recipe LIST

閉じる

ARCHIVE

閉じる

RECIPE LIST

閉じる

番組へのメッセージ

閉じる

PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

閉じる

NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

閉じる