yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百二十二話 見上げればそこに星はある -【茨城篇】坂本九-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百二十二話見上げればそこに星はある

茨城県笠間市を愛し続けた国民的スターがいました。坂本九。
九ちゃんの愛称で親しまれた唯一無二の天才歌手は、『見上げてごらん夜の星を』『明日があるさ』など、数々のヒット曲を世に送り出しました。
特に『上を向いて歩こう』は、『SUKIYAKI』という英語タイトルで、1963年6月13日、全米チャートで1位を獲得。
その後、3週間首位を守り続けたのです。
海を渡ってもなお、愛され続けた彼の歌声は、独特の歌い方でさらに哀愁と郷愁の一石を、心の湖に投じました。
43歳で亡くなった彼にとって、笠間市は忘れられない思い出の地でした。
結婚式も笠間稲荷神社であげました。
2歳半からのおよそ4年間。母の実家があった笠間に疎開。
その木々に囲まれた赤い屋根の家は、今も笠間市のひとたちが大切に守り続けています。
幼い坂本は、母の膝の上で、夜空を見上げます。
あたりは、真っ暗。
ふと、坂本が言いました。
「かあちゃん、お星さまってきれいだね」
坂本九にとって、星は、母のぬくもりとともに記憶に刻みこまれたのです。
母の言葉は、いつも彼に生きる目標を与え、彼の人生の指針を示してくれました。
坂本は、特に母の最期の言葉を忘れませんでした。
母は言いました。
「いいかい、寂しいときは、自分よりもっと寂しいひとのために働きなさい」
その言葉を胸に、彼はひととのつきあいを見直していきます。
忙しい合間を縫って、福祉にも奔走。
小児麻痺の子どもたちのためにチャリティーショーを企画。
さらに耳の不自由な子どもたちに笑顔を取り戻してほしいと、手話の普及にも努めました。
彼は知ってほしかったのです。
どんなときも、上を見上げさえすれば、そこにちゃんと星が輝いていることを。
昭和の大スター、坂本九が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

坂本九は、1941年12月10日、神奈川県川崎市に生まれた。
この日は、第二次世界大戦のマレー沖海戦が勃発した日でもあった。
戦時下、坂本は、母の実家がある茨城県笠間市に疎開。
自然豊かな山里で、幼少期を過ごす。
この笠間での体験が、後の彼の人生を支え、進むべき星を見せてくれることになる。
疎開先の家の近くに弁財天の祠(ほこら)があった。
そこに、ある家族が棲みついていた。
空襲で住むところを失い、着の身着のままで体を寄せ合う家族。
目が不自由な夫婦と5歳くらいの男の子の3人だった。
近所のひとたちは、彼等に衣服や食事を運んだ。
ある日、坂本たち家族の前を、5歳くらいの男の子が目の不自由な父の手をひいて通り過ぎた。
泥だらけの男の子は、坂本たちに気がつくと、一度恥ずかしそうにうつむいたあとニッコリ笑った。
その笑顔は、見ているこちらを照らすくらい明るかった。
幼い坂本の背後で、母が言った。
「あの子は、えらいね。あの子は…いい子だね」
そのときの母の声を、坂本九は生涯忘れなかった。
何度も何度も思い出した。
その家族はやがてどこかにいなくなってしまったけれど、男の子の笑顔は坂本の心に残った。母の言葉と共に。
「あの子は、えらいね。あの子は…いい子だね」

坂本九の母は、息子が3歳のとき、その特異な体質に気がついた。空腹を訴えた坂本は、突然倒れた。
意識を失っている。
フツウの子どもなら、「お腹がすいたよう~」とごねるのが常だが、坂本は違った。
お腹がすくと、突然倒れてしまう。
母は思った。
「この子は、長く生きられないかもしれない」
戦時中。
食糧がないときも、空腹で泣く兄や姉を待たせ、まず末っ子の坂本に食べさせた。
ひとりで満腹になって寝てしまう弟に、納得できないという兄弟たち。
ちゃぶ台を囲んで、母は話した。
「あのね、この子は長く生きられないかもしれないの。だから、みんなで頑張って守ってあげましょう、うんと可愛がってあげましょう」
すやすや眠る坂本の寝顔を見て、兄弟たちは、うん、とうなずいた。
以来、幼い坂本九は家族の中心になった。
兄たちはときどき、どうしておまえだけが、と思うこともあったが、幼い弟がニッコリ笑う顔を見ると、全て忘れた。
「この笑顔のためだったら、仕方ないや」
坂本九の笑顔には、魔法があった。

坂本九の母は、彼が仕事を休むことを嫌がった。
「おまえを待ってくれているひとがいるかぎり、休むなんて考えちゃいけないよ」
だから、母が肺がんで余命宣告を受け、面会謝絶になったときも、病室には入らず階段の踊り場で毛布をかぶって眠った。
京都市民会館でのリサイタル直前、母の訃報が届く。
「おふくろ、しっかりやるからね」
そう思い、ステージに立つ。
思えば、母に言ってほしかった。
「あの子、えらいね、あの子、いい子だね」
その言葉とともに、必ず、笠間で見た満天の星空を思い出した。
どんなときも、見上げればそこに星はある。
京都でのリサイタル。
『ヨイトマケの唄』は、歌い切った。
でも、『上を向いて歩こう』は、涙をこらえることができなくなった。
この歌がゴールデン・レコード賞を受賞したとき、パーティー会場のいちばん隅で母が泣いていた。
声を殺して、泣いていた。
その背中を思い出した。
涙を流しながら、上を向いた。
上を向いて、歌った。
うまく歌えなくても、会場のお客さんが大きな拍手をくれた。
母の臨終には間に合わなかったけれど、遠く、声が聴こえた。
「いいかい、寂しいときは、自分よりもっと寂しいひとのために働きなさい」

【ON AIR LIST】
見上げてごらん夜の星を / 坂本九
夕焼けの空 / 坂本九
ステキなタイミング / 坂本九
上を向いて歩こう / 坂本九

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとかぼちゃのバター炒め

今回は、茨城県笠間市で多く生産されているという野菜、かぼちゃを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとかぼちゃのバター炒め
カロリー
189kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • かぼちゃ
  • 150g
  • ピーマン
  • 1/2個
  • ベーコン
  • 2枚
  • バター
  • 大さじ1
  • 小さじ1/3
  • 黒こしょう
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。かぼちゃは1cm厚さに切り、ピーマンは輪切りにする。
  • 2.
  • フライパンにバターの半量を熱してかぼちゃを炒め、焼き色がついたら蓋をして2、3分蒸し焼きにする。
  • 3.
  • 火が通れば残りのバターを入れ、ベーコン、霜降りひらたけ、ピーマンの順で炒め、塩、黒こしょうで味を調える。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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