yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百七十九話 自分の気持ちに嘘をつかない -【愛知篇】政治家 市川房枝-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百七十九話自分の気持ちに嘘をつかない

87歳のときに、参議院議員選挙・全国区で278万4988票を獲得し、第1位当選した女性がいます。
市川房枝(いちかわ・ふさえ)。
彼女は、企業からの献金に頼らず、全国の支持者からの献金だけで政治資金をまかないました。
大音量の拡声器による演説を拒み、理想選挙を掲げた上での快挙でした。
惜しくも翌年、議員在職のまま、病でこの世を去りますが、彼女が生涯を賭けた「女性の地位向上のための活動」は、今も引き継がれ、多くの女性たちを励ましています。
全ての始まりは、幼い頃に見た家庭内の光景にあります。
気の短い父が癇癪を起し、母に暴力をふるっている…。
幼い市川は、必死で母をかばう。
「お母ちゃんを、ぶたないで!」
怒りの矛先を見失い、やがて家を飛び出す父。
決まって母は、言いました。
「女に生まれたのが、因果だから…」
家事、育児、出産、介護に、さまざまな労働。
働き続けて一生を終える女性たちが多かった時代でした。
幼いながらに、市川は思いました。
「女性に生まれたことが因果だなんて、おかしい」
理不尽さへの怒りと悲しみが、彼女の原点になったのです。
大正時代初期は、参政権どころか、女性は、政治的な集会に参加、傍聴することすら禁止されていました。
治安警察法第5条です。
1919年、大正8年。
市川は、平塚らいてう(ひらつか・らいちょう)らと、日本で最初の婦人団体、新婦人協会を設立。
治安警察法第5条の改正を求める運動を開始しました。
さまざまな妨害や弾圧にも屈することなく、前に進む市川。
でも、彼女はいつも強く、いつも失敗をしない、完璧な女性だったわけではありません。
笑顔を絶やさない、人間味あふれた、ごくごくフツウの人間でした。
ただ、何かおかしい!と、ひとたび感じると、こう言いました。
「私は、憤慨しとるんですよ!」
自分の心が間違っていると叫べば、間違いだと言い続けたのです。
女性の地位向上のために奔走した政治家・市川房枝が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

女性解放運動に生涯を捧げた政治家・市川房枝は、1893年5月15日、愛知県中島郡明地村、現在の一宮市に生まれた。
この年は、日清戦争の前年にあたり、そして、女性の政治活動を禁止する法律が公布されてから3年後だった。
家は、木曽川沿いの農家。
地主とまではいかないが、食べるものには困らない自作農。
幸せな子ども時代だった。
ただ、父が母を怒るときだけは、つらい。
父は短気で癇癪持ち。
ふだんは優しく子煩悩で、真面目に働いていたが、何かにつけ、母にあたる。
その背景には、農家をやっている自分の境遇に対する恨みつらみがあった。
学問がしたかった。できれば海外に行きたかった。
でも、農家を継ぐはずの兄がいきなり家を出てしまう。
仕方なく継いだ家。
「オレには、もっと違う人生があった…」
そんな思いが、いつも爆発してしまう。
母を殴る父を、房枝は必死でとめる。
房枝が小さな両手を広げれば、父は母への暴力をやめた。
母は母で、自分の無学や教養のなさを恥じていた。
だから、文句ひとつ言わずに働く。
「女だから、仕方ない…」
いばる男と、虐げられた女性。
この構図が世間では当たり前であることに、房枝は違和感と憤りを覚える。
「母のように女性に生まれたことが哀しいなんて、思いたくない」

