yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百九十八話 苦悩を突き抜け、歓喜に至る -【音楽家のレジェンド篇】ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百九十八話苦悩を突き抜け、歓喜に至る

4年ぶりに、世界最大級のクラシック音楽祭が、日本に帰ってきます。
「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2023」。
5月4日から3日間行われるこのイベントのテーマは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
交響曲やピアノ協奏曲はもちろん、ベートーヴェンへのオマージュ作品も演奏される予定です。
ベートーヴェンの楽曲に流れるヒューマニズムこそ、今の時代にあらためて享受すべきなのかもしれません。
56年の生涯は、貧困と病に翻弄される、苦悩の連続でした。
特に、20代後半から彼を絶望の淵に陥れたのは、難聴。
耳が聴こえなくなっていったのです。
ピアニストとして、作曲家として、音が聴こえないということは、どれほどの苦難でしょうか。
ベートーヴェンは、医者から治る見込みがないことを告げられ、最高難聴者となった28歳のとき、遺書をしたためます。
それでも、孤児救済のための慈善演奏会を休むことなく、会場に姿を見せました。

晩年は、ピアノに耳をぴったりつけて、振動を感じることで、作曲を続けたと言います。
ハンディキャップがあったからこそ、広い音域と豊かな響きを求めたベートーヴェンは、西洋音楽史を語る上で、エポック・メイキングな存在。
ハイドン、モーツァルトというウィーン古典派の二大巨匠の強い影響を受けながらも、宮廷のものだったクラシック音楽を民衆のものにしたのです。
彼は、言いました。
「神がもし、世界でもっとも不幸な人生を私に用意していたとしても、私は運命に立ち向かう。苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る」
古典派音楽の集大成を成し遂げ、ロマン派音楽の先駆者になり、のちの音楽家たちに多大な影響を与えた音楽の神様、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、1770年、神聖ローマ帝国ケルン大司教領のボンで生まれた。
父は宮廷楽団のテノール歌手、母は宮廷料理人の娘だった。
楽団長だった祖父は、ベートーヴェンが3歳のときに亡くなる。
音楽的な環境は、整っていた。
父の手ほどきで、ピアノを習う。
父には、野心があった。
「この子を、第二のモーツァルトにしよう」
6歳ですでに非凡な才能でまわりを驚かせた。
ただ、父は無類の酒好き。
酒を飲むと人格が変わり、ベートーヴェンに手をあげることもあった。
スパルタ教育は、度を越していく。
部屋に軟禁。ピアノの傍から離れることを許してもらえなかった。
父は、我が子を「神童」と思わせるため、年齢を詐称。
初めての公開演奏会は、8歳のときだったが、ポスターには6歳と書いた。
ベートーヴェンは、ときにピアノを弾くのが嫌になったが、父の下で生きて行くには、音楽家になる運命を受け入れるしかなかった。
10歳のときには、教会のオルガニストになる。
そうして11歳のとき、生涯を決定づけるピアノ教師に出会う。
クリスティアン・ゴットロープ・ネーフェ。
ネーフェは、オルガニストで作曲家。
ベートーヴェンの才能を見出し、英才教育をほどこした。
祖父の遺産を食いつぶしてしまった父の代わりに、ベートーヴェンの音楽教育の資金援助もいとわなかった。
尊敬できる音楽の師を得たベートーヴェンは、さらに飛躍の大海に飛び込んだ。

