yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百八十三話 日常に光を探す -【愛知篇】作詞家・作家 山口洋子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百八十三話日常に光を探す

名古屋市に生まれた、有名な作詞家であり、直木賞作家でもある、レジェンドがいます。
山口洋子(やまぐち・ようこ)。
五木ひろしの『よこはま・たそがれ』『夜空』『ふるさと』、彼女が作詞してヒットした曲は、枚挙にいとまがありません。
そのひとつ『千曲川』で、五木ひろしは、1975年、第26回NHK紅白歌合戦の白組のトリに、初めて抜擢されました。
長野県千曲市にある、「山口洋子 千曲川展示館」に行けば、どの仕事も手を抜かなった、彼女の足跡を知ることができます。
作曲家・猪俣公章(いのまた・こうしょう)が作ったメロディを聴き、山口は、大好きな島崎藤村の『千曲川旅情のうた』の一節を思い出しました。
そうして書いた歌詞は、多くのひとの郷愁を誘い、歌碑として、今も千曲川のほとりで言葉のチカラを示しています。
歌碑が万葉公園にできたことで、山口はたびたび近くの上山田温泉を訪れるようになりました。

その縁で山口が亡くなったあと、貴重な遺品の一部を譲り受け、功績をたたえる場所として、展示館ができたのです。
展示館には、自筆原稿や愛用したソファ、数々の著書やレコードジャケットが並べられています。
みどころは、再現された仕事場。
彼女は、寝る間を惜しんで、書いて書いて、書き続けました。
適当にやっていると思われるのが嫌で、作詞も本気。小説も本気。
山口の生涯は、まさに波乱万丈でした。
複雑な家庭環境に生まれ、16歳で高校を中退。
喫茶店の店主を経て、東映ニューフェイスに選ばれ、女優デビュー。
わずか2年ほどでやめてしまい、その後、銀座でクラブのママとして手腕を発揮。
店には、吉行淳之介や柴田錬三郎など、名立たる作家や俳優、歌手が集いました。
30歳を過ぎた頃、友人の歌手に詞を提供したことがきっかけで、作詞家デビュー。
42歳からは、小説を書くようになるのです。
彼女の創作の源は、常に、日々向き合い悪戦苦闘する、日常の中にありました。
何気ない暮らしの中にこそ、人間の真実が隠れている。
それを独自の目線で掘り起こしていった稀代の作家・山口洋子が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

作詞家で直木賞作家の山口洋子は、1937年5月10日、愛知県名古屋市に生まれた。
父は事業家として成功していたが、母は正妻ではなかった。
子どもの頃から、頭がよかった。
勉強もできたし、本をたくさん読む。
複雑な大人の事情に巻き込まれたこともあり、幼くして、ひとの顔色を読むことに長けていた。
頼るべきものは、自分しかないのではないか、そんな漠然とした確信が芽生える。
小学生ながら、近所の子どもに勉強を教え、そのお金で、バレエ教室に通った。
16歳のとき、高校を中退。
その後、競輪好きのオーナーに喫茶店をまかされたことで、競輪に興味を抱く。
競輪の車輪が回る音、最後のジャンの響き、人々の歓声。
はまってしまった。
とことんのめりこみ、名古屋だけではなく、岐阜、大垣、一宮まで足をのばす。
気がつけば借金だらけで、喫茶店は営業できなくなった。
ギャンブルの底なし沼を垣間見て、賭け事はやめた。
のちに酒場を始めるとき、このときの経験が役に立つ。
夜のお店と客は、どこか、ギャンブルの構図に似ていた。
酒場のカウンターは、常にあの世とこの世の境目だった。

五木ひろしの『よこはま・たそがれ』やトワ・エ・モワの『誰もいない海』などの作詞で知られる山口洋子は、かつて東映ニューフェイスで女優デビューを果たした。
同期には、佐久間良子、山城新伍がいた。
わずか2年ほどでやめる。
何かが違った。
自分が自分として生きられる場所を求める。
銀座の高級クラブのママ、という椅子に座った。
毎日が闘いだったが、充実していた。
お店で働くひと、やってくるお客様。
全てのやりとりが、勉強であり、試練だった。
知り合いに頼まれて、歌詞を書く。
評判がよかった。でも、納得しない。
「山口さんは、他の人よりいいものを書いてもらわないと困る。他に仕事をしているから、道楽に見られる」とよく言われた。
それには、歯を食いしばり、ひとの何倍も頑張るしかなかった。
『よこはま・たそがれ』は、体言止めで世界をつくる。
言葉を切り取り、とぎすまし、シーンを描く。
幼い頃から見てきた世界が、役に立つ。
42歳のとき、お店の常連だった芥川賞作家の近藤啓太郎(こんどう・けいたろう)に、「小説を書いてみないか」と勧められる。
書いた。
作詞とは違う世界がそこにあった。
たくさんの言葉で、つむぐ日常。男と女。
必死で書くが、やはり銀座のクラブのママという肩書がついてまわる。
書き始めて、およそ5年後。
1985年『演歌の虫』『老梅』の2作で直木賞受賞。
それでもまだ、本気を示すために闘わねばならなかった。

走り抜けた40代。
そうして迎えた山口洋子の50代は、病との闘いだった。
旅先で倒れ、入院。
高血圧、糖尿、満身創痍だった。
さらに、精神的にもバランスを壊す。
机の前にじっと座りながら、頭の中に火を起こすため、薪をくべ続ける生活。
初めて、健康のありがたみを知る。
もっと書きたい、そのために、もっと生きたい。
生と死の狭間を知って、彼女はあらためて、日常の中に光があることを知った。
山口は、エッセイ『生きていてよかった』に、こんなふうに書いている。

「平凡でつまらないことや、哀しくて辛い日常のなかでごくたまにああ“生きていてよかった”という光が、ほんのちらりと垣間見える。それを命綱に生きてゆけるし、結局その程度が人生と呼ぶもののありようかもしれない」

彼女は、生前、よく言っていたという。
「お葬式のときは、『ラスト・ワルツ』を流してちょうだい」
1976年に解散したザ・バンドの『ラスト・ワルツ』。
山口洋子は、最期まで、人生という舞台で踊り続けた。

【ON AIR LIST】
千曲川 / 五木ひろし
よこはま・たそがれ / 五木ひろし
誰もいない海 / トワ・エ・モワ
ラスト・ワルツ / ザ・バンド

★今回の撮影は、「山口洋子 千曲川展示館」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
開館時間など、詳しくは公式HPにてご確認ください。
山口洋子 千曲川展示館 HP
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの寄せ鍋

今回は、寒い時期におすすめの料理をご紹介します。

霜降りひらたけの寄せ鍋
カロリー
218kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 2パック
  • 白菜
  • 1/8個
  • 水菜
  • 1/3束
  • にんじん
  • 1/3本
  • 長ねぎ
  • 1本
  • 鶏もも肉
  • 1枚
  • 豆腐
  • 2/3丁
  • だし汁
  • 1000ml
  • 【A】酒
  • 大さじ3
  • 【A】しょう油
  • 大さじ3
  • 【A】みりん
  • 大さじ1・1/2
  • 【A】塩
  • 小さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。 鶏肉、豆腐は一口大に切る。
  • 2.
  • 白菜、水菜は4cm幅のざく切りに、長ねぎは斜め切りに、にんじんは型で抜いて5mm幅に切る。
  • 3.
  • 鍋にだし汁、【A】を入れて具材を並べたら火にかけ、具材に火が通るまでフタをして煮る。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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