yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百八十三話 憧れの気持ちを大切にする -【徳島篇】作曲家 三木稔-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百八十三話憧れの気持ちを大切にする

日本の伝統的な楽器と西洋音楽の融合に心血を注いだ、徳島出身の偉大な作曲家がいます。
三木稔(みき・みのる)。
昨年生誕90年、今年没後10年を迎える三木の真骨頂は、日本文学や日本史をモチーフにしたオペラの数々です。
45歳にして初めて作曲した『オペラ春琴抄』は、ジロー・オペラ賞を受賞、国際的にも高い評価を得ました。
その後、『あだ』『じょうるり』『ワカヒメ』など連作に挑み、『源氏物語』は、さらに三木の名を世界に轟かせました。
1976年の大島渚監督作品『愛のコリーダ』では映画音楽を作曲。哀しさとせつなさに彩られた楽曲は世界中のファンを魅了しました。
『オペラ「源氏物語」ができるまで』という三木のエッセイ集は、1996年から2000年にわたって、徳島新聞に連載された随筆をまとめたものですが、彼の心の軌跡がわかる貴重な一冊です。
その本の最後には、こんな記述があります。

―― 音楽を志して以来「憧れ」は私の創作の基本であり続けて来た。
美や真理への憧れなくして創造のエネルギーは得られるはずがない ――

三木は、若いひとに、「憧れ」を持つことの大切さを説きました。
三木自身、はじめからオペラが好きだったわけではありません。
自分で作曲するまで、見たオペラは、5つほど。
正直、どれも退屈なものという認識しか持てませんでした。
日本独自の歌、日本古来の楽器で、もしオペラが創れたなら…そんな「憧れ」が彼を引っ張り、世界的に有名な作曲家に押し上げたのです。
経済が不況になると、真っ先に切られてしまうのが、芸術。
彼は、そんな日本の実情を憂い、そんな風潮が若者の芸術への「憧れ」をつぶしてしまうのではないかと危惧しました。
ふるさと徳島を愛し、日本の文化を世界に知らしめた芸術家・三木稔が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

世界的に有名な作曲家・三木稔は、1930年3月16日、徳島市に生まれた。
幼い頃から才気煥発。勉強も運動もできる子どもだった。
旧制徳島中学の頃から、連合艦隊司令長官に憧れる。
理数系に秀でた頭脳と並外れた身体能力が求められる海軍兵学校に合格した。
しかし、入学後半年で終戦を迎える。
目標を失いかけるが、理論物理学者を目指し、岡山の旧制六高理科に入る。
ここで、運命的な出会いが待っていた。
入学と同時に知った合唱。ひとの声が織り成すハーモニーに、感動した。
「なぜだろう、なぜこんなにも心が沸き立つんだろう」
そこには、頭では分析できないプリミティブな痺れがあった。
哀しい、せつない、うれしい、たのしい…。
感情が沸き起こる。
これが芸術か。これが音楽の凄みか。
男子校だったが、合唱部は近くの女学校など、女性も公募により集まり、混声合唱団の活動が始まっていた。
男性と女性の声で紡ぐ響きに、ワクワクした。
ベートーヴェンという作曲家の存在を知り、憧れる。
「ボクも作曲家になりたい」
青年の胸に、灯りがともった。

徳島が生んだ偉大な作曲家・三木稔は、21歳のとき、東京藝術大学音楽学部作曲科に入学した。
ここで将来を決める二人の先生に出会う。
ひとりは、池内友次郎(いけのうち・ともじろう)。
池内は、俳人・高浜虚子の次男。
日本人として初めてパリ音楽院に学んだ、西洋音楽の具現者だった。
もうひとりが、伊福部昭(いふくべ・あきら)。
『ゴジラ』の映画音楽でも有名な伊福部は、北海道出身。
アイヌの文化に触れた幼少期を大切にして、独学で音楽の道を切り開いた。
伊福部は、三木に語る。
「芸術は、その民族の特殊性を通過して、共通の人間性に到達しなくてはならないんだ」。
池内が持ちこんだ西洋の音楽と、伊福部が大事にした民族性。
そのどちらも、三木には大切なものに思えた。
23歳の時、NHK藝術祭管弦楽曲の公募で、入賞。
順風満帆な未来が開けたと思った矢先、父が亡くなる。
生計を立てるため、映画音楽や放送の劇伴を次から次へとこなした。
じっくり自分の作品を製作したい。
同期の仲間が長編に挑むのを横目で見ながら、目の前の仕事に真摯に向き合い続けた。
初めて合唱を聴き、音楽に触れた瞬間の「憧れ」を忘れないかぎり、自分は大丈夫だ。
そんな三木に、あらたな転機が訪れたのは、30歳になる頃だった。

