yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百五十一話 聞くチカラを取り戻す -【山口篇】民俗学者 宮本常一-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百五十一話聞くチカラを取り戻す

40年に渡って日本全国をくまなく歩き、民間の伝承を「生活」という観点から後世に伝えようとした、民俗学者がいます。
宮本常一(みやもと・つねいち)。
宮本は「暮らしの中の工夫こそが文化」と考え、農村漁村を訪ね、失われていく民具や、生活の中に残る言い伝えを、丁寧に掘り起こしていったのです。
彼のアプローチは至ってシンプル。
とにかく聞くこと。
地域の老人、先人の話に、ひたすら耳を傾けました。
そのフィールドワークを書き記したエッセイは、現在の旅の形、観光業にも影響を与え続け、多くのファンの支持を集めています。
明治29年6月15日、三陸地方を襲った大きな津波。
宮本は、ある村のひとたちは、みな高台に逃げ、全員助かったと、老人に聞きました。
なぜ、逃げたか。
それは、沖の方で、ノーンノーンという音がしたから。
昔から、その音がしたら危ない、という伝承があったのです。
静けさの中では、自然の音を聴くことができる。
さらに人間同志の心も、読み取ることができる。
宮本は思いました。
人間は、生活とともにあった自然界の音を、そして、人間同志の何気ない言葉の響きを、聞き分けるチカラを失ってしまったのではないか…。
彼は、全国を歩きながら、生活に根差したたくさんの物語、言い伝えを聞くことで、自らの、そして現代に生きる我々が早々に捨て去ったものを、取り戻そうとしたのです。
瀬戸内海に浮かぶ、屋代島で生まれた宮本は、農家、郵便局員、学校の教師など、職を転々としますが、ひとつだけ、心に決めていたことがありました。
それは、「誰かに必要とされる人間になること」。
おまえは、邪魔だと言われないように、存在理由を意識する。
貧困や病気と闘いながら、自分なりに生涯をかける仕事に出会えたのは、32歳のときでした。
聞くチカラで、日本人の生活誌をまとめあげた賢人・宮本常一が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

民俗学者・宮本常一は、1907年8月1日、山口県大島郡、現在の屋代島、周防大島町で生まれた。
瀬戸内海で、淡路島、小豆島に次ぐ、三番目に大きな島、屋代島。
金魚のような形をしているところから、金魚島とも呼ばれる。
『古事記』にも記され、『万葉集』にも詠われた、由緒ある島だったが、住民の生活は厳しかった。
明治17年にはハワイ政府から移民の募集があり、新天地を求めて4000人あまりの島民が海を渡った。
常一の家も、貧しかった。
母は、常一を産む寸前まで畑で働き、父は、蚕の生産でなんとか生計を立てようとしていたが、なかなかうまくはいかない。
常一も、幼い頃から父や母の仕事を手伝った。
父がたったひとつ、やかましく注意したのは、所作。
姿勢、態度、動作の美しさを注意される。
鍬(くわ)を振り下ろすとき、腰を曲げすぎると、怒られた。
鍬についた泥を手でとると、叱られた。
「所作が全てだ。所作は、安全、効率、から生まれた。そして何より、見ていて美しいということが大事なんだ」
夏の土用草を刈るとき、よく手を切ったが、それも「へっぴり腰で、恐る恐るつかむから、手を切るんだ。しっかりと固く握れば、ほら、手は切れない」と手取り足取り、教えてくれた。
こうして常一は、父から古くから伝わる工法や工具の使い方を学んだ。

民俗学者・宮本常一は、幼い頃、母と一緒に桑の葉を摘みにいくのが好きだった。
家では、蚕がお腹をすかせて待っている。
母は大きな籠を背負い、常一を連れて、山の奥に分け入った。
ある夕暮れ時、激しい雨になった。
大きな樹の根元は、雷が危ない。
母は、背負っていた空っぽの籠の中に入るように言う。
二人で籠の中。上には、むしろをかけた。
母に抱かれて、雨の音を聴いていた。
ポツポツと雨がうちつける。
母は、唱歌を口ずさむ。美しく、幸福な時間。
やがて、雨は勢いを無くし、むしろをはがすと、黒い雲は去って、青空が見えていた。
常一は、後年、つらいことがあると、そんな母との時間を思い出した。
どんなに激しい雨も、やがてやみ、青空が待っている。
雨の音と、母の歌声。
常一は、大自然の中で、さまざまな音を聴き、そこに意味があることを学んでいった。

民俗学者・宮本常一のことを、彼の恩人でもある、渋沢栄一の孫・渋沢敬三(しぶさわ・けいぞう)は、こう評した。
「日本の白地図の上に、宮本くんの足跡を赤インクで印していったら、日本列島は真っ赤になる」。
宮本を敬愛していた作家の司馬遼太郎は、彼の死に際し、こう述べた。
「宮本さんは、地面を空気のように動きながら、歩いて、歩き去りました。日本の人と山河を、この人ほどたしかな目で見た人は、少ないと思います」。
宮本は、幼い頃から、たとえばカラスの鳴き方ひとつで、さまざまな情報を得られることを知った。
どこかの家で、不幸があったときの鳴き声。
イワシがたくさん獲れるときの鳴き声。
明日の天気も、風の音、木々のざわめき、雲の流れで判断した。
静かに耳をすませ、世界にあふれる音を聴く。
その所作は、フィールドワークで出会う老人たちへのインタビューにも生かされた。
宮本が汚れたリュックサックを背負い、ズック靴で現れ、満面の笑みで「やあ、こんにちは」と挨拶すると、たいていの人は心を開き、彼に自らの歴史を語り始める。
彼はエッセイにこう記した。
「私の一生は 伝書鳩のようなものであったのかもわかりません」。

【ON AIR LIST】
OVER THE RAINBOW / IZ
心の耳で聞いてごらんI(『ポカホンタス』より) / 京田尚子、勝山紀子
RHYTHM OF THE RAIN / THE CASCADES
なつかしゃ / 中孝介

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけのガーリックソテー

今回は、今が旬の食材、アスパラガスを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけのガーリックソテー
カロリー
258kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • じゃがいも
  • 2個
  • アスパラガス
  • 3本
  • オリーブオイル
  • 大さじ1
  • にんにく
  • 2片
  • 塩・こしょう
  • 少々
  • しょう油
  • 大さじ1
  • 赤唐辛子
  • 少々
  • ベーコン
  • 2枚
  • バター
  • 大さじ1
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、じゃがいもは皮をむいて一口大に切る。じゃがいもは耐熱容器に入れ、電子レンジ(600W)で5分ほど加熱する。アスパラガスは固い部分の皮をむき4等分にする。にんにくは薄切りにする。
  • 2.
  • フライパンにオリーブオイルと(1)のにんにく、赤唐辛子を入れ弱火にかけ、香りが立ったら赤唐辛子は取り出す。
  • 3.
  • (2)にすべての食材を入れて炒め、塩・こしょうをし、仕上げにしょう油とバターを加えて、味を調える。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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