yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第七十話 正義と慈悲はひとを動かす -【熊本篇】 加藤清正-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第七十話正義と慈悲はひとを動かす

熊本のシンボルともいうべき、熊本城は、今年4月の地震で甚大な被害を受けました。
修復完了までには、最短でも3年は要すると言われています。
でも、傷ついたこの類まれな名城は、今もその雄姿を残し、市民や、そこを訪れるひとたちを勇気づけてくれています。
日本三大名城には、諸説ありますが、設計の技巧や美しさから、名古屋城、大阪城と並び、この熊本城も選出されます。
この城を築城したのが、加藤清正。
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。
彼は尾張、今の愛知県の生まれですが、今も熊本のひとに愛され、親しみを込めて「せいしょこさん」と呼ばれています。
清正公のあと、熊本城は、江戸時代200年に渡って、細川家が治めましたが、それでもやはり、熊本城といえば、加藤清正。
明治時代に入って西南戦争が起こり、城の天守が燃えたときも、城下町のひとたちは、「せいしょこさんの城が燃えている」と口々に言いました。
この城を攻め落とそうとした西郷隆盛は、1万4千の兵を率いましたが、4千人の籠城を打ち破ることができずに、誰一人として侵入できなかったと言われています。そのとき、西郷はこう言ったそうです。
「おいは、加藤清正に、負けもうした」。
もともと熊本という地名の熊は、動物の熊ではなく、こざとへんの隈取りの隈でした。
それを、「もっと強い名前にして、栄える町にしたい!」という清正公の強い願いから、字を換えたと言われています。
たまたま赴任した土地で、誠心誠意、そこに暮らすひとの味方であり続けた加藤清正が、なぜ長い長い時を経ても愛されるのか。
そこには、ひとの上に立つべき人間には欠かせない、勇ましさと繊細さを合わせ持つ人徳がありました。
情けと慈悲の心に厚い武将、加藤清正の人生から見えてくる、明日へのyes!とは?

肥後熊本藩初代藩主・加藤清正は永禄5年、1562年に生まれた。
幼名は、虎之助。父は刀の鍛冶屋だった。
3歳で父を失う。母が虎之助の身を預けたのは、遠縁にあたる羽柴秀吉、のちの豊臣秀吉だった。
秀吉は武家の系譜ではない。もともと自ら足軽からのし上がってきた人物なので、侍大将になってさえ、家来がいなかった。
信じられるのは、弟の秀長、ただひとり。
そんな中、遠縁とはいえ、虎之助、のちの清正の存在は有り難かった。
虎之助は、大柄な体格を持ち、面長で上品な顔立ち、鋭い眼光に、よく通る大きな声を備えていた。
秀吉は、彼を可愛がった。
特に誠実で律儀なところが気に入った。度胸もあり、槍の使い手でもあった。
虎之助、20歳のとき、羽柴秀吉が天下をとるための大きな戦いがあった。
織田信長が本能寺で敗れたため、その跡目を争う柴田勝家との合戦。
『賤ヶ岳(しずがたけ)の戦い』だ。
激しい戦いになった。勝家を追い詰めたと思われたが逃げられる。
たくさんの武士の亡骸を前に、秀吉が虎之助に銭を差し出して言った。
「敵も味方もない、明日は我が身だ。これらの骸(むくろ)に、蓑や笠をかけてやれ。百姓にこの銭でお願いしてこい。それからわしの馬を使え、用事がすんだら、すぐに追いつくんだ」。
敵を逃し、焦っているのに、亡くなったものへの情けを忘れない秀吉。虎之助は、感動を覚えた。
「いいか、虎、慈悲の心を失くしては、ならん」。

秀吉軍の勝利に大いに貢献したいわゆる『賤ヶ岳の七本槍』のひとりが、虎之助、のちの加藤清正だった。
功績をたたえられ、秀吉から3千石をもらう。
虎之助の若さでは異例の報酬だった。
しかし、虎之助は、不満だった。
他の腹心、福島正則が、5千石もらっていたのを知ったからだ。
「正則のほうが親戚筋として近いのはわかる。でも、同じような働きをして、どうしてそこに差が生まれるのか!オレは我慢ならん!この3千石は、返してくる!」
その大きな声は秀吉にも聴こえた。
秀吉は、そんな虎之助を怒るどころか、よくぞ成長したと内心ほくそえんだ。
まわりのものがハラハラする中、虎之助は、すぐに残り2千石を追加された。
「おい虎、おまえは今日から加藤清正と名乗るがいい」。
こうして、清正は、さらに秀吉の信頼を得ていった。
彼は、心に軸を持った。
それは、どんなに勇敢で武術にたけていても、正義と慈悲を持たぬものは、天下人にはなれない。

加藤清正は、豊臣秀吉の九州平定に尽力し、肥後の国19万5千石を与えられ、熊本城に入った。
前任者、佐々成政が、統治を急ぎ、農民の一揆により失脚したことを受けての後任だった。
それから16年あまり、清正は、肥後の国、熊本の改革・発展に命をけずった。
農民の公共事業への参画は、農閑期にかぎった。特産物を推進して広く知らしめ、今でいう街おこしにお金を使った。
治水や備蓄にも、力を入れた。
熊本城近くには、今も清正が掘った遺構が使われている。
水を整えることで農業や暮らしが安定する。
籠城に備えて、城内にイチョウが植えられ、熊本城は別名「銀杏城」と呼ばれた。
そして関ヶ原の戦いで、家康側につきながらも、君主・秀吉のことを忘れなかった。
「正義と慈悲を、どんなときも心の軸にすえるということ」。
秀吉からもらったものと、幼い頃から培った性質が彼を導き、彼を偉人に押し上げた。
ひとは、なんとなく偉人にはなれない。
心にぶれない軸を持ち、なすべきことをなしたとき、まわりのひとが、彼を神輿の上に担ぐのだ。
武将・加藤清正の化身、熊本城は、地震に耐え、残り、その勇壮な姿を留めている。
正義と慈悲は、いつの世も、ひとの心を動かす。

【ON AIR LIST】
You're The Man / Marvin Gaye
Eye of the Tiger / Survivor
Brave / Sara Bareilles
夜空ノムコウ / SMAP

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと彩り野菜の甘酢炒め

今回は、熊本城がある熊本市の特産物、なすを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと彩り野菜の甘酢炒め
カロリー
117kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • なす
  • 小2本
  • パプリカ
  • 1/2個
  • ごま油
  • 大さじ1
  • 【A】しょうゆ
  • 大さじ1
  • 【A】砂糖
  • 大さじ1
  • 【A】酢
  • 大さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • なすは長さを3等分にして縦十字に切り、パプリカは一口大に切る。
  • 3.
  • フライパンにごま油を熱して、なすを皮側から炒める。
  • 4.
  • 火が通ってきたら、霜降りひらたけ、パプリカを入れてさっと炒める。【A】を回し入れて絡め、火を止める。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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