yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百九十一話 全ては自分の中にある -【岩手篇】映画監督 相米慎二-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百九十一話全ては自分の中にある

今もなお、国内外のアーティストに影響を与え続ける映画監督がいます。
相米慎二(そうまい・しんじ)。
岩手県盛岡市で生まれた彼は、1980年、薬師丸ひろ子出演の『翔んだカップル』で監督デビュー。
翌年の『セーラー服と機関銃』で興行的に大成功をおさめ、1985年の『台風クラブ』は、第一回東京国際映画祭でグランプリを受賞し、名実ともに名監督の座にのぼりました。
その徹底した演技指導は、俳優を追い詰め、時に涙を流しても、相米は容赦しませんでした。
演技経験のあまりない少年少女にも、何回も何回も繰り返し演じさせました。
彼は俳優に、自分で考えることを強いたのです。
「おまえの役なんだから、もっと他にあるだろう! もっと面白いものがあるだろう! 役っていうのはな、役者がゼロからつくるんだ!」
撮影中、何度も精神的に奈落の底に落とされても、出来上がった映画を観ると、また相米慎二と組みたくなる。
多くの俳優がそう願い、「相米組」は伝説になりました。
没後20年の今年、再び相米監督の評価が世界的に高まっています。
2005年の韓国の映画祭での上映をきっかけに、2012年のフランス、イギリス、2015年のドイツなど、彼のフィルムは海を渡り、多くの若者の心を揺り動かし続けているのです。
53歳の若さで急逝。
監督した13作品には、相米の魂が焼き付いています。
彼は生前、学生たちに話していました。
キネマ旬報社のシネアストに、講演の様子が掲載されています。
「フィルムっていうのは、歌や呪いと同じように動物的感覚を持っているものです。私は映画は映し出されているそのものには別に価値はないと思っているんです。そこに映っていないもの、映し出されているものが内に秘めているものに、映画というものの本当の価値があると思っているのです」
鬼才・相米慎二が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

映画監督・相米慎二は、1948年1月13日、岩手県盛岡市に生まれた。
6歳のとき、父の転勤で北海道に移る。
ほどなくして、父が亡くなった。
その後、札幌、釧路と転校を繰り返す。
中学生のとき、なんとなく、自分は何者にもなれないような気がした。
世界と自分の乖離(かいり)。
とまどい、不安。
距離感がつかめない。
映画館は、唯一自分が自分でいられる居場所だったのかもしれない。
釧路の高校を出て、中央大学に入学。
でも、卒業を待たず中退。
その理由も経緯も、多くを語らなかった。
映画『青春の殺人者』や『太陽を盗んだ男』の監督、長谷川和彦と知り合う。
お金もやることもなかった相米は、長谷川の下宿に転がり込み、彼の口利きで、日活の撮影所に出入りするようになった。
助監督の下っ端。
ただ、なぜか動きや醸し出す雰囲気が、助監督のそれではない。
すでに監督の風格。
細かい雑用そっちのけで、カメラワークや俳優をいかに演出するか、しつこく監督に尋ねた。
目つきが鋭い。怖い。何を考えているのかわからない。
相米はすでに思っていたに違いない。
「映画は、人生を全て賭けるに値するものだ」。

映画監督・相米慎二の劇場映画デビュー作は、薬師丸ひろ子の出演第二作『翔んだカップル』だった。
すでに従来のアイドル映画の枠を超える演出がほどこされた。
薬師丸を鶴見辰吾が探すシーン。
手持ちのカメラで鶴見の目線で撮る。
長回しの緊張感、臨場感がスクリーンから伝わる。
さらに次の作品『セーラー服と機関銃』で、相米演出は早くも開花した。
薬師丸ひろ子を、吊り上げ、はり付けにする。
過激な演出は、役者を追い込む装置に思えた。
俳優が成長していくさまが、そのまま、映画の中の人物と重なる。
相米は、言い続けた。
「おまえがおまえであることを、自分で発見しなきゃいけないんだよ。誰も手助けなんかしてくれない。自分で見つけるしかないんだ。自分を、つかまえろ!」
ワンシーン・ワンカット。
それが相米慎二の代名詞になった。
長回しは、俳優、スタッフのエネルギーを集中させる。
朝から夕方日没まで、同じシーンの繰り返し。
カメラは回さない。
何度も何度もリハーサルを繰り返すうちに、役者からいろんなものが剥がれていく。
よく見せようとする演技、自己顕示、自己満足。
ようやくありのままの自分が姿を見せたとき、相米が大きな声を出す。
「よーい! スタート!」

映画監督・相米慎二は、照れ屋で人見知り。
初めて組む俳優がゴルフをすれば、ゴルフ場に誘った。
フェアウエーを歩きながら、ようやく映画の話をした。
お酒を飲みながら、新作の構想について饒舌に語った。
口は悪く、容赦ない。
でも、関わるひとみんなが相米を好きになる。
映画への情熱。
いいものを作るために妥協をしない粘り強さ。
関わるひと全てから120%引き出したいという熱意。
過酷な「相米組」を終えるとホッとするが、また戻ってきたくなると多くのひとがいう。
それはきっと、ひとは自分で自分を追い込むことができないからだ。
心底 愛情をもって、自分とは何かを気づかせてくれるひとは、なかなかいない。
もしかしたら、作品ごとにいちばん己を追い込んでいたのは、相米自身なのかもしれない。
「違う、違う、こんなはずじゃない。もっと出るはずだ、何かあるはずだ」
そんな思いで作り続けた13作品。
相米慎二の映画は、常に問いかける。
「おまえは、それでいいのか? そこでやめていいのか? もっとさらけだせ。自分から、逃げるな」

【ON AIR LIST】
Breakout / Swing Out Sister
セーラー服と機関銃 / 薬師丸ひろ子(映画『セーラー服と機関銃』)
情熱 / 斉藤由貴(映画『雪の断章 -情熱-』)
帰れない二人 / 井上陽水(映画『東京上空いらっしゃいませ』)

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの押し寿司

今回は、岩手で盛んに生産されている野菜、きゅうりを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの押し寿司
カロリー
740kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • きゅうり
  • 1/2本
  • 1個
  • 少々
  • 【A】酒
  • 大さじ2
  • 【A】みりん
  • 大さじ2
  • 【A】砂糖
  • 大さじ1
  • 【A】しょう油
  • 大さじ1
  • 100ml
  • 〈酢飯〉
  • ご飯
  • 2合
  • 【B】酢
  • 大さじ2
  • 【B】砂糖
  • 大さじ2
  • 【B】塩
  • 小さじ1
作り方
  • 1.
  • 炊いたご飯に【B】を混ぜ合わせて、酢飯を用意する。
  • 2.
  • 鍋に小房にほぐした霜降りひらたけと【A】を入れ、中火で10分煮る。
  • 3.
  • きゅうりはスライスし、塩をふって軽く水気を絞る。
  • 4.
  • 卵は溶いて、フライパンで薄く焼き、錦糸卵を作る。
  • 5.
  • 洗って乾かした牛乳パックの1辺(縦長)を切り取り、注ぎ口部分をホッチキスで止め、長方形の型を作る。
  • 6.
  • 内側にラップをし、(2)、(3)、(4)の具材をしきつめ、(1)を入れ、切り離した1辺でフタをして、軽く押しながら形を整える。
  • 7.
  • ひっくり返して牛乳パックから取り出す。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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