yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百四十二話 道を探し続ける -【宮城篇】作曲家 早坂文雄-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百四十二話道を探し続ける

黒澤明の映画『羅生門』や『七人の侍』の映画音楽で知られる、宮城県仙台市出身の作曲家がいます。
早坂文雄(はやさか・ふみお)。
41歳の若さで亡くなった彼は、亡くなる直前まで作曲を続けました。
亡くなる1年前に公開された『七人の侍』は、肺結核だった早坂の病床に録音編集機が持ち込まれての作曲。
容赦ない黒澤監督の要望に、命の限界まで応えようとする早坂とのやりとりは、周りの人間がはらはらするほど、熾烈で過酷なものだったと言われています。
黒澤と早坂の間には、絶大なる尊敬と信頼関係がありました。
早坂が、一度はボツになった音楽を再構成して提案すると、「それだ! それだよ! 早坂さん!」と黒澤は大声をあげました。
よりよいものを創るために、決して妥協しない。
二人の芸術家は、常に道を探し続けたのです。
病いに苦しむ中、早坂が音楽を担当した溝口健二監督の『雨月物語』が、「ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した」という知らせが届きます。
黒澤監督の『羅生門』での金獅子賞に次ぐ、早坂音楽の快挙でした。
早坂文雄が目指した音楽は、汎東洋音楽、すなわち、パン・エイシアニズムです。
西洋的な音楽の合理的なリズムを真っ向から否定し、日本人の感性に根差した、無調、無限形式を採用しました。
日本人とは、何か。
民族のアイデンティティは、どこにあるのか。
早坂が探求してたどり着いた方法論です。
雅楽の雰囲気を多く入れ込んだ、飛鳥や奈良、平安朝のイメージを醸し出す日本的な楽曲は、多くの音楽家に影響を与え、弟子ともいえる武満徹は、『弦楽のためのレクイエム』という曲を早坂に捧げています。
早坂文雄は、幼い頃から英才教育を受けた、選ばれた神童だったのでしょうか。
親に養ってもらえず、妹や弟を育てるため、高校進学を諦めざるを得ない、境遇でした。
それでも彼は、自分の道を探し続けたのです。
日本の音楽を世界に知らしめたレジェンド・早坂文雄が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

映画音楽の大家・早坂文雄は、1914年8月19日、宮城県仙台市に生まれた。
早坂家は、代々、鳴瀬川近くに広大な農地を持つ、裕福な地主だった。
しかし、文雄の父が家業を継がず、新しい仕事を始めては失敗し、その資産を食いつぶしてしまう。
あげくの果てに、ふるさとを追われる。
文雄が3歳を過ぎた頃、一家は、仙台を逃れ、知人が暮らす、北海道札幌に移り住んだ。
父は保険の外交、母は理髪店を始めた。
小学生になった文雄は、絵が得意だった。
展覧会に出品して、入選。
絵を画きながら、ときどき母にこうつぶやいた。
「お母さん、ボクね、絵を画いていると、音楽が聴こえてくるんだ。聴いたことのない音楽が、ずっと頭の中で鳴るんだよ」
奇妙なことを言う子だと、母は特に気に留めなかった。
中学に入ると、母の仕事の手伝いをした。
ときどき、理髪店の店先にある長椅子に座り、ハーモニカを吹いた。
そのハーモニカがあまりにうまくて、町で噂になる。
ある日、彼の前に同じ中学の上級生がやってくる。
「君、よかったら、音楽部に入らないか?」
「いや、すみません、手伝いがあるので音楽部は無理です」
「一度でいい、放課後、音楽室に来てくれたまえ」
おそるおそる音楽室をのぞく。まだ誰もいない。
オルガンがあった。
鍵盤に指を置く。
音色が室内に響いた。
「ああ、これだ、ボクがやりたかったのは、これだ」
早坂文雄は、音楽という名のドアを開いた。

