yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百十三話 優しさを育む -【北海道篇】漫画家 モンキー・パンチ-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百十三話優しさを育む

北海道の東、釧路と根室の中間に位置する、霧多布湿原。
この日本で五番目に大きな湿原を擁する浜中町は、ある有名な漫画の聖地として知られています。
その漫画とは、『ルパン三世』。
画いたのは、稀代の漫画家、モンキー・パンチ。
本名は、加藤一彦(かとう・かずひこ)。
ペンネームのとおり、日本人離れした絵のタッチや斬新なキャラクター設定で瞬く間に人気を博し、今もなお、多くのファンを魅了し続けています。
彼をデビューから見守った双葉社が出版した、『追悼、モンキー・パンチ。ある漫画家の、60年間の軌跡』では、多くの漫画家が、唯一無二の偉大な先達に惜しみない賛辞を寄せています。
モンキー・パンチは、生まれ故郷の浜中町を生涯、愛し続けました。
町おこしのポスターに、二つ返事で絵を提供。
忙しいさなかにも、足しげく、ふるさとに通い、トークショーや子どもたちの漫画教室など、地域復興のために尽力したのです。

ある日、地域復興プロジェクトの会長がモンキー・パンチに尋ねました。
「昔の霧多布は、砂ぼこりが舞い、家はほとんど木造で、絵に画くと、色は、黒や茶色ばかりになる。なのに先生は、どうして色鮮やかな漫画を画くことができたんですか?」
モンキー・パンチはこう、答えました。
「初めて上京して、上野駅に降り立ったときにね、さまざまな色が一気に目に飛び込んできたんですよ。あふれるくらいに。それはね、もうすごかった。もしボクが都会に生まれていたら、気づかなかっただろうなあ」
大人気作家になっても、モンキー・パンチはいつも謙虚。
腰が低く、誰にでも公平に接する姿勢が人々の記憶に残っています。
幼い頃、北の大地で育まれた優しさは、描くキャラクターたちに投影され、世界中のひとたちに愛される所以になっているのです。
北海道が生んだ、レジェンド。
漫画家、モンキー・パンチが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

『ルパン三世』を世に送り出した漫画家、モンキー・パンチは、1937年5月26日、北海道厚岸郡浜中村、現在の浜中町霧多布に生まれた。
鉱山に勤めていた父の仕事の関係で、一時、愛媛県新居浜に暮らすが、ほどなく霧多布に戻る。
時代は戦争に向かってひたすら突き進んでいた。
そんな中、少年時代のモンキー・パンチが毎日のように通った場所があった。
家から歩いて15分ほどのところにあった、町の映画館。
冬はとにかく寒かった。
吹雪の中、風に吹き飛ばされそうになりながら、映画館に行く。
映画館の中にも隙間風が吹き抜け、中央に置いてあるストーブもあまり役には立たない。
寒さで歯がカチカチ鳴った。
家から持参した座布団を敷き、オーバーの襟を立て、スクリーンに見入る。
映画が始まれば、寒さを忘れた。
戦争映画が多かったが、片岡千恵蔵(かたおか・ちえぞう)が演じる宮本武蔵に夢中になる。
東映アクション時代劇映画。
痛快で、華麗な立ち回り。
無声映画には弁士も来て、場内が熱気に包まれた。
楽しかった。ワクワクした。
アクションシーンが終わると、白い息がもれた。
さらに映画熱を高めたのは、洋画体験。
西部劇には、椅子からひっくり返るほど衝撃を受けた。
銃を撃つシーンのリアリティに、体が震える。
「すごい…アメリカって国は、すごい…」
こうして、北国の少年の心に、少しずつ物語づくりの種が植えられていった。

