yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第五十二話 日常に咲く花たち -【山口篇】 童謡詩人 金子みすゞ-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第五十二話日常に咲く花たち

「遊ぼう」っていうと、「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと、「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと、「もう遊ばない」っていう。
そして、あとで さみしくなって、
「ごめんね」っていうと、「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか。いいえ、誰でも。

2011年3月の東日本大震災。
そのとき、テレビから流れてくるこの詩に、心うたれたひとは数多くいるでしょう。

『こだまでしょうか』。
書いたのは、大正末期から昭和初期に活躍した童謡詩人、金子みすゞです。
金子みすゞのふるさとは、山口県長門市仙崎町。
日本海屈指の漁港を有するこの町は、かまぼこの産地としても知られています。
またここは、終戦後の引き上げ港として、40万人以上のひとたちを受け入れました。
金子みすゞが幼少期を過ごした場所には、みすゞ通りができて、生家跡地には、金子みすゞ記念館があります。
建物は、彼女が20歳ころまで過ごした書店「金子文英堂」を再現しています。
館内には、遺稿集や彼女が着ていた着物などが展示されていて、当時をしのぶことができます。
彼女は、ふるさと仙崎を愛し、山や海、港など、日常的な風景を詩に読みました。
わずか26年の生涯を駆け抜けた詩人が、今もなお、私たちの心に触れる言葉を紡ぐことができたのはなぜでしょうか。
金子みすゞが、人生で譲らなかった明日へのyesとは?

童謡詩人、金子みすゞは、1903年、山口県長門市仙崎町に生まれた。
本名は金子テル。カタカナで、テルと書いた。
彼女が生まれた仙崎は、萩と下関に挟まれた、日本海に面する漁師町だった。
子供から大人まで、一緒になって網を引く、みなが助け合うあたたかい町。
父は、大陸にも支店を持つ大きな書店、上山文英堂に勤めていた。
しかし、みすゞが3歳のとき、その父が突然亡くなる。
金子家は、上山文英堂の後押しもあり、地元に金子文英堂を始めた。
みすゞの弟は、上山文英堂の跡取りとして養子に出された。
彼は後に、劇団若草の創始者となる。
みすゞは、小学校でも中学校でも、成績は優秀。
でもそれを鼻にかけるようなことはなく、クラスの誰からも好かれる優しい人柄だったという。
色白でふっくらとした愛嬌のある顔。澄んだ瞳。
決して派手で目立つ存在ではなかったけれど、誰にでも寄り添う心を持っていた。
自分のさびしさを封じ込めて。
彼女はこんな詩を書いている。

『さびしいとき』
私がさびしいときに、よその人は知らないの。
私がさびしいときに、お友だちは笑うの。
私がさびしいときに、お母さんはやさしいの。
私がさびしいときに、佛(ほとけ)さまはさびしいの。

童謡詩人、金子みすゞは、母が上山文英堂の後妻に入ったことで、下関に移り住んだ。
成績優秀なみすゞに、女学校の先生は進学をすすめたが、断った。
みすゞは、上山文英堂商品館で働くことになる。
もともと本に囲まれて育った。
本を読み、お話を空想する時間が好きだった。
毎日、本とともに生きるうちに、創作の楽しさを知る。
童謡を書いた。
本名の金子テルではなく、ペンネーム、金子みすゞで、初めて書いた童謡を雑誌に投稿した。
みすゞという名は、信濃の国の枕詞、「みすずかる」からつけた。
スズタケという下草の竹を刈るという意味があるが、なにより言葉の響きが好きだった。
雑誌『童話』の西条八十は、彼女の作品に強く惹かれ、掲載。
「私は、金子さんの、ふっくりとした温かい情味が好きだ」。
西条の評を読み、みすゞは雑誌の通信欄にこう書いた。
「嬉しいのを通りこして、泣きたくなりました。ほんとうにありがとうございました」。
自分の頭の中にだけあったものが、羽を広げ、世界に飛び立つ瞬間を味わった。
わずか3年で、北原白秋や野口雨情と肩を並べる女流詩人となった。
彼女は壮大な哲学も高邁な思想も謳わない。
ただ日常を見つめ、日常を優しくすくい上げた。
そこに宇宙を見出し、そこに愛と哀しさを見つけた。
大切なものは、全部、自分の近くにある。

金子みすゞが生きた時代は、まだ女性には息苦しいことが多かった。
まわりの勧めに従い、結婚。上山文英堂の番頭格の人だった。
一人娘を授かるが、夫の素行に苦しめられる。
女性問題を起こし、離職。
さらに放蕩は続き、やがて、みすゞにいっさいの創作活動、詩人との交友を禁じた。
それでも当時、簡単に離縁はできず、みすゞはいったん、筆を折る。
娘との時間だけが生きがいだった。
娘の幼い言葉を聞くだけで心が癒された。
夫は遊郭を遊び歩き、みすゞに病気をうつすこともあった。
ついに離婚を決意する。
娘と二人で生きていこう。
でも、そう簡単にはいかなかった。
夫は離婚には承諾したものの、娘をよこせという。
ついに、夫が娘を奪いにくるというその日に、みすゞは、遺書を残し、自害した。
26歳だった。
遺書には、こうあった。
「娘は心豊かな子に育てたいので、母に育ててほしいのです。先立つ不幸をお許しください。今夜の月のように私の心も静かです」。

金子みすゞは、父を知らなかったが、母の愛に育まれた。
全国各地を旅することはできなかったが、ふるさとの海を、山を、そこで暮らす人たちを愛し、心の旅を繰り返した。
彼女の言葉は教えてくれる。
人生で必要なものは、全て、自分の中にそろっている。
あとはそれを、どれだけ見つけることができるかだけだ。

【ON AIR LIST】
み空 / 金延幸子
寂しくて眠れない夜は / Aimer
Free As A Bird / The Beatles
瞳を閉じて / 荒井由実

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと蓮根のきんぴら

金子みすゞのふるさとは、かまぼこやちくわなどの産地としても知られる、山口県長門市仙崎町。そこで今回は、ちくわを使ったこちらの料理をご紹介します。

霜降りひらたけと蓮根のきんぴら
カロリー
204kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • れんこん
  • 200g
  • ちくわ
  • 1/2本
  • 赤唐辛子
  • 適宜
  • サラダ油
  • 大さじ1
  • 【A】
  • みりん
  • 大さじ1
  • しょうゆ
  • 大さじ1
  • 砂糖
  • 大さじ1
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすい大きさにほぐす。
  • 2.
  • れんこんは皮をむき、薄切りにし、水にさらしアクを抜く。
  • 3.
  • ちくわは5mm幅の斜め切りにする。
  • 4.
  • 赤唐辛子は種を抜き、小口切りにする。
  • 5.
  • フライパンにサラダ油を熱し、水気を切ったれんこんを中火で炒める。
  • 6.
  • 霜降りひらたけ、ちくわ、赤唐辛子を加え炒める。【A】を加え、汁気がなくなるまで炒り煮する。
  • ※赤唐辛子はお好みで辛すぎないよう調整してください。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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