yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百七十話 自分のオリジナリティを知る -【佐賀篇】洋画家 岡田三郎助-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百七十話自分のオリジナリティを知る

佐賀県出身の洋画家に、世の女性のライフスタイルまでも変えた女性画の大家がいます。
岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ)。
昨年、生誕150年、没後80年を迎えた彼は、劇作家・小山内薫の妹を妻にしたことでも知られています。
着物の片肌を脱ぎ、後ろ向きに佇む女性を描いた作品『あやめの衣』は、近代日本絵画の代表作と言われています。
洋画のようでいて、日本画の伝統も感じる作風。
このオリジナリティを手に入れるまで、岡田は、試行錯誤を繰り返しました。
その一端を垣間見ることができる場所は、佐賀市の城下にある佐賀県立美術館です。
ここには、東京、渋谷区恵比寿に現存していた彼のアトリエと、女子洋画研究所が移設されていて、作家が制作に向き合った当時を体感することができます。
岡田は、女性の洋画教育にも力を入れました。
明治30年から4年間、フランス留学をしたとき、師であるラファエル・コランのもとに通う女性の画学生の姿を見て、驚きました。
その頃、日本では画家の道を女性が目指すことが少なく、また、女性に絵を教えるという場所が、ほとんどなかったからです。
岡田は、大正5年から女子美術学校で教鞭をとり、さらに自ら、女性専門の洋画学校をつくり、後進の教育に励みました。
この研究所から、多くの作家が世に出たのです。
岩手出身の童話の挿絵画家・深沢紅子、女流画家協会の創立発起人になった三岸節子、帝展で女性画家として初めて特選をとった有馬三斗枝など、枚挙にいとまがありません。
岡田は、彼女たちに言い続けました。
「自分を探しなさい。自分だけにしか描けない絵を画きなさい」
近代日本の画壇において唯一無二の作品を生み出した作家・岡田三郎助が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

日本を代表する洋画家・岡田三郎助は、1869年、佐賀市に生まれた。
実家は、鍋島藩に仕える武士の家系。
名家で裕福。
さらに時は、文明開化を迎え、世界に開かれた自由な気運が街中に満ちていた。
6人兄弟の末っ子だった三郎助は、大切に育てられる。
父の転勤にともない、上京。
そこで彼は人生を決める、衝撃的な作品に出会った。
同じ佐賀出身の、外交官にして画家・百武兼行の作品。
彼はわずか42年の生涯で、3度ヨーロッパに出向き、西洋絵画の洗礼を受けた。
フランスで絵画を学んだ最初の日本人と言われる彼の「臥婦像」は、裸で横たわる婦人を画いた洋画。
その絵を見た若き岡田三郎助は、体に衝撃が走るのを感じた。
日本で最初の油絵による裸婦。
なめらかな白い質感と、それを引き立たせる背景の布の色合いが、独特の緊張感をもって迫ってくる。
「な、なんだ、この絵は…これが洋画の凄みなのか…」
見たことのない絵に圧倒され、しばらくその場を動けない。
すぐさま、父に、絵画をやりたいと告げた。
「洋画家になる」
このときの決心が生涯、揺らぐことはなかった。

洋画家の巨匠、岡田三郎助は、画家としての基礎を学び、才能を開花させる。
29歳のとき舞い込んできた、千載一遇のチャンス。
文部省、第一回の留学生として、パリに行けることになる。
パリでの師匠は、日本画壇の重鎮、黒田清輝を教えたことでも有名なラファエル・コラン。
うれしかった。
毎日が刺激的で、有意義。
世界中から集まった名画を、見てまわる。
パリの乾いた風が心地いい。
セーヌ川のほとりで絵を画く若者と笑顔で挨拶をかわす。
特にルーブル美術館には毎日通い、さまざまな絵を模写した。
しかし、やがて絶望がやってくる。
「ダメだ…。どんなに似せて画こうとしても…無理だ。かなわない。色が出せない、線が描けない。僕には、洋画が…画けない…」
ルネサンス期のドイツの画家・ホルバインの肖像画の模写には、3年を費やした。
苦労したのが背景の装飾品の質感。
でも、ダメだった。
結局、納得のいくものが描けない。
日本にいる友人に手紙を送った。
「今は色の手習いだ。教師の絵と比較すると、どうして自分はこんなに不注意に画を描いたろうと、気が付いては常にやり直しをやる。実に万物を真面目に見うるまでが、容易なことではないと思う」

絶望の淵にあった岡田三郎助に、師匠のコランは、こんな言葉を投げかけた。
「ニッポンの美術工芸品は、素晴らしい。繊細で優しい。オカダは、なぜ、ニッポン人である自分を捨てて、西洋絵画を画こうとするのですか? 捨てることは、ない。自分の中にあるオリジナリティを見つければいいのです。オリジナリティは、外を探してもどこにもない。自分の中にしかないのです」
日本に帰った岡田は、己の原点を知る。
百武の「臥婦像」を見たときの衝撃。
やがて、「着物姿の日本人女性」というテーマを見つけ、それに没頭した。
気に入れば、買えるだけ着物を買い、一日中、眺めた。
日本画の質感を大切にする一方で、レオナルド・ダ・ヴィンチの画角を取り入れ、キャンバスに布を貼るなど、西洋絵画からもヒントを得た。
日本と西洋の融合。
そうして描かれた女性は、独特の美しさをまとい、三越呉服店の広告に採用されるなど、「モダンガール」の生き方を後押しすることになった。
新しいものを取り入れることによって、自分の中だけにあるものに気づくということ。
岡田三郎助は、常に流行を見据え、女性たちに古きものと新しきものの魅力を提示した。
迷ったときは、コランの言葉を思い出す。
「オリジナリティの源泉は、自分の中にしかない」

【ON AIR LIST】
風のスケッチ / 松任谷由実
L'Autre Rive(むこう岸) / Pierre Barouh
ASK YOURSELF WHY / Micheal Legrand Trio
I JUST WANNA STOP / Gino Vannelli

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとれんこんのポタージュ風

今回は、佐賀で盛んに栽培されている食材、れんこんを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとれんこんのポタージュ風
カロリー
81kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • れんこん
  • 200g
  • 万能ねぎ
  • 1/4束
  • だし汁
  • 400ml
  • 小さじ1/3
  • 黒こしょう
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、れんこんは皮をむき半分は角切り、残りはすりおろす。万能ねぎは小口切りにする。
  • 2.
  • 霜降りひらたけはトースターで焼き色がつくまで焼く。
  • 3.
  • 鍋にだし汁を入れひと煮立ちしたられんこんを加え、弱火で5分程煮る。(2)を加え、塩と黒こしょうで味を調え、万能ねぎを飾る。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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