yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第四百三話 ピンチでチャンスを拾う -【今年周年のレジェンド篇】ポール・ゴーガン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第四百三話ピンチでチャンスを拾う

今年没後120年を迎える、後期印象派の巨匠がいます。
ポール・ゴーガン。
長らく、ゴーギャンという呼び方が定着していましたが、最近の美術展、書物は、よりフランス語表記に近い、ゴーガンを採用しています。
6月11日まで、東京上野公園の国立西洋美術館において開催中の「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」で出色のゴーガンの絵画が、12点展示されています。
ゴーガンというと、タヒチでの作家活動が有名ですが、実は、ブルターニュ地方のポン=タヴェンこそが、彼独自の絵画を確立した、大切な場所なのです。
ブルターニュで彼が見つけたもの、それは、「野生とプリミティヴ」。
深い信仰に裏打ちされた、素朴な心を持つ現地の人々に、ゴーガンは、人間の根源を見ます。
印象派を取り入れ、自身のオリジナリティに悩んでいた彼にとって、一生を賭けても足りない、壮大なテーマがそこにあったのです。
ゴーガンの人生は、混迷と苦難の連続でした。
パリ株式取引所に就職、家庭を持ち、平穏で満ち足りた生活をしていましたが、やがて絵画に興味を持つ。
世界恐慌を機に、妻の反対を押し切り、絵だけで生きていこうと決意。
しかし、現実はうまくはいきません。
貧困の中、妻は子どもを連れ、コペンハーゲンの実家に帰ってしまいます。
経済的にも精神的にも追い詰められていく、ゴーガン。
それでも、絵を画くことは諦めませんでした。
彼を襲うピンチの数々。
そんなときこそゴーガンは、大好きな絵に立ち戻り、あらたな画風を身に着けていったのです。
晩年、彼はこんなふうに語っています。
「苦しいときは、自分よりもっとつらい人間がいたことを考えればいい。
若者よ、人生は君が思うほど長くない。
人生の長さは一秒にも満たないのだ。
その僅かな時間に永遠に向けての準備をしなければならない!」
波乱万丈の一生を送りながら、唯一無二の作品を後世に残したレジェンド、ポール・ゴーガンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

今年、没後120年を迎える、後期印象派の画家、ポール・ゴーガンは、1848年6月7日、パリに生まれた。
父は、共和主義者のジャーナリスト。
母は、社会主義思想の作家の娘だった。
幼い頃から、世界平和、平等、貧困をいかに無くすかについて、叩き込まれる。
彼が生まれるとすぐ、共和派への弾圧が激化。
一家は、南米ペルーのリマに逃げた。
ペルーに向かう船で、父が亡くなる。38歳だった。
ペルーでは、母の叔父が副王として君臨していたので、歓待された。
南米の独特の風、匂い、食べ物。
インカ帝国の遺跡や他民族の風景は、幼いゴーガンの成長に多大な影響を与えた。
最も多感な6年間を、異境の地で過ごした彼に、野生の直感が根付く。
プリミティヴな原体験は、この世には人知を超えた神の意志があることを教えてくれた。
一方で、召使いとして働く黒人を見て、疑問に思う。
「お母さんは、人間は平等であるべきだといったけれど、なにかおかしい」
ゴーガンが7歳のとき、一家は、フランスに戻る。
父方の祖父の遺産を受け、母はパリに洋裁店を開いた。
ゴーガンは、リマではスペイン語だったが、ここでフランス語を学ぶ。
カトリック系の寄宿学校に3年間通ったが、窮屈で仕方ない。
「ボクは、もっと自由に世界をめぐりたい!」
彼は、船乗りになることを決意する。

