yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第四百話 直感を信じる -【音楽家のレジェンド篇】ジョージ・ガーシュウィン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第四百話直感を信じる

ポピュラー音楽とクラシックの融合を成し遂げた、「アメリカ音楽の父」と呼ばれる音楽家がいます。
ジョージ・ガーシュウィン。
1924年2月12日、ニューヨークのエオリアンホールに集まった聴衆は、今まで聴いたことがないような旋律に驚きます。
若干25歳の青年が作曲した、『ラプソディ・イン・ブルー』。
ガーシュウィンは、この作品をわずか2週間で書き上げました。
ボストンに向かう列車の走行音から着想したと言われる楽曲で、彼は一夜にして、富と名声を得るのです。
専門的な音楽学校に通うこともなく、独学でオーケストレーションを学び、ミュージカルや映画音楽だけではなく、クラシックの作曲家として、世界的にその名を知られるようになりました。
さらに自分を高めるため、当時、一世を風靡していたモーリス・ラヴェルに教えを請うたのですが、こう言われます。
「ガーシュウィンさん、あなたはもうすでに一流のガーシュウィンなのだから、今更、二流のラヴェルになる必要はありません」
東欧系のユダヤ人の移民の子として、ブルックリンに生まれた彼は、決して裕福な環境に恵まれたわけではありませんでした。
やんちゃで粗野だった彼の、その人生を変えるきっかけになったのは、6歳の時の直感でした。
場末のゲームセンターから流れてくる音楽を聴いて、思わず立ち止まったとき、ガーシュウィンの音楽人生が始まったのです。
彼は、こんな言葉を残しています。
「人生は、ジャズととてもよく似ている。
直感に従った即興のときほど、全てうまくいく」
アメリカ音楽の新しい扉を開いたレジェンド、ジョージ・ガーシュウィンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

作曲家、ジョージ・ガーシュウィンは、1898年9月26日、ニューヨーク州ブルックリンで生まれた。
父はロシア、母はベラルーシからの移民だった。
父は、靴工場の職人、パン屋、葉巻店、ビリヤード場、さまざまな仕事を始めてはやめ、やめては、また新しく始めた。
そのたびに、一家は引っ越しを繰り返す。
裕福ではなかったが、食べるものに困るほどではなかった。
ユーモア好きな両親のもと、家にはいつも笑い声があふれていた。
ガーシュウィンは、幼い頃から、ニューヨークの街を歩き回るのが大好きだった。
街を行きかう、手押し車や馬車。
露店で売られる果物の香り。
頭上を走る電車の爆音。
喧騒の中を走り回る。
いたずらに喧嘩。
手がつけられない子どもだった。
それは、6歳のときのこと。
当時、一家が住んでいたハーレムの125丁目。
ガーシュウィンが歩いていると、ゲームセンターから音楽が聴こえてきた。
自動ピアノが演奏する、ラグタイムの曲。
音がやむ。
もっと聴くには、5セント硬貨をいれなくてはならない。
急いで家に帰り、お金を持ってくる。
硬貨を入れると、流れて来たのは、アントン・ルビンシュタインの2つのメロディ第1番。
体を雷が通り抜けたように、しびれて、動けない。
穴の開いた紙のロールが溝に沿ってすべり、鍵盤が叩かれるのをじっと見つめる。
機械仕掛けの楽器が、まるで生きているようだった。
「なんて美しい音楽なんだろう…」
その旋律は、少年の心に深く根をおろし、彼はいつまでもメロディの中にいた。
「音楽って…すごい」
演奏がやんでも、ガーシュウィンはその場に立ち尽くした。

ジョージ・ガーシュウィンは、12歳のときにも、不思議な音楽体験をする。
講堂で1学年下のマキシーという生徒の演奏会があると聞いていたが、興味がないのでサボるつもりだった。
こっそり講堂を抜け出しているとき、ヴァイオリンの音が響いてくる。
ドボルザークの『ユーモレスク』。
6年前と同じように、体が動かなくなるほど感動した。
誰のなんという曲か知らなかったが、直感的に、マキシーと友だちになりたいと思う。
その日の夕暮れ。学校の校門でマキシーを待つ。
雨が降ってきた。
雨脚はどんどん強くなり、全身ずぶぬれ。
マキシーは、別の通用口から帰ったようだった。
諦めきれず、彼の住所をたよりに、自宅に行く。
彼は不在だったが、マキシーの家族は、濡れネズミの少年が「マキシーに会いたいんです、ボクは彼のファンです!」というのを聞いて、家に通した。
やがて、帰ってきたマキシーに、ガーシュウィンは、素直に感動を伝えた。
そうして、仲良くなった二人。
マキシーは、クラシックのことを丁寧に教えてくれた。
ガーシュウィンは、兄のために父が買ったピアノを弾くようになる。
兄はすっかり興味をなくしていたので、両親はガーシュウィンの熱心さを、これ幸いと受け入れた。
いつしか彼は、マキシーがヴァイオリンで奏でた曲を自宅で再現できるようになる。
こうして、ガーシュウィンの音楽人生が始まった。

ジョージ・ガーシュウィンの音楽への熱の入れようは、尋常ではなかった。
ただ、彼はピアノ以外のことをやめることはしなかった。
ローラースケートに、路上での野球やバスケットボール。
相変わらず喧嘩をして怪我もする。
学校をサボって街を歩き回ることも続けた。
彼は自分の直感だけを信じた。
ワクワクすることは、全部やる。
あまりの入れ込みように、父もピアノの教師を雇ったが、感覚的に合わないと、すぐに変えてもらうようお願いした。
体が震える瞬間。
全ての思考が停止するほどの感動。
音楽の素晴らしさは、決して頭で理解できるものではない。
そうならば、自分の感じ方を守らないかぎり、いいものを作れないはずだ。
譜面の書き方や基本的な技術は一生懸命学んだが、最後に頼るのは、己の直感だけだった。
ジョージ・ガーシュウィンは、38年の生涯で、舞台音楽を50曲、歌曲を500曲、ミュージカルを50曲、管弦楽曲を7曲、作曲するなど、数多くの作品で聴衆を魅了し続けた。
彼の曲を聴いて、作曲家を目指す少年がいることを想像しながら。

【ON AIR LIST】
ラプソディ・イン・ブルー / ジョージ・ガーシュウィン(作曲)、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団、レナード・バーンスタイン(指揮、ピアノ)
アイ・ガット・リズム(映画『巴里のアメリカ人』) / ジーン・ケリーと子供たち
ストライク・アップ・ザ・バンド / オスカー・ピーターソン(ピアノ)、バーニー・ケッセル(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)
サマータイム / エラ・フィッツジェラルド(ヴォーカル)、ルイ・アームストロング(トランペット)、ラッセル・ガルシア・オーケストラ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと春キャベツのキッシュ

今回は、今の時期におすすめの料理をご紹介します。

霜降りひらたけと春キャベツのキッシュ
カロリー
198kcal (1人分)
調理時間
25分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 春キャベツ
  • 200g
  • 桜えび
  • 大さじ3(6g)
  • 2個
  • 牛乳
  • 100ml
  • ピザ用チーズ
  • 大さじ2
  • 小さじ1/2
  • オリーブオイル
  • 小さじ1
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。春キャベツは食べやすい大きさに切る。
  • 2.
  • フライパンにオリーブオイルを熱し、霜降りひらたけ、春キャベツを炒め、塩で味を調える。
  • 3.
  • ボウルに卵を溶き、牛乳とチーズ、桜えびを混ぜる。
  • 4.
  • 耐熱皿に(2)と(3)を入れ、オーブントースターで火が通るまで焼く。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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