yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第四百一話 水のように -【今年周年のレジェンド篇】ブルース・リー-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第四百一話水のように

今年没後50周年を迎える、伝説のアクションスターがいます。
ブルース・リー。
1973年7月20日、32歳の若さでこの世を去ったレジェンドは、多くの名言を残しました。
「私が恐れるのは、1万通りの蹴りを一度ずつ練習した人ではない。
たった一つの蹴りを、1万回練習した人だ」
この言葉の通り、地道な日々の努力を絶やさないひとでした。
何不自由なく育ち、街で札付きの不良になった青年は、ある日、喧嘩に負けます。
ショックでした。
自分が負けるとは、思わなかった。
その悔しさから、本気で武術を学ぼうと決意したのです。
決して大柄な体格でなく、人種的な差別にも耐え、彼は、スーパースターへの道を一気に駆け上がりました。
『燃えよドラゴン』の監督、ロバート・クローズは、撮影現場に現れたブルース・リーの体を見たとき、驚きます。
鍛え抜かれた鋼のような筋肉は、今まで一度も見たことがないほど、輝いていたのです。
ブルース・リーが目指した体は、鉄でも木でもコンクリートでもありませんでした。
彼が目指したのは、水。
宮本武蔵の『五輪書』に通じる、思想。
「心をからにしなさい。
形を捨て、形をなくすのです、水のように。
コップに注げば、コップの形になり、ボトルに注げば、ボトルの形になる。
そんな変幻自在な水は、ときに、とてつもないチカラを持つ。
わが愛しき友よ、水になりなさい!」
今も愛される唯一無二の武術家にして、ムービースター、ブルース・リーが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

今年、没後50年を迎えるブルース・リーは、1940年11月27日、アメリカ、サンフランシスコに生まれた。
父は、広東オペラの俳優、母は、中国人とドイツ人の混血。
のちに香港に移り住むが、基本、英語を話すようになる。
この出自が、彼のアイデンティティをつくった。
自分は、いったい何人なのか。
容姿は背の低い、華奢なアジア人。
でも、中国語は話せない。
移り住んだ場所は、当時イギリス領の香港。
広東語の授業に、ついていけない。
クラスメートから、発音を笑われる。
「どこで生まれるか、どこで育つか、何語を話すか、別に、自分で決めたわけじゃないのに、そんなことだけでバカにされるなんて、おかしい、理不尽だ!」
憤りは、病弱な少年を喧嘩に駆り立てた。
父に教わった太極拳は、リズムが遅くて性に合わない。
自己流で相手に向かっていく。
喧嘩をして帰ってきた我が息子を、父は静かに諭した。
「喧嘩は、際限がない。
相手をやっつければ、怨みを買い、もっと強いやつがやってくる。
いつかとことん負けて、人生は台無しだ」
ブルース・リーは、思った。
「じゃあ、イチバン強くなればいいんじゃないのか」
父のすすめで、8歳から子役スターとして映画に出るが、全く面白くない。
それよりも、街をさまよい歩き、喧嘩をしていたほうが、生きている実感があった。
香港は、混乱していた。
終戦後、中国からの移民が大量に流れ込み、治安は、悪化の一途をたどっていた。
いつしかブルース・リーは、その界隈で知らぬものがいない、札付きの不良になっていた。

ブルース・リーが少年時代を過ごした香港は、日本からイギリスに統治が変わり、学校でも、イギリス人と香港人の争いが絶えなかった。
イギリス人があきらかに優位に立ち、香港人が出世し、裕福に暮らせる望みはなかった。
ブルース・リーが、12歳で中学に進んだときのことだった。
ある日、ひとりで九龍のネイザンロードを歩いていたら、対立する不良グループに囲まれた。
「大丈夫、これくらいの相手なら、勝てる」
そう思ったが、結果は、惨敗。
自己流の技は、通用しなかった。
相手は、武術の達人だった。
突き、蹴り。
全ての技に無駄がない。
初めて、中国の武術の深みに触れる。
腫れた顔で、ブルース・リーは、すぐさま香港武術の道場に入門する。
彼が入ったのは、葉っぱに問うと書く、葉問。
別名、イップマンの道場だった。
このイップマンが、ブルース・リーにとって、生涯唯一の師匠となることを、そのときはまだ彼自身、知る由もなかった。

ブルース・リーが入ったイップマンの道場。
そこは、春を詠むと書く、「詠春拳」を教えるところだった。
女性拳闘家の名をとったと言われる詠春拳は、主に、護身術に重きを置いていた。
「相手を倒すことより、相手の力を利用して、争い自体をしなくてすむようにしむける」
自分の身を守るのは、何も相手を打ちのめすことだけではない。
この道場に通ったことが、ブルース・リーを変えたと言っても過言ではない。
「そうか、チカラでねじ伏せなくても、相手の力を借りて倒せばいいのか…」

香港時代の彼の喧嘩は、徹底的に相手を叩きのめすことしかなかった。
高校に進んでも、イギリス人で3年連続優勝のボクシングチャンピオンを、マットに沈めた。
強くあること、負けないこと。
それが正義だった。
でも、師匠は言った。
「この世で一番強いのは、水です。
相手に合わせ、自分の姿を変えられるもの。
どんな器にも対応できるのが、真の武術なのです」
ブルース・リーは、強さを誇ることをやめた。
怒りを覚えると、常に、こう心に念じた。
「水になれ」

【ON AIR LIST】
燃えよドラゴン / ラロ・シフリン
アウトロー / ウォー
プラ・ヴィーダ / ホジェー
水のように / 佐野元春 & THE COYOTE BAND

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと筍の炒り煮

今回は、今が旬の筍を思いきり楽しめる、こちらの料理をご紹介します。

霜降りひらたけと筍の炒り煮
カロリー
104kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 2パック
  • 200g
  • ごま油
  • 大さじ2
  • 【A】だし
  • 240ml
  • 【A】しょう油
  • 大さじ2
  • 【A】みりん
  • 大さじ2
  • 一味唐辛子
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • 筍の穂先の部分は4cm長さに切り、縦4等分に切る。台の部分は1cm幅に切り、4等分に切る。
  • 3.
  • フライパンにごま油を熱し、(1)を炒める。
  • 4.
  • 油がなじんだら【A】を加え、汁気がなくなるまで炒りあげる。
  • 5.
  • 仕上げに一味唐辛子を振り入れ、お好みで針唐辛子を添える。
  • recipe LIST

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RECIPE LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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