ポール・ゴーガンは、パリの海軍予備学校を受けるが、試験に失敗。
でも、船乗りになることを諦めきれず、17歳で船員見習いとして念願の航海に出た。
リオ・デ・ジャネイロ、そして懐かしの南米ペルー。
パリにいたときより、体中の細胞が活性化するのがわかる。
この風、この匂い。
パリの海軍予備学校に受かっていたら、いま、自分はここにいない。
人生というのは、不思議だ。
うまくいかないことが起きても、それが別の扉を開けるチャンスになることもある。
世界中の国々を回っているとき、母の悲報を知る。
享年41歳。
悲嘆にくれたが、目の前の風景が癒しになった。
2年ほどの航海を終え、フランス海軍に入隊。
再び、エーゲ海、地中海、バルト海をめぐる。
23歳の時、知人の紹介でパリ株式取引所に就職。
優秀な株式仲買人として認められる。
裕福な暮らし。
結婚し、子どもにも恵まれ、誰もがうらやむ生活をおくった。
そのころ、ゴーガンは絵を画き始める。
もともと絵を画くのが好きだった。
キャンバスに向かうと、幼い頃から自分の中で育ててきた「野蛮」が目覚める。
妻は、絵を画くときの夫の目を見て、不安に思った。
「このひとは、何かとんでもないことをしでかすんじゃないのか」
不安は、的中した。

ポール・ゴーガン、25歳の時、世界を大恐慌が襲った。
株式仲買人たちは、みな、絶望の淵に立たされる。
しかし、ゴーガンは思った。
「これは、会社を辞め、絵だけで生きていけという神様の啓示じゃないのか!」
妻は、ゴーガンが絵を画くのは、趣味だと思っていた。
いや、そう思おうとしていた。

5人目の赤ちゃんが生まれたばかりだったが、彼は会社を辞めてしまう。
「大丈夫、少しずつ絵は売れている、蓄えもある、問題ない」
そうゴーガンは言ったが、恐慌の渦は、絵画市場をも飲み込んだ。
絵は、売れない。
みるみるうちに、蓄えは底をついた。
妻は子どもを連れて、ふるさとのコペンハーゲンに帰った。
ゴーガンは、ひたすら絵を画いた。
自分には、他のひとが画けないものが画ける。
そんな漠然とした自信が、彼の背中を押す。
このピンチは、いつかきっと新しい扉を開く。
そう信じ続け、彼は大好きな絵を手放さなかった。
その後も、ポール・ゴーガンは、どんな苦難にも希望の光を探し、彼にしか画けない名作を世に残した。

【ON AIR LIST】
IN MY LIFE / THE BEATLES
EL MILAGRO VERDE / LOS MIRLOS
VOLVER / SUSANA BACA
THIS IS ME / MISIA

★今回ご紹介している写真の一部は、国立西洋美術館で開催中の展覧会「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
展示作品、展覧会の会期など、詳しくは公式サイトにてご確認ください。

憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
公式サイト HP

<ご紹介作品>
ポール・ゴーガン 《海辺に立つブルターニュの少女たち》
1889年 油彩/カンヴァス 92.5×73.6cm 国立西洋美術館 松方コレクション

ポール・ゴーガン 《ブルターニュの農婦たち》
1894年 油彩/カンヴァス 66.5×92.7cm オルセー美術館(パリ)
©RMN-Grand Palais (musee d'Orsay) / Herve Lewandowski / distributed by AMF

<外観写真>
©国立西洋美術館
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとじゃがいものパイヤッソン

今回は、フランスの家庭料理、パイヤッソンをご紹介します。

霜降りひらたけとじゃがいものパイヤッソン
カロリー
215kcal (1人分)
調理時間
30分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • じゃがいも
  • 2個
  • 粉チーズ
    (グリュイエールがオススメ)
  • 30g
  • エストラゴン
    (パセリ、お好みのハーブでも可)
  • 適量
  • バター、塩、こしょう
  • 各適量
作り方
  • 1.
  • じゃがいもの皮をむき、大根のつまより太いくらいのせん切りにする。手で軽くしぼって水気を切り、軽く塩、こしょうをする。
  • 2.
  • 霜降りひらたけは1本ずつにほぐしたものと、縦4等分にさいたものを用意し、それぞれバターでソテーし、塩、こしょうをする。
  • 3.
  • フライパンを熱してバターを溶かし、(1)を半量敷く。(2)の縦4等分にさいたものを半量のせ、粉チーズとエストラゴンのみじん切りを振り、残りの(1)でフタをする。押しつけながら色づくまで焼き、ひっくり返して焼き色をつける。150℃のオーブンで7分ほど焼く。
  • 4.
  • 皿に盛り、残りの(2)をのせる。
  • recipe LIST

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RECIPE LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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