ネーフェは、ベートーヴェンが第二のモーツァルトになれる器を持っていることを神聖ローマ帝国の選帝侯に進言。
「若き才能には、旅が必要です。どうか、ウィーンに派遣し、音楽の泉を、思う存分、堪能させる機会をお与えください」とアピールした。
この願いが叶ったのは、ベートーヴェンが16歳の時。
初めてのウィーン。心が躍る。
当時のウィーンには、世界中から優れた音楽家が集まっていた。
所説あるが、このとき、ベートーヴェンは憧れのモーツァルトに会ったと言われている。
モーツァルトは、このとき30歳。
亡くなるおよそ5年前だった。
モーツァルトの邸宅を訪れたベートーヴェンは、与えられた主題でピアノを即興演奏する。
演奏が終わるとモーツァルトは、しばらく黙り、静かに扉を開け、隣の部屋にいた友人たちに、大きな声で言った。
「みなさん、彼のことをよく覚えておくがいい!
そのうち彼は、世間をあっと言わす存在になるでしょう!」
ウィーンを訪れたことは、ベートーヴェンの音楽的な成長に大きな意味を持った。
驚きや焦りより、むしろ、自信を持つ。
「僕がやってきたこと、やっていることは、決して間違っていなかった」
もっとウィーンに留まりたかったが、ボンから電報が届く。
「母、危篤…」
看病の甲斐もなく、母は他界。
落胆した父はさらに酒におぼれ、一家の稼ぎ手をベートーヴェンひとりが担うことになった。

父に言われるがまま、過酷なレッスンを受けたピアノ。
今度はそのピアノが、稼ぐ力になる。
ベートーヴェンは、宮廷第二オルガニストとして働き、さらにボンの名門貴族・ブロイニング家の子どもたちにピアノを教える職を得た。
ブロイニング家の夫人は、ベートーヴェンを公私に渡り、励ます。
ラテン語や文学、絵画などを教え、ともすれば生活のために、くじけそうになる心を優しく癒した。
「あなたには、神様からのギフトがあるのです。それを大切に守りなさい」
ブロイニング家のサロンにウィーンからやってきた、ヴァルトシュタイン伯爵は、大の音楽愛好家。
ブロイニング家でベートーヴェンの演奏を聴いて、そのとてつもない才能に驚いた。
この出会いが、やがてハイドンの弟子になるという幸運につながる。
苦悩に立ち向かい、毎日懸命に生きていれば、必ず、誰か支援者が現れてくれる。
そんな思いが、若きベートーヴェンの心に刻まれていった。

「人間はまじめに生きている限り、必ず不幸や苦しみが降りかかってくるものなのです。
でも、それを自分の運命として受け止め、辛抱強く我慢し、さらに積極的に力強くその運命と戦えば、いつかは必ず勝利するものである」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

【ON AIR LIST】
交響曲第9番ニ短調 op.125<合唱> / ベートーヴェン(作曲)、サイトウ・キネン・オーケストラ、小澤征爾(指揮)
<魔笛>の主題による7つの変奏曲変ホ長調 WoO46 / ベートーヴェン(作曲)、アンドラーシュ・シフ(ピアノ)、ミクローシュ・ペレーニ(チェロ)
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37 第一楽章 / ベートーヴェン(作曲)、横山幸雄(ピアノ)、ジャパン・チェンバー・オーケストラ
ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」 / ベートーヴェン(作曲)、ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと鰆の酒蒸し

今回は、今が旬の食材、鰆を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと鰆の酒蒸し
カロリー
199kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 2パック
  • 鰆(80g)
  • 4切
  • 塩(下味用)
  • 少々
  • 昆布
  • 10cm角×4枚
  • 【A】酒
  • 100ml
  • 【A】だし汁
  • 500ml
  • 【A】塩
  • 小さじ1/2
  • 【A】薄口しょう油
  • 小さじ2
  • 菜の花
  • 8本
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、鰆は塩を振り1時間ほど置く。
  • 2.
  • 耐熱の容器に昆布をひき、鰆と霜降りひらたけを並べる。
  • 3.
  • (2)に【A】を注ぎ入れ、ラップをして電子レンジ(600W)で13分ほど加熱する。(1人前ずつ電子レンジにかける時は時間の加減をする)
  • 4.
  • (3)に茹でて一口大に切った菜の花を器に盛る。お好みで木の芽をのせ、ポン酢、紅葉おろし、刻みねぎを混ぜた物を添える。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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