yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百七十一話 孤独から逃げない -【鳥取篇】俳人 尾崎放哉-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百七十一話孤独から逃げない

「咳をしても一人」 「一人の道が暮れてきた」

自由律俳句という新しい世界を切り開いた、漂泊の俳人・尾崎放哉(おざき・ほうさい)。
彼は、鳥取市に生まれました。
鳥取市の生誕の地、住んだ場所や尾崎家の墓に、句碑が建立されています。
没後94年経った今も若いミュージシャンに影響を与え、多くのひとに語り継がれる放哉の俳句の魅力は、いったいどこにあるのでしょうか?
彼は、東京帝国大学法学部を卒業した、エリート中のエリート。
就職した生命保険会社でも、順調に出世街道にのりはじめ、誰もがうらやむ人生を歩くはずでした。
しかし、詩作とアルコールにひたる日々。
会社も辞めてしまいます。
結婚して生活を安定させようと努力しますが、結局、会社勤めができず、妻も彼のもとを去っていきました。
放哉は、無一文であることを自らの立脚点と決め、放浪の旅に出るのです。
酒を飲んで暴れる。すぐにお金を無心する。高学歴を鼻にかける。
決してひとに好かれる性格ではなかったと言います。
でも、放哉は、たったひとつのことを守り続けました。
それは、孤独から逃げない、ということ。
今日も一日、自分は独りであることから逃げなかった、まるでその証のように、彼は俳句を詠み続けました。
降りしきる雨の中、しんしんと降る雪の夜、海辺の流木に座り、広大な野原の真ん中で。
極貧生活をおくりつつ、肺病を抱えながらやせ衰えていっても、彼の心は自由でした。

「こんなよい月を一人で見て寝る」

季語を捨て季節に生きた伝説の俳人・尾崎放哉が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?


漂泊の俳人・尾崎放哉は、1885年、鳥取県邑美郡、現在の鳥取市に生まれた。
鳥取藩士の家系。
父は地方裁判所の書記だった。
厳格な家庭に育つ。
放哉は幼い頃から、極度のひとみしり。
物心つくと、自分の周りを常に屏風で囲い、その中で、本を読んだり、絵を画いた。
友だちは、できなかった。
どう接したらいいか、わからない。
でも、好きな本さえあれば、孤独ではなかった。
中学生のとき、俳句や短歌に出会う。
短い言葉の中に情景が浮かぶ。
匂いや音が沸き起こる。
自分でも書いてみた。
初めて世界とつながったような気がした。

「きれ凧の糸かかりけり梅の枝」

「水打つて静かな家や夏やなぎ」

自分の家の庭や、ふだん見る風景が全てだった。
学校の先生が「これは、ご両親が詠んだものか?」と聞いた。
自分が書いたと即座に言えず、真っ赤になってうつむく。
俳句が好きなクラスメートがいて、友だちもできた。
みんなに「うまいねえ、すごいねえ」と褒められたことで自信がついた。
勉強にスポーツ、活発な青年に成長していった。
中学を卒業後、一生を決める出会いが待っていた。

自由律俳句の第一人者、尾崎放哉は、中学を卒業すると上京。
第一高等学校に入学する。伝統ある、一高俳句会に入った。
この俳句会の幹事を務めていたのが、放哉の1歳年上の荻原井泉水(おぎわら・せいせんすい)だった。
井泉水の自由律俳句の精神に、感動した。
季語がいらない、五七五でなくていい。
さらに井泉水のこんな言葉に感化される。
「芸術上の制作は、常に内部から迸らなければならない。生命ということは内的である」
自然と一体になるには、ただ単に描写しているだけでは足りない。
内から湧き上がる思い、私性が、必要不可欠であるという主張に、頭を殴られたような衝撃を受けた。
「そうか、俳句を詠むというのは、自分がどう生きるかっていうことなんだ」
一高では、夏目漱石に英語を習った。
漱石の文学にも触れ、より、内面をいかにさらけ出し、描くかを考えるようになる。
「僕は、どう生きたらいいんだろう。芸術と現実、どう折り合いをつけたらいいんだろう…」
悩みつつ、彼は、最終学歴の最高峰、東京帝国大学法学部に入学する。

俳人・尾崎放哉は、大学在学中に文芸雑誌『ホトトギス』に俳句をおくり、入選。
うれしかった。
ある日、荻原井泉水の自宅に呼ばれる。
「放哉くん、君は、種田山頭火という俳人を知っているか? 彼はすごいよ、自由律俳句の担い手になる。でもね、僕は思うよ、君の才能は山頭火を越えるよ、間違いない」
しかし、そう簡単にはいかなかった。
大学卒業後、通信社、そして保険会社に勤めながら俳句を書き続けるが、いっこうに芽が出ない。
自分でも納得いくものが書けない。
内面をさらけ出せない。
飲むアルコールの量が増えていく。
あるとき、気づいた。
「僕は、いろんなものを持ちすぎなんだ。捨てよう、シンプルになろう。池の水を抜けば、水底に何があるか、おのずと見えてくるにちがいない」
エリート会社員の道を捨てる。
放浪生活は過酷だったが、よどみなく俳句が湧き上がってきた。
やがて文壇からも評価されるようになる。
神戸の寺に寝泊まりしてから、41歳で亡くなるまで、大量に俳句を詠んだ。

「つくづく淋しい我が影よ動かして見る」

「ねそべつて書いて居る手紙を鶏に覗かれる」

「月夜戻りて長い手紙を書き出す」

孤独と貧しさにどっぷりつかる日々。
でも放哉は、いい俳句が書けることが喜びだった。
亡くなる数時間前まで、寝床で俳句を詠んだ。
絶句。

「春の山のうしろから烟(けむり)が出だした」 尾崎放哉

【ON AIR LIST】
風に吹かれて / エレファントカシマシ
IF YOU LOVE SOMEBODY SET THEM FREE / Sting
LET'S GO KEITH / Toshinori Kondo
思想犯 / ヨルシカ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとイカの生姜炒め

今回は、鳥取市の特産でもある、イカを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとイカの生姜炒め
カロリー
232kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • イカ(刺身用細切り)
  • 1パック
  • いんげん
  • 50g
  • 生姜
  • 20g
  • 少々
  • 【A】塩
  • 小さじ1/4
  • 【A】ガラスープ
  • 大さじ2
  • 【A】酒
  • 大さじ2
  • 【A】こしょう
  • 少々
  • 【B】片栗粉
  • 小さじ1/2
  • 【B】水
  • 小さじ1
  • サラダ油
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • いんげんは筋をとる。
  • 3.
  • 熱湯に塩を入れた中でいんげんを茹で、水にとる。3cm長さに切る。
  • 4.
  • (3)の熱湯で、続けてイカをさっとくぐらすくらいに茹で、ザルにとる。
  • 5.
  • 生姜は千切りにする。
  • 6.
  • フライパンに油を温め、生姜とひらたけを炒め、霜降りひらたけに油がまわったらイカといんげんを加え、【A】で味をつけ、【B】の水溶き片栗粉でとじる。
  • recipe LIST

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ARCHIVE

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RECIPE LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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