yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百五話 想像力という名の勇気を手放さない -【兵庫篇】小説家 小松左京-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百五話想像力という名の勇気を手放さない

SF界の巨匠、『日本沈没』の作者、小松左京にとって、兵庫県西宮市は生涯の故郷でした。
北に緑豊かな山脈をいだき、南には陽光がキラキラと輝く、おだやかな内海がありました。
春にはレンゲの花が咲きほこり、秋には田んぼの稲穂が黄金色に揺れる、素朴でのどかな風景は、彼の心にしっかりと根付いたのです。
特に、幼い頃住んだ夙川は、たびたび自身の小説で描写するほど懐かしい場所でした。
一歩そこに足を運べば、一気に、幸せだった少年時代に出会える。
そんな場所を持てた幸福を、小松は大切にしました。

小松左京。
その活動は、多岐にわたりました。
本業は、SF作家。星新一、筒井康隆と並ぶ、SF御三家のひとりです。
17歳で漫画家としてデビュー。
学生時代も、京大生の漫画家として新聞に紹介されました。
ラジオ番組の構成作家として、夢路いとし・喜味こいしの漫才台本を書いたり、大阪万博の成功の一翼を担うブレーンとして貢献したり、ルポライターとしてイースター島や黄河を旅したり、その活躍はまさに八面六臂(はちめんろっぴ)。
しかも彼の真骨頂は、全て自分で調べ、自分の目で見て確かめるバイタリティーでした。
そんな中、最も大切にしたのが、想像力でした。
「我々は、技術革新、機械文明について、イマジネーションが足りなさ過ぎたのかもしれないねえ。小説っていうのは、ある種のシミュレーションなんです。頭の中のシミュレーション。真のイマジネーションだけが、真のシミュレーションになるんです。これはねえ、勇気がいることです。怖いからねえ、想像するってことは。でも、私は思いますよ。人間が想像力を失ったら、もう終わりだって」
人類の未来を常に見つめたSF界のレジェンド、小松左京が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

『日本沈没』で一世を風靡した小説家、小松左京は、1931年1月28日、大阪に生まれた。
五男一女の次男。
父は、もともと千葉県館山市の網元の出身だったが、薬剤師を輩出する薬学専門学校に入学。
そこで、人形町の薬局の娘に恋をする。
二人は、めでたく婚約。
父は、大阪で金属加工の仕事を見つけ、ひとり東京を離れた。
その直後、1923年9月1日。関東大震災が起きる。
母は、被災。なんとか生き延びた。
小松は幼くして、母から、この震災での体験を繰り返し聞くことになる。
一面の焼野原。ひとびとは、食べ物を求めてさまよう。
子ども心に想像する。
それは、どれほど恐ろしくも壮絶な世界だろう…。
今日ある日常が、明日保証されることはない。
そんな感覚が、小松に植え付けられた。
他の兄弟たちは、母がする震災の話を怖がり、嫌がったが、小松だけは違った。
「お母さん、もっと聞かせて。そのときのこと、聞かせて」
そこに、小松左京が『日本沈没』を書く原点があった。
ねだる我が子に、涙ながらに語る母。
小松の目からも、なぜか涙がこぼれる。
想像力の羽は、早くも羽ばたこうとしていた。

SF界の巨匠、小松左京は、子どもの頃、病弱だった。
野山を駆け回り、ボール遊びをする同級生に混じることはできない。
家でひとり、本を読んだ。漫画や映画にも夢中になった。
狭い部屋が、雄大な砂漠になったり、火星になったり、海の底に変わったりする。
「そうか、頭の中だけは自由なんだ。何を考えてもいい、何を想像してもいいんだ」
その発見は、驚きだった。
自分は、どこにだって行ける、何にだってなれる。
本が好きな小松に、兄は科学を教えた。
「いいか、この世には、知らなくちゃいけないことがあるんだ。それはな、科学だ。今に、日本に技術の時代が来る。おまえも、文学ばかり読んでないで、科学の本を読め。いいな」

体が少し丈夫になると、小松は快活な性格になった。
小学5年生のときには、子ども向けニュース番組のキャスターになった。
ラジオドラマにも出演。当時の文化を享受した。
いわゆる「お調子者」。
中学に入ると、「うかれ」というあだ名がついた。
それはどこか、自身の根暗を隠す、隠れ蓑だったのかもしれない。
ときは、軍国主義一色。
神戸第一中学に入ってからは、空襲と軍事教練に明け暮れた。
先輩や上官に、理不尽に叩かれる。
「たるんでいるから、眠いんだ! 気合が入っていないから、お腹がすくんだ!」
意味がわからなかった。
眠いものは眠いし、お腹がすけば集中力は切れてしまう。
小松の想像力は、彼にこう告げた。
「どうせ、戦争が続いて、みんな死んでしまうよ」

小松左京は、戦争時代を生き延びた。
同い年のたくさんの少年たちが、戦地で散った。
特に、沖縄で命を落とした仲間を思うと、ひどく心が痛んだ。
「もしかしたら、彼等は自分だったかもしれない…」
生き残ってしまったものの、責任がのしかかる。
兄は、小松に言った。
「広島に落ちたのは、あれは、原子爆弾という恐ろしい爆弾なんだ」
そのときの兄の目は、怖かった。
あとにも先にも、優しい兄があんな目をすることはなかった。
「戦争は、ダメだ。戦争をしたら、人類はほんとうに滅びる」
兄は吐き捨てるように言った。

中学2年生のときに、学校の図書委員だった。
そのとき、『世界文学全集』を片っ端から読んだ。
いちばん最初にあったのが、ダンテの『神曲』。
地獄が出てきた。煉獄が出てきた。
あらゆる空間、時空を超える物語。
それこそが小説であり、SFだった。

小松左京は、思い出す。
終戦直後、友達とかくれんぼをしたとき、草むらでふと、少女がつぶやいたひとこと。
「ねえ、空襲がないのっていいわね」
作家、小松左京は、自分のありったけの想像力を駆使して、勇気をもって小説を紡いだ。
その先に彼が描いたのは、平和だった。
子どもたちが幸せに笑うことができる、未来だった。

【ON AIR LIST】
WEIRD SCIENCE / OINGO BOINGO
FEEL IT / BLACK EYED PEAS
EL COMUNICADO(声明文) / LA CHAMBA
IMAGINE / HANK CRAWFORD

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと筍、小松菜の煮びたし

今回は、西宮で盛んに栽培されている野菜、小松菜を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと筍、小松菜の煮びたし
カロリー
151kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 小松菜
  • 1束
  • 筍(水煮)
  • 1/2
  • 油揚げ
  • 1枚
  • 鶏もも肉
  • 1/2枚
  • 【合わせ出汁】
  • 出汁
  • 400cc
  • みりん
  • 大さじ2
  • しょう油
  • 大さじ2
  • 大さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、小松菜は3〜4cmに切り、鶏肉は一口大に切る。
  • 2.
  • 油揚げは油抜きをして1cm幅に切り、筍は薄切りにする。
  • 3.
  • 鍋に【合わせ出汁】と筍、油揚げ、鶏肉を入れ、中火にかけて5〜10分煮る。
  • 4.
  • 最後に霜降りひらたけ、小松菜を入れ、さっと煮る。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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