yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百八十一話 道を切り開く最初のひとになる -【愛知篇】作家 坪内逍遥-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百八十一話道を切り開く最初のひとになる

愛知県で多感な幼少期を過ごした、近代文学の先駆者がいます。
坪内逍遥(つぼうち・しょうよう)。
岐阜で生まれた坪内は、10歳で引っ越し、18歳まで、現在の名古屋駅近くに住みました。
少年時代の住居跡には、記念碑が建っています。
明治18年、1885年に坪内が発表した『小説神髄』は、それまでの勧善懲悪な物語を真っ向から否定し、小説の概念を芸術の域にまで高めるきっかけになりました。
「小説の主脳は人情なり、世態風俗これに次ぐ」
そう『小説神髄』に書いた坪内逍遥。
ここでいう人情とは、人間の情欲、百八つの煩悩のこと。
世態とは、日常のさまざまな出来事。
それがどんなにささやかでも、大げさでありえない展開より、現実の描写を丁寧にすること。
それまでの文学は文学にあらずと、今なら炎上必至な発言に、世間はざわつきました。
江戸時代の小説は、物語の面白さだけを追求するがあまり、登場人物の心、心情に寄り添うことは稀でした。
さらに、現実を忘れたいひとたちが、リアルな日常の描写を好まず、それゆえ、小説は、奇想天外なひとたちが荒唐無稽な話の中で動き、善が悪を駆逐する、お決まりの展開。
でも、海外に目を向ければ、すでに小説は芸術でした。
坪内は、シェイクスピアの翻訳を手掛けることで、演劇にも目覚めていきます。
小説、演劇、さらには早稲田大学創設にも関わった坪内は、常にパイオニア精神を持った、開拓者でした。
誰もやっていないから辞めておくのではなく、誰もやっていないから、あえて挑戦する。
こんな坪内の心意気が、世の中を変え、芸術の幅を広げていったのです。
彼は、叩かれました。
エリートでありながら破天荒。
常にまわりをざわめかせる。
坪内は、まわりの目を気にして、本来の自分から遠ざかっていく若者を憂いて、こう鼓舞しました。
「やりたいと思ったら、常に開拓者であれ!」
現在の日本文学の礎を築いたレジェンド・坪内逍遥が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

近代文学の父・坪内逍遥は、1859年、美濃国加茂郡、現在の岐阜県美濃加茂市に生まれた。
父は、尾張藩士。
代官所の手代を勤める、いわば、地方公務員だった。
明治維新を契機に、実家がある名古屋に転居。
逍遥は、開国の空気を存分に浴び、海外に思いを馳せる少年として成長した。
父は気難しく、神経質なまでに几帳面であったのと対照的に、母はおおらかで、趣味が広く、歌舞伎を好み、芸事に精通していた。
逍遥は、母の血を受け継ぎ、ひたすら本を読む子どもだった。
貸本屋に足しげく通い、読本、江戸戯作、俳諧や和歌に親しむ。
当時、名古屋には、日本最大級の貸本屋があった。
逍遥は、この貸本屋を「心のふるさと」と呼んだ。
特に滝沢馬琴(たきざわ・ばきん)の作品に夢中になる。
『南総里見八犬伝』を借りて、握り飯を持参し、蔵にこもった。
わずかに差し込む陽のひかりを頼りに、文字を追う。
幸せだった。
次、さらに次へと、ページをめくる。
真似て自分も書いてみる。
それで満足だった。
そんな彼を変えたのは、兄が教えてくれた、英語だった。
異国の文学に触れたとき、逍遥の心に、うっすらと違和感が宿った。
大好きな戯作に、初めて疑念がわく。
「ただ、面白いだけでいいんだろうか。人間って、こんなに単純な生き物なんだろうか」

『小説神髄』で有名な坪内逍遥は、愛知外国語学校に入り、県の選抜生に選ばれた。
17歳の時、エリート教育の最高峰、東京開成学校に見事合格。
東京大学予備門を経て、文学部本科に進む。
大学の寮に入り、あこがれのバンカラ生活が始まる。
どこかで慢心があった。
遊びほうけて勉学を忘れた。
21歳の時、そんな彼を変える、二つの出来事が起こる。
ひとつは、身内の死。
逍遥に英語を教え、学問の大切さを説いた最愛の兄が、病で亡くなる。
立て続けに、母、父もこの世を去った。
自分の立身出世を信じ、勉学の環境を守ってくれた肉親の死は、彼に刃を突き付けた。

