yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百八十四話 運は気持ちで直せ! -【埼玉篇】林学博士 本多静六-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百八十四話運は気持ちで直せ!

本多静六というひとをご存知ですか?
日本で最初の洋風庭園、日比谷公園や明治神宮の森をつくった、林学博士。
ついた異名が「日本の公園の父」。
さらに、東大教授にして大富豪。
多くの著作を残した哲学者としても知られています。
彼は、武蔵国埼玉郡河原井町、現在の埼玉県久喜市菖蒲町に生まれました。
菖蒲町にある記念館には、彼の残した言葉が記されています。
本多は、「努力」という言葉が好きでした。
家は貧しく、苦学生。
努力に努力を重ね、ドイツへの留学を果たし、指導教授の教えを受け、彼は悟ります。
「経済的な自立なくして、精神の自立はありえない」
彼は貯蓄と投資を繰り返し、やがて巨万の富を手に入れます。
そして、定年を迎えると、そのほとんどのお金を教育団体や公益事業に寄付したのです。
「家庭が円満であること、職業を道楽に変えること、この二つが人生最大の幸福だ」と豪語してはばからなかった男。

彼は、若いひとによくこう言っていたそうです。
「運は気持ちで直せ!」
本多いわく、不運は誰にでも起こりうる。
そんなとき、気持ちをどう立て直せるかが、のちの人生を決める。
もちろん、簡単に立て直せない思いもあるだろう…
でも、それでも、自分の気持ちで立て直すしかない。
彼は、常に若者を鼓舞し、励まし続けました。
ひとはいかに生き、いかに死ぬべきかを、己の人生で説いてみせた風雲児、本多静六が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

日比谷公園や明治神宮の森をつくった林学博士・本多静六は、1866年8月11日、現在の埼玉県久喜市に生まれた。
家は代々、村の名士。
深い森に囲まれた田畑で、米や麦をつくる農家の頭だった。

祖父や父の威光を背に、本多は、幼い頃からガキ大将。
6歳にして子分を引き連れ、野山を駆け回った。
もともと武士の流れをくんでいたこともあり、剣術も叩きこまれていた。
学校では読み書きを放り出し、遊んでばかりいた。
いたずらや喧嘩をして、いつもこっぴどく怒られる。
それでも、暴れずにはいられなかった。
家族で呆れられても、兄だけはかばってくれた。
ただその兄も、たった一度だけ本多を叱ったことがあった。
「静六、学問をおろそかにしちゃいけないよ。学ぶということは、自分を高めるということなんだ。精進しない人間は、永遠に今の場所から逃れることができないんだよ」
本多の人生の転機は、9歳の春にやってきた。
ある夜。
父はいつものように一杯飲むと「どうも、肩がはってかなわないなあ、寝るとするか」と床に入った。
翌朝、父は冷たくなっていた。
脳溢血だった。
享年、42歳。
亡くなって初めて、父が多額の借金をしていたことが発覚。
一家は、一気にどん底に落ちてしまった。

東大教授にして巨万の富を築いた投資家、本多静六は、9歳にして貧困に陥った。
裕福であったがゆえの辛さがあるかと思いきや、本多はたくましかった。
塩と飯だけの毎日。
農家の手伝いもすることになった。
でも不思議なことに、あれほど興味のなかった学問に関心が向いた。
本を読み、先生の言うことをきくようになった。
遊び呆けていた時間は、麦踏みと読書に費やした。
朝早く起きて、草刈りをした。
ある日、うまく草を刈れなくて途方にくれていると、祖父は本多に言った。
「草刈の秘伝なんてもんは、簡単だ。鎌を研いでおくこと。濡れ紙の切れるほどに、剃刀のように研いでおくこと。それだけじゃよ」
それから本多は、毎晩鎌を研いだ。
もうこれ以上研げないと思うまで、研いだ。
そうしているうちに、気がついた。
人間だって一緒じゃないか。
いきなり何かを成し遂げようったって、そんなのは虫が良すぎる。
毎日毎日コツコツと、自分という鎌を研いでおかないと、いざというとき役に立たない。
以来、彼は、毎日少しずつでも努力することを己に課した。
一日1ページ、文章を書く。
一日ひとつ、新しい言葉を覚える。
鎌を研いでおくと、草刈という仕事は道楽になった。

本多静六は幼くして、努力で運を引き寄せる術を学んだ。
田畑の肥料になる馬糞拾いは、ことさら苦行だった。
早く拾わないと他のひとにとられる。
しかも、籠はすぐに重くなり、満足に歩けなくなる。
あるとき、本多は思いついた。
近い場所から拾おうとするから、大変なんだ。
まず、早朝、夜が明けぬうちに、村のはずれまで行く。
そこから馬糞を拾い始めれば、誰にも邪魔されない。
しかも、家に近づくほど籠が重くなるので、効率的だった。
こうして、大嫌いだった馬糞拾いも、誰よりも集められるようになり、道楽になった。
貧乏が彼に頭を使うこと、体を使って稼ぐことを教えた。
そして、お金を蓄えることの大切さも教えた。
学問をしたいと思っても、お金がなければ、選択の幅が狭まってしまう。
お金のために生きる人生はつまらないが、お金のせいで夢を諦める人生もやるせない。
本多は、不運を乗りこえるための努力を、何より尊いと感じた。
米をつきながら、漢文を暗記する。
眠い、つらい、厳しい。
それでも、勉強時間を捻出するには、その方法しかなかった。
官立の山林学校に入学できたとき、まわりは奇跡だと言った。
でも、本多静六は思っていた。
「この世に奇跡なんてあるもんか。あるのは、努力したかどうか、それだけだ。運は、気持ちで直すしかないんだ」

【ON AIR LIST】
黄金の緑 / UA
IF YOU DON'T WANT MY LOVE / Bobby Womack
WORK SONG / Ray Barretto & New World Spirit
ADVICE FOR THE YOUNG AT HEART / Tears For Fears

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとトマトの贅沢スープ

今回は、久喜市菖蒲地区で盛んに栽培されている野菜、トマトを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとトマトの贅沢スープ
カロリー
33kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • トマト
  • 1個
  • 玉ねぎ
  • 1/4個
  • 300cc
  • 小さじ2/3強
  • こしょう
  • 適宜
  • パセリ
  • 適宜
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。トマトは縦半分に切りへたをとる。玉ねぎはみじん切りにする。
  • 2.
  • 鍋にほぐした霜降りひらたけ、トマト、玉ねぎを入れ、塩、水を加えフタをし中火にかけ、沸騰後少し火を弱め5分位蒸し煮にする。
  • 3.
  • 器に盛り、こしょう、みじん切りにしたパセリをふる。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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