世界的な作曲家・三木稔が、和楽器、特に箏の音に、音楽的価値観を揺さぶられたのは、30歳の頃だった。
同時代の作曲家は、西洋に欧米に心を向けた。
「でも」と、三木は思った。
「芸術家は時として、同時代性を拒否して、全く新しい時代にひとびとを導く使命がある」
もう一度、合唱に戻る。
昔の仲間に頼み、男声合唱団に入れてもらった。
編曲だけではなく、作曲もした。
愛する故郷、徳島を思い、『合唱による風土記「阿波」』を作る。
好評だった。海外公演も果たす。
いつも原点に帰ればいい。
いつも自分の「憧れ」に戻れば、道に迷うことはない。
初めてオペラを書いたのは、45歳。
遅咲きだと言われたが、気にしない。
オペラを書いたときから決めていた。
「9連作にしよう」。
それはベートーヴェンの第九が大好きだったから。
まだ日本人が海外からオペラの作曲を依頼されることなど、ほとんどない時代に、二作目の『あだ』は、イギリスオペラ界が実に153年ぶりに外国人作曲家、三木稔に委嘱した作品。
1979年のロンドンでの初演は、大成功。
アメリカ、ドイツでも絶賛を浴び、彼の名声は、世界を駆け巡った。
一見、遠回りと思われた映画音楽や劇伴の仕事が、彼の音楽性を高め、箏との出会いが、自らの民族性に結び付いた。
「憧れ」は彼の背中を押し、三木稔は81年の生涯を芸術に捧げた。
徳島では彼が作った校歌が今も歌われ、彼の合唱曲は、今も日本のどこかで歌い継がれている。

【ON AIR LIST】
マリンバ・スピリチュアル / 三木稔(作曲)、エヴェリン・グレニー(パーカッション)
交響曲第9番ニ短調 作品125<合唱>第4楽章より / ベートーヴェン(作曲)、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、カール・ベーム(指揮)
<芽生え>筝譚詩集~筝と弦楽合奏のための第二集<春>より / 三木稔(作曲)、オーケストラ・トリプティーク、水戸博之(指揮)
華やぎ(筝譚詩集 第二集より) / 三木稔(作曲)、野坂恵子(二十絃筝)

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと魚介のアクアパッツァ

今回は、徳島の特産でもある、鯛を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと魚介のアクアパッツァ
カロリー
244kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 白身魚(鯛など)
  • 2切れ
  • あさり(砂抜き済み)
  • 100g
  • にんにく
  • 1片
  • ミニトマト
  • 6個
  • 白ワイン
  • 大さじ2
  • 大さじ3
  • オリーブオイル
  • 大さじ1
  • 小さじ1/3
  • こしょう
  • 少々
  • パセリ
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。白身魚に塩・こしょう少々(分量外)を振る。にんにくはみじん切りにする。
  • 2.
  • フライパンにオリーブオイル、にんにくを入れ弱火で火にかけ香りが立ったら、白身魚を加え両面を焼く。
  • 3.
  • (2)にあさり、ミニトマト、霜降りひらたけ、白ワインと水を加えフタをしてあさりが開くまで蒸し煮にする。
  • 4.
  • 塩とこしょうで味を調え、煮汁をスプーンで具材にかけながら煮詰め、煮汁が少なくなったら火を止め、みじん切りにしたパセリを散らす。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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