「おまえは、それでいいのか?
そんな生き方で恥ずかしくないのか?」

もうひとつの出来事は、落第。
『ハムレット』の登場人物論を、滝沢馬琴的観点で論文にしたが、酷評を受け、試験に落ちた。
指導教官は、言った。
「キミは、シェイクスピアがまるでわかっていない。
人間を、作者の操り人形のように描く馬琴とは、違うんだよ」
頭をガツンと殴られたような気持ちになる。
「そうだった…かつて、シェイクスピアに夢中になったときに感じた違和感を、ボクは忘れていた…」

坪内逍遥は、心を入れ替え、勉学に励んだ。
文学史の学士号を授与された。
26歳の時、評論『小説神髄』、そして小説『当世書生気質』を発表。
日本の小説のレベルを上げたいと声をあげた。
ある高名な学者は、『当世書生気質』を読んで、言った。
「学士をとった人間が、小説などという卑しいものに従事するなど、もってのほかだ」
当時、小説は、ただの暇つぶし的な読み物として、芸術の範疇に入っていなかった。
それは、現代における、かつての漫画の位置づけと似ていた。
坪内は、外国文学に触れれば触れるほど、近代日本文学の夜明けを願った。
「人間の裏側、欲の行方、人生の不思議、絵画や音楽がそれらをひもといたように、日本文学にできないわけがない」
坪内逍遥の教えは、後の文学者に受け継がれ、日本文学は大いなる発展を遂げる。
1928年、坪内が半生を費やして完成した『シェイクスピア全集』40巻の翻訳完成と、彼の古希の祝いを兼ねて、早稲田演劇博物館が各界有志の協力のもと、設立された。
こうして、文学のみならず、演劇の発展にも寄与した坪内の精神は、今も生きている。
誰も歩いたことのない場所に道をつくったからこそ、後のひとは容易に歩くことができる。

【ON AIR LIST】
YOUNG HEARTS RUN FREE(映画『ロミオ&ジュリエット』) / Kym Mazelle
ロミオとジュリエット / Andy Williams
幻想序曲《ハムレット》作品67 / チャイコフスキー(作曲)、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、レナード・バーンスタイン(指揮)
新しい世界 / サカナクション

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと白身魚のポットパイスープ

今回は、冬におすすめの料理をご紹介します。

霜降りひらたけと白身魚のポットパイスープ
カロリー
334kcal (1人分)
調理時間
40分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • じゃがいも
  • 1個
  • にんじん
  • 1/2個
  • 玉ねぎ
  • 1/2個
  • にんにく
  • 1片
  • 白身魚切身
  • 60g
  • 塩こしょう
  • 適量
  • オリーブオイル
  • 大さじ1
  • 150ml
  • ハーブソルト
  • 小さじ1/2
  • 牛乳
  • 150ml
  • 冷凍パイシート
  • 7cm×7cm 2枚
  • 溶き卵
  • 1個分
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、半分は薄切りにする。じゃがいもとにんじんは皮をむいて、一口大に切る。玉ねぎは薄切りにし、にんにくはみじん切りにする。
  • 2.
  • 白身魚は両面に塩こしょうを振り、ペーパータオルで水気をふき取る。
  • 3.
  • 鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎを加え、全体が薄くあめ色になるまで炒め、薄切りにした霜降りひらたけとにんにくを入れ、全体がしんなりするまで一緒に炒め合わせる。
  • 4.
  • (3)に水、ハーブソルト、にんじんを加え、中火で7分ほど煮て、さらにじゃがいもと牛乳を加え10分ほど煮る。
  • 5.
  • (3)をカップに盛り、(2)を上に乗せ、カップに冷凍パイシートをかぶせ、ふちの部分をフォークで抑える。
  • 6.
  • 溶き卵を塗り、220℃に温めたオーブンで15分ほど焼く。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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