yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百六十五話 10年先を考える -【岡山篇】実業家 大原孫三郎-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百六十五話10年先を考える

岡山県倉敷市を愛し、世界に発信できる街づくりを実践した実業家がいます。
大原孫三郎(おおはら・まごさぶろう)。
もともと父が倉敷の大地主だったこともあり、その財力をもとに教育、医療、福祉など、さまざまな分野で次世代につなぐ功績を残した孫三郎ですが、彼が今わの際で最も気に病んだのは、大原美術館のことでした。
1940年代、時代は軍国化を極め、西洋の絵画を観にくるひとなど、ほとんどいなかったのです。
それでも彼は、倉敷の地に、世界に負けない美術館を作り、守り続けることをやめませんでした。
「わしの眼は、10年先が見える」
というのが口癖だった孫三郎。
「おそらく10年後も、この美術館には、ひとがそれほど来ないだろう。だがなあ、ここを閉じてはいけない。文化の窓を閉じたら、心が死ぬ」。
戦後を待たずして、彼は62年の生涯を閉じますが、言葉通り、大原美術館の客足はいっこうに増えませんでした。
しかし、奇跡は起こるのです。
昭和7年、満州事変のために来日したリットン調査団の団員たちは、大原美術館を訪れ、そこに展示してあった名画に驚愕します。
「エル・グレコが、まさか、ここにあるとは…」
自国に戻った調査団は、すぐに報告書をまとめました。
「ニッポンの地方都市、クラシキに爆撃してはいけない。あそこには、世界的な美術品がある」
おかげで、倉敷の街は爆撃目標からはずされたと言われています。
また、孫三郎は、倉敷の地に軍隊の師団設営を拒否。
当時としては命を落としかねない一大決心でした。
「わしの眼が黒いうちは、倉敷に軍隊を置かない!」
連帯配置を免れたことも、倉敷の戦火が最小限で済んだ理由のひとつにあげられています。
常に先を見て、目の前のひとの幸せを守る。
明治・大正・昭和を駆け抜けた風雲児、大原孫三郎が人生でつかんだ明日へのyes!とは?

実業家・大原孫三郎は、1880年7月28日、岡山県倉敷市に生まれた。
大原家は、もともと庄屋をつとめた豪農。大地主だった。
二人の兄が幼くして亡くなり、三男の孫三郎が大原家を継ぐことになる。
わがままし放題。どんないたずらをしても許された。
ただお金持ちであるということが、彼にはよくわからない。
小学生のときのこと。
彼の得意科目は習字と図画工作。
それ以外は、苦手だった。
ある日、教室で、教師が吐き捨てるように言った。
「どうせ、大原は金持ちの子だから、勉強なんかできなくていいだろ」
孫三郎は、カチンときた。
「先生、それどういうことですか? はっきり言ってください」
何も言わない教師にくいさがる。
「言わないなんて、卑怯じゃないですか!」
あとで級友から「おまえは先生に逆らって生意気だ!」といじめられた。
小学校を出て進学。
寮生活を送ったときも、同級生から袋叩きに合う。
「なんだ、その目つきは、生意気だ、金持ちだからっていばるな!」
この世は理不尽。他人とは理解し合えない。
殴られ、蹴られながら、彼はそう思った。

大原美術館をつくった実業家・大原孫三郎は、15歳のとき、東京に出たいと父に言った。
このまま狭い世界にいると、自分が壊れてしまいそうだった。
「孫さま」「若さま」と呼ばれることから逃げたい。
父を説得し、念願の東京暮らし。
しかし、状況は変わらないどころか、ますます悪くなった。
大金持ちの男、というレッテルは消えず、下宿先には絶えず、「知り合い」「友だち」を名乗る男女が押しかけ、食事をたかり、お金を無心した。
まだ見ぬ世界を教えてくれる彼等を、自分にとって必要な友人だと思った。
仕送りだけではどうにもならない。
高利貸しにお金を借りる。
気がつけば借金は、今の金額で数千万円を超えた。
せっかく入った東京専門学校、現在の早稲田大学も中退。
押し寄せる人間不信の波。
ひとが怖くなる。
そこから、最後に救ってくれたのは、義理の兄、12歳上の原邦三郎(はら・くにさぶろう)だった。
「孫さん、ひとを変えるには、自分が変わらなくちゃダメだよ。確かに孫さんはお金持ちだけど、それと人格は別もんだから」
孫三郎が金の工面をお願いしたその夜に、邦三郎は若くして他界。
大原孫三郎は、供養のため、倉敷に戻ることを決意した。
「僕は、生まれ変わる。そして倉敷とともに生きる」

倉敷に戻った孫三郎は、孤独だった。
友人がほしい。それも、親友と呼べるひと。
そんなとき、ある男の講演を聞いた。
岡山孤児院の院長、石井十次(いしい・じゅうじ)。
堂々として揺るぎない。
社会のために全てを投げ打つ覚悟があった。
孫三郎は、気づく。
「僕は人間不信だなどと甘えていた。邦三郎さんが言ったとおり、尊敬できる人間がいないと嘆く前に、自分が尊敬される人間になるべきだ」
さっそく石井のもとに通い、慈善事業や福祉活動を知る。
今、目の前にいるひとを守るには、10年先を見通す力が必要だ。
父の跡を継いだ彼の経営判断。
それは、こうだった。
「10人のうち、5人が賛成するようなことは、たいてい手おくれ。7、8人がいいと言ったら、もうやめた方がいい。2、3人ぐらいがいいという間に、仕事はやるべきものだ」
先を見越す力。
その底辺には、彼が青年期に味わった人間不信があった。
誠の関係は、時のうつろいに負けない。
まだ世に出ていない画家、児島虎次郎(こじま・とらじろう)の才能、人間性に惚れ、援助。友情を築く。
ヨーロッパ留学中に、気に入った絵を買い付けるよう頼んだ。
その絵画は、どれも素晴らしいものばかりだった。
児島が志半ばでこの世を去ったとき、孫三郎は、彼のためにも美術館をつくるべきだと考えた。
まわりからの猛反対をよそに、大原美術館が完成した。
倉敷の美観地区。
その奥に、孫三郎と児島の友情の証が鎮座している。
倉敷を守り続けた男は、最後までひとのあたたかい思いを信じた。

【ON AIR LIST】
聖母の御子(カタロニア民謡、セゴビア編) / 荘村清志(ギター)
OH WHERE OH WHERE IS LOVE? / The Kinks
YOU NEVER KNOW WHO YOUR FRIENDS ARE / Al Kooper
I CAN SEE FOR MILES / The WHO

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの吹き寄せ揚げ

今回は、倉敷の盛んに生産されている食材、ごぼうを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの吹き寄せ揚げ
カロリー
118kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 銀杏
  • 4粒
  • 里芋
  • 1個
  • ごぼう
  • 長さ5cm
  • にんじん
  • 15g
  • 片栗粉
  • 適宜
  • すだち
  • 2個
  • 揚げ油
  • 適宜
  • 適宜
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。里芋は薄切りにし、さっと洗う。ごぼうは縦に薄切りにし松葉切りにする。にんじんは紅葉型に切り抜く。すだちは半分に切り、切り込みを入れる。
  • 2.
  • 鍋に揚げ油を入れ、さらに里芋、ごぼう、にんじんを入れ熱し、中温になるまで揚げる。
  • 3.
  • 銀杏は中温で素揚げにし、霜降りひらたけは片栗粉をまぶしカリッとなるまで揚げる。
  • 4.
  • 全体に塩をふり、皿に盛り合わせ、すだちを添える。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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