映画音楽の作曲家・早坂文雄は、中学時代、オルガンとピアノに夢中になった。
父は行方をくらまし、母の稼ぎだけが頼りだったので、家計は苦しく、買えた楽器はハーモニカが精一杯。
でも音楽部に所属すれば、好きなだけオルガンを弾くことができた。
中学3年生のとき、早坂の活躍もあり、ハーモニカコンクール北海道大会で優勝。
みんなで肩を抱き合い喜んだ。
うれしかった。
音楽でひとつになれる体験が心に刻まれる。
音楽を生涯の生業にしたい。
胸に希望の明かりが灯る。
しかし、その明かりは一瞬で吹き消されてしまう。
早坂が中学の卒業を控えていた矢先、母が病に倒れる。
全身、黄色くなり、やせ細った母が、枕元に文雄を呼んだ。
「お父さんが保険の仕事してただろ。お母さんね、それに入ったんだよ。私が死んだらお金が入るから、いいかい、文雄、それでピアノを買いなさい。おまえは、音楽を続けなさい」
母は、亡くなった。まだ40歳だった。
母の葬儀にいきなり父が姿を見せる。
文雄は父に怒りの言葉を吐いたが、通じない。
母の保険金は、全て父の飲み代に消え、せっかく買ったピアノも、あっという間に売られてしまった。
文雄は、中学校の授業料も払えなくなる。
このままでは卒業できない。
助けてくれたのは音楽の仲間たちだった。
彼らの多くは裕福な家庭に生まれた生徒たち。
親に話し、お金を工面してくれた。
その仲間の中に、のちにゴジラの映画音楽を作曲する、伊福部昭(いふくべ・あきら)もいた。
恐縮する早坂に、同い年の伊福部は言った。
「お金なんて、どうでもいい。大切なのは、君が音楽を続けられるかどうかなんだよ」

早坂文雄は、中学を出ると、クリーニング店に就職した。
得意先の家を、御用聞きに回る。
家の中にピアノがあると、いてもたってもいられない。
「あ、あの、すみません、ピアノを弾かせてもらってもいいですか?」
たいていの家は、「いいですよ、どうぞ」と言ってくれた。
しかし、早坂はいったん弾きだすと止まらない。やめられない。
やがて店主に苦情が寄せられ、早坂はクビになってしまう。
次に働いた印刷所では、伊福部に誘われた音楽活動に力を入れるあまり、やはり解雇。
なんとか音楽で生きていける道がないか、探した。
そのあともさまざまな職を転々として、ようやく音楽活動が軌道に乗り始める。
当時の札幌には、海外から優れた音楽家を招待する素地があった。
20歳の早坂文雄は、「国際現代音楽祭」に出場。
日本初演となるエリック・サティの『三つのグノシェンヌ』を弾いて絶賛される。
会場に響き渡る拍手を聴きながら、早坂は思った。
「これから先、ボクは、音楽に妥協はしない。自分の音楽を極めるための努力を、決して惜しまない。天国の母に、聴いてもらうために」。

【ON AIR LIST】
侍のテーマ(映画『七人の侍』より) / 早坂文雄(作曲)、本名徹次(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団
「室内のためのピアノ小品集」より第12曲~優しくふんわりと歌うようなラルゴ / 早坂文雄(作曲)、高橋アキ(ピアノ)
真砂の証言の場面のボレロ(映画『羅生門』より) / 早坂文雄(作曲)、本名徹次(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団
左方の舞と右方の舞 / 早坂文雄(作曲)、ドミトリ・ヤブロンスキー(指揮)、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

★今回の撮影は、旧東京音楽学校奏楽堂様にご協力いただきました。ありがとうございました。
建物公開日等、詳しくは公式HPにてご確認ください。

旧東京音楽学校奏楽堂HP
https://www.taitocity.net/zaidan/sougakudou/

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと野菜のステーキ~おろしソース~

今回は、仙台市の特産でもある、なすを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと野菜のステーキ~おろしソース~
カロリー
255kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 玉ねぎ
  • 1個
  • ズッキーニ
  • 1本
  • アスパラガス
  • 2本
  • なす
  • 1本
  • 塩こしょう
  • お好み
  • サラダ油
  • 適宜
  • 【A】大根
  • 2cm分
  • 【A】玉ねぎ
  • 1/4個
  • 【A】しょう油
  • 大さじ2
  • 【A】酒
  • 大さじ1・1/2
  • 【A】砂糖
  • 大さじ1
  • 【A】みりん
  • 大さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、他の材料は食べやすい大きさに切る。
  • 2.
  • (1)に塩こしょうをして、油を熱したフライパンで炒め、焼き目がついたら皿にとる。【A】の大根と玉ねぎはすりおろす。
  • 3.
  • (2)のフライパンに【A】を入れ中火にかける。
  • 4.
  • (3)を器に入れて(2)に添える。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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