市川房枝の父は、自分ができなかった学問を、子どもたちには受けさせてあげたいと願った。
それは、息子だけではなく、娘たちに対しても同じだった。
長女はのちに奈良の師範学校に進学、房枝の妹は名古屋の女学校を出てアメリカに渡ることになる。
房枝も、岡崎市の師範学校女子部に入学した。
近所では、笑いものだった。
「女の子に学問なんかさせたって無駄なのに」
そう揶揄された。
それでも父は、娘たちにやりたい学問をやらせた。
まるで自分の人生に復讐するかのように…。
ただ房枝は、尋常小学校のときから、学校が嫌いだった。
野山を駆け回る、おてんば。
授業中も窓の外を見て空想にふけった。
お弁当を持って家を出ても、隣の納屋に隠れ、サボる。
ひとりの時間が好きだった。草木と語らい、本を読む。
サボっているのがバレて、こっぴどく母に叱られる。
父も怒ったが、ぼそっと、こう言った。
「学べるっていうのはなあ、有難いことなんだ」
房枝は不思議な子どもだった。
農家の仕事は、他のどの子どもよりテキパキ手伝う。
水やり、肥やり、ニワトリの世話。
的確で、効率的。
ジャガイモを荷車に積んで、名古屋の料理店までひとりで運んだ。
泥だらけの顔でニコニコ笑う、房枝。
店主は、少女の行動力と笑顔に感動した。

市川房枝の行動力は、両親も驚くほどだった。
14歳で計画したアメリカ行きは叶わなかったが、15歳で上京。
しかし、病魔が彼女を襲う。
実家に戻り、療養。
朝露に濡れると治る、と信じられていたので、あぜ道を転びながら歩いた。
泥だらけになりながら、彼女は思った。
「私は、もう永くは生きられないんだろうか…」
この数か月の体験が、彼女を変えた。
人生は、短い。
人生には、後悔している時間も、自分の心に嘘をついている時間もない。
思ったことは、やってみる。
違うと思ったことには、とことん闘いを挑む。
病を治し、師範学校の女子部に復学。
4年生のとき、名古屋の師範学校に統合される。
そこで、校長の訓辞に違和感を覚えた。
「女子は、良妻賢母となるべきです」
良妻賢母?
それって、夫にとっての良き妻、子どもにとっての良き母でいろってこと?
それだけ?
女性の生き方、幸せは、それだけ?
校長の偉そうな態度に、憤りを覚える。
市川房枝は、仲間を募ってストライキを敢行。
校長に、28箇条の改善要求を突き付けた。
この経験は、市川に、ある手ごたえを与える。
正しいことを正しいと主張すれば、必ず賛同してくれるひとはいる。
自分の憤りから逃げずに、自分の心に正直になれば、必ず道は開ける。
市川房枝は、常にこう言い続けた。
「平和なくして、平等なし。平等なくして、平和なし」

【ON AIR LIST】
NO EXCUSES / Meghan Trainor
RESPECT / Aretha Franklin
FRIDAY / Chris Thile(マンドリン)、Edgar Meyer(コントラバス)
GOOD TIMES~あの空は何を語る / 原 由子

★今回の撮影は、「公益財団法人 市川房枝記念会女性と政治センター」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
施設案内など、詳しくは公式HPにてご確認ください。
公益財団法人 市川房枝記念会女性と政治センター HP
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと旬野菜の重ね蒸し

今回は、一宮市で盛んに生産されている野菜、白菜を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと旬野菜の重ね蒸し
カロリー
273kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 白菜
  • 2枚
  • 豚ロース肉(薄切り)
  • 120g
  • かぼちゃ
  • 60g
  • さつまいも
  • 50g
  • ブロッコリー
  • 1/4株
  • 大さじ2
  • 市販のごまだれ、
    ポン酢等
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。白菜はざく切りに、豚肉は半分に切る。かぼちゃ、さつまいも、ブロッコリーは食べやすい大きさに切る。
  • 2.
  • フライパンに白菜と豚肉を交互に重ね、その他の具材をまわりにのせ水を入れてフタをし、火にかける。
  • 3.
  • 具材に火が通るまで10分ほど蒸したらお好みのタレにつけていただく。
    ※皿に盛りつけ、皿ごと蒸し器で蒸しても簡単に作れます。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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