モンキー・パンチが子どもの頃見ていた映画に、「母もの」というジャンルがあった。
子を思う母親の深い愛情に、映画館に来ている誰もが涙する。
幼いモンキー・パンチも泣いた。
特に三益愛子(みます・あいこ)の「母もの」が好きだった。
客席を見渡すと大人たちもハンカチで目をおおっている。
不思議な光景。
冷たい隙間風が吹く映画館で、全てのひとが同じものを見て泣いている。
優しいシーンでは、みな優しい顔になることを知った。
その他にも、伴淳三郎のコメディもの、美空ひばりの映画にも夢中になったが、ついに運命的な作品に出会った。
東映の『多羅尾伴内』シリーズ。
片岡千恵蔵 扮する探偵・藤村大造は、7つの顔を持つ男。
変装を駆使して、悪に挑む。
北海道の東、霧多布の映画館。
アクション、ピストル、チャンバラ、コメディに、人情。
そして、変装。
『ルパン三世』の種が、少年の心に芽吹いた。

地元の霧多布高校に進学したモンキー・パンチに、ある転機が訪れる。
普通科に入学したにも関わらず、彼の学年だけが定時制に変わってしまう。
人数が減ってしまった夜間クラスの廃校を防ぐためだった。
おかげで、昼間の時間が空く。
モンキー・パンチは、霧多布の診療所でアルバイトすることに決めた。
診療所ではレントゲンの助手などを務めた。
少年時代は、霧多布の映画館の中、仮想現実で遊んだが、診療所の業務で出張することのあった釧路では、霧多布では見ることができないアメリカ映画も、数多く上映されていた。
一日に映画館を3軒はしごして、さまざまな映画を観て回る。
ディズニー映画に初めて触れたのもこの頃だった。
アメリカ文化に傾倒し、ついにはアメリカの雑誌『MAD』に出会い、『ルパン三世』のアイデアが形作られていく。
『ルパン三世』の5人の登場人物、ルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部。
この配置は、画期的であり、理想的であり、その後の漫画に多大な影響を与えたとされている。
追うもの、追われるものという単純な図式に、追われるものの葛藤や友情が描かれる。
そして、底辺にある優しさ。
そこに、モンキー・パンチがかつて観た映画たちが重なる。
活劇に笑い、母ものに泣いた、自分。
映画館で明日の活力を得ていた町の大人たちの表情。
フィクションのチカラを感じていたからこそ、モンキー・パンチは、地道に、粘り強く、己が信じる漫画を画き続けた。

【ON AIR LIST】
ルパン三世のテーマ '78 / ユー&エクスプロージョン・バンド
ジョニー・ギター / ペギー・リー
交響詩「はげ山の一夜」 / ムソルグスキー(作曲)、ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団、アンドレ・プレヴィン(指揮)
ルパン三世 愛のテーマ / ユー&エクスプロージョン・バンド

★今回は、双葉社から出版されている、『追悼、モンキー・パンチ。ある漫画家の、60年間の軌跡』を参考にお送りしました。
(株)エム・ピー・ワークス様、(株)双葉社様、浜中町 モンキー・パンチ&ルパン三世de地域活性化プロジェクト様のご協力に感謝いたします。

北海道浜中町・ルパン三世-宝島プラン-
https://www.hamanaka-lupin.com

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと鮭のかぶら蒸し

今回は、浜中町の特産でもある、鮭を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと鮭のかぶら蒸し
カロリー
150kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • かぶ
  • 2個
  • 生鮭
  • 1切
  • 卵白
  • 1個分
  • 【A】片栗粉
  • 大さじ1
  • 【A】水
  • 大さじ2
  • ひとつまみ
  • 【B】だし汁
  • 200ml
  • 【B】みりん
  • 大さじ1・2/3
  • 【B】薄口しょうゆ
  • 大さじ1・1/2
作り方
  • 1.
  • かぶはすりおろし、水気を軽く切る。鮭は一口大に切る。
  • 2.
  • (1)のかぶと白く泡立てた卵白を混ぜ、軽く塩をする。
  • 3.
  • 器に鮭の切り身、(2)、ほぐした霜降りひらたけを入れ、ラップをする。お湯を張ったフライパンに器を入れ、蓋をして中火で10分ほど蒸す。
  • 4.
  • 小鍋に【B】を入れ強火にかけ、【A】を加えとろみをつけ、蒸しあがった(3)にかける。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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