yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百三十九話 幸せを与える生き方を選ぶ -【山形篇】喜劇役者 伴淳三郎-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百三十九話幸せを与える生き方を選ぶ

「アジャパー」という驚きと困惑を現した流行語の産みの親、バンジュンこと伴淳三郎は、山形県米沢市に生まれました。
「アジャパー」は、伴がたまたま発した山形弁に起因しています。
1951年、昭和26年に公開された松竹京都映画『吃七捕物帖 一番手柄』。
長い下積み生活を送っていた伴がようやくつかんだ役は、用心棒。
伴たち悪役が目明したちに取り囲まれ、一網打尽になるそのとき、彼はこんなアドリブを言ってしまいます。
「一瞬にして、パアでございます」
思わず吹き出すスタッフたち。
監督は、「もっと奇妙な感じでやってみて!」と声をかけます。
伴は、「アジャジャー」と叫びました。
これは、山形弁で老人が驚いたときに発する言葉です。
「もうひとこえ!」と監督に言われ、口をついて出たのが「アジャジャーにしてパアでございます」。
この言葉を短くした「アジャパー」は、あっという間に流行語になり、日本全国、子どもから大人まで口にするようになりました。
先生に叱られて「アジャパー」。会社でミスをして「アジャパー」。
喜劇映画で多くの観客を笑わせる一方、1964年、伴が56歳のときに出演した内田吐夢監督の『飢餓海峡』では、老刑事役をシリアスに熱演。
毎日映画コンクールで助演男優賞を受賞しました。
内田監督に徹底的にしごかれ、罵詈雑言を浴びせられ、憔悴しながらも、伴は山形警察署に足を運び、特別に刑事の取り調べを見学させてもらいました。
まさに、まもなく定年を迎える刑事が犯人に対峙しています。
伴は刑事の、犯人の人生に寄り添う姿に感動を覚え、自分の役柄の意味を知りました。
そして、母の言葉を思い出すのです。
「ひとさまに幸せを与える人間になっておくれ」。
昭和を代表する喜劇役者・伴淳三郎が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

バンジュンの愛称で親しまれた昭和の喜劇役者・伴淳三郎は、1908年1月10日、山形県米沢市で生まれた。
父は、中国の南宗画に由来する画家。
伴は後妻との間に生まれ、歳の離れた母の違う兄がいた。
筆一本では食べていけない父。貧しかった。
山形の各地や東京を放浪し、そのたびに伴たち家族もついていった。
ようやく定住したのは、山形県 小姓町。
近所からお化け屋敷と言われる古い家だった。
幼い伴は、その家が嫌いだった。
怖くて、夜、便所にいけない。
便所は家屋から離れた梅林をけずった庭にある。
すぐ隣に古い井戸。
不気味だった。
風にさやさやと揺れる笹の葉。月明かりを横切る鳥の影。
泣いて便所から帰る伴に、母はこんな話をしてくれた。
「便所が怖い男の子のために、ある日、お母さんが便所にかぼちゃと夕顔をつるしておいたんだ。怖れをなして逃げ帰る男の子に、お母さんは言ったんだよ。毎日つくってる野菜を怖がっていたら、なんにもできねえぞっ てなあ。その日以来、男の子は便所が怖くなくなったそうだよ。しょせん、かぼちゃと夕顔だぁってねえ」
伴の母は、寝る前にいつも歌を歌ってくれた。
高く、綺麗で、哀しい声だった。

伴淳三郎は幼い頃、臆病だったが、やんちゃだった。
おでん屋の屋台のつっかい棒をはずして、屋台をひっくり返したり、米屋で米と小豆をかき混ぜてしまったり、いたずらが好きだった。
極度の近眼で背は小さく、前歯は反り返っている。
家の貧しさはクラスで一番。
父はいつも家にいなかった。
いじめられてもバカにされても笑っていた。
勉強はできなかった。
メガネをすぐに壊してしまうので、黒板が見えない。
頭がずきずき痛んで、何かを覚えることができない。
先生からも呆れられた。
それでも大好きな女の子にひどい言葉を言われ、笑われたときは泣いて帰った。
母は言った。
「人間は、ひとさまに笑ってもらうくらいでちょうどいいんだよ。ひとさまに幸せを与える人間になっておくれ」
伴は、自分をいじめるやつらを、かぼちゃと夕顔だと思うようにした。
相手が野菜なら腹も立たないし、みじめな思いをすることもない。
クラスのみんなを笑わすようになった。
みんなが笑ってくれると、自分がそこにいてもいいと言われているように感じる。
伴は思った。
「そうか、笑われる前に、笑わせてしまえばいいんだ」

伴淳三郎が小学5年生のとき、写生に出かけた父からいつものように絵ハガキが届いた。
馬のしっぽが画いてある。
それを見た伴は、母に言った。
「お母さん、お父さん、長くないかもしれない。だって、落款が逆さまに押してある」
伴の言葉通り、それから数日後、父の訃報が届いた。
滞在していた旅館での急死。
葬儀の日は、雪が舞っていた。
歳の離れた兄は工業高校の教師をしていて、ひとり人力車に揺られ、母と伴は、素足にわらじを履いて、棺のあとを歩いた。
泥が背中まではねる。
寒い。
あかぎれだらけの母の手も、氷のように冷たかった。
兄を憎み、うらんだ。
貧しさが哀しかった。
みじめさが、雪と共に降り注いできた。
それでも母は、キッと前を見て歩いた。
その横顔には、苦難に立ち向かう強さがあった。
思えば母は、一度もこの世を恨む言葉を言わなかった。
伴に惜しみなく、愛を注いでくれた。

14歳のとき、東京で役者になると決めた伴を、母は駅で見送ってくれた。
「はい、これ、汽車の中で食べて」
風呂敷の中身は、大きな握り飯が二つ。
この米を買うために、母がどれほど空腹を我慢したかを想像した。
「おまえは、まだ寝小便するからねえ」
別の袋には、手縫いのパンツがいくつもあった。
涙がこぼれる。
母は、頭をなでて、言った。
「いいかい、ひとさまに幸せを与える人間になっておくれ」
アジャパーは、伴が世界に発した、幸せの言葉。
母の教えを守った、奇跡の言葉。

【ON AIR LIST】
アジャパー天国 / 泉友子、伴淳三郎
時の子守り唄 / 尾崎亜美
いつも笑顔で / YO-KING
MAKE SOMEONE HAPPY / Jimmy Durante

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとアスパラガスのオイスターソース炒め

今回は、米沢市の特産でもある食材、牛肉を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとアスパラガスのオイスターソース炒め
カロリー
113kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 牛薄切り肉
  • 80g
  • アスパラガス
  • 60g
  • 長ねぎ
  • 5g
  • サラダ油
  • 大さじ1
  • 【A】オイスターソース
  • 大さじ1
  • 【A】しょうゆ
  • 大さじ1
  • 【A】酒
  • 大さじ1/2
  • 【B】片栗粉
  • 小さじ1/2
  • 【B】水
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。牛肉は一口大に切る。
  • 2.
  • アスパラガスは下の固い部分の皮をむき、固めに茹でて、3cm長さに切る。
  • 3.
  • 長ねぎはみじんに切る。
  • 4.
  • フライパンにサラダ油を温め、長ねぎと霜降りひらたけ、アスパラガス、牛肉を入れて炒める。
  • 5.
  • 霜降りひらたけに火が通ったら【A】を加えてからめ、【B】でとろみをつける。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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