yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百二十七話 最後までやりぬく -【和歌山篇】水泳選手 前畑秀子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百二十七話最後までやりぬく

2020年、オリンピックイヤーの幕あけです。
7月の開催を前に、東京の街はさらに加速して変貌を遂げています。
56年ぶりの東京でのオリンピック。
どんなドラマが起こるのか、今から期待が膨らみます。

日本初の女性の金メダリスト、前畑秀子(まえはた・ひでこ)は、和歌山県に生まれました。
1936年8月11日、ナチス政権下で開催されたベルリンオリンピックの平泳ぎ200メートルで、ドイツ代表のゲネンゲルを僅差で破り、見事金メダル。
ラジオの生中継に日本中が熱狂しました。
「前畑、がんばれ!」「前畑、がんばれ!」。
アナウンサーは20回以上繰り返し、伝説の放送として今も語り継がれています。
前回大会のロサンゼルスオリンピックで銀メダルだった前畑は、この大会でどうしても金メダルを獲らなくてはなりませんでした。
「もし金メダルを獲れなかったら、私は帰りの船で海に飛び込み、日本には帰らない、帰れない」
そう、周囲のひとに話していたといいます。
なぜ、そこまでして金メダルにこだわったのか。
そこには、彼女の悔しさがありました。
そこには、母の教えがありました。
平泳ぎで200メートルを泳いでいる間、彼女はいっさいまわりが見えなかったと言います。
今、自分が何位で、ライバルはどのあたりにいるのか、全てが消え、ただひたすら前へ前へと泳いだのです。
16歳のとき、相次いで両親を脳溢血で亡くし、自らも後年、脳溢血で倒れましたが、リハビリを重ね、指導者としてプールに戻ってきました。
逆境に負けない不屈の精神は、最期まで彼女を支えたのです。
戦禍の中、失意を抱えていた日本人に勇気を与えた金メダリスト、前畑秀子が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

日本人女性として初めての金メダルを獲得した前畑秀子は、1914年、和歌山県に生まれた。
家は、豆腐店。
決して裕福とは言えなかったが、両親、兄弟に大切にされた。
前畑は幼い頃から体が弱く、医者に「5歳まで生きられたらいいんだが」と言われた。
我が子を死なせてなるものかと、母は高野山に何度もお参りし、「どうか、お助け下さい」と懇願した。
さらに目の前を流れる紀ノ川に連れていき、泳ぎを教えた。
泳ぐことがいちばん体を元気にすると信じていたからだ。
兄弟たちも一緒に川で遊ぶ。
最初は母の背中で水に泣いていた前畑も、徐々に水になれ、やがてひとりで泳げるようになった。
初めて母の背を離れたときのことを、前畑が覚えている。
ふわっと体が浮く。
怖さの次に、ワクワクするような解放感がやってきた。
泳げば泳ぐほど楽しくなる。
気がつけば、毎日ひとりで川に出かけるくらい好きになっていた。
どんどんたくましくなっていく我が子に、川岸で見守る母は目を細めた。
小学4年生のとき、学校に水泳部ができた。
プールはない。川に板を置きスタート台をつくる。
25メートル先に杭を打ち、ターニング台も設置。
天然の25メートルプールが完成した。
水泳部に入った前畑は、上級生よりも速く泳ぐことができた。
彼女の泳ぎには、母の愛が寄り添っていた。

「前畑、がんばれ!」で知られる水泳界のレジェンド、前畑秀子は、小学5年生のとき、女子50メートル平泳ぎで学童新記録を出す。その後も尋常高等小学校高等科に進んでも、日本新記録を樹立。
高等科3年のときには、ハワイで行われた、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの選手が参加する「汎太平洋女子オリンピック大会」に出場。
100メートル平泳ぎで、見事優勝した。
外国の選手と対等に戦えるという自信がつく。
彼女の心に「オリンピックに出られるかもしれない…」という思いが初めてふくらんだ。
でも、家は貧しく、高等科を卒業したら、家業の豆腐店を手伝わなくてはならない。
進学して水泳を続ける道は諦めようとしたそのとき、自宅にひとりの男性がやってきた。
彼は名古屋にある椙山高等女学校の教師。
前畑の両親にこう言った。
「お嬢さんは我が校のプールで模範水泳を見せてくれたんですが、その泳ぎに校長が感動しまして、よければ、寮での生活費、学費はいっさいこちらで負担しますので、我が校に来てください!」
いちばん迷ったのは、前畑本人だった。
家を守る、両親を助けるのがイチバンだと考えた。
でも、母は言った。
「名古屋に行きなさい。でもね、やりかけたことは最後までやりなさい。どんなに苦しくても、水の中なら何百回泣いてもいい。水に汗が流れ落ちるくらい練習しなさい。いいね、秀子」
前畑は、涙を流して深く頷いた。

前畑秀子は、頑張った。
椙山高等女学校でも頭角を現し、新記録を更新。
校長もオリンピック出場を想定して練習メニューを組むようにコーチに指示した。
そんな冬のある日。
突然の訃報だった。
母が脳溢血で亡くなる。
数か月後、今度は父も脳溢血で亡くなった。
悲嘆にくれる。
水泳などやる気にはなれない。
学校を辞めて実家に帰ると校長に告げた。
ふるさとに戻った前畑は、母の愛をあらためて知ることになる。
兄から聞く、母の思い。
「お母さんはね、おまえの活躍を心から祈っていたんだよ。いつだって、秀子はがんばってるかな、秀子は泣いてないかなって心配してたんだ。あの子はいつかオリンピックに出て金メダルを獲るかもしれないって、近所のひとに自慢してたんだよ。秀子、学校に戻るんだ。こっちは大丈夫だから」
泣いた。
泣きながら、思った。
絶対に、金メダルを獲る。
そう誓った。
名古屋に戻った前畑は、もう迷わなかった。
練習に励む。
辛いときも悔しいときも、いつも母の言葉を思い出してプールの中で泣いた。
「やりかけたことは最後までやりなさい。どんなに苦しくても、水の中なら何百回泣いてもいい。水に汗が流れ落ちるくらい練習しなさい。いいね、秀子」
前畑は、手を抜かない。
前畑は、がんばれと応援される前に、十分頑張っていた。
だから、金メダルが取れた。
いちばん高い表彰台に立つと、そこに母がいるような気がした。

【ON AIR LIST】
SWIM / Jack's Mannequin
THIS IS TO MOTHER YOU / Linda Ronstadt & Emmylou Harris
NIGHTSWIMMING / R.E.M.
LIFE ~ステイ・ゴールド / Stevie Wonder

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとオクラの滑らか白和え

今回は、豆腐を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとオクラの滑らか白和え
カロリー
130kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • オクラ
  • 5本
  • 絹ごし豆腐
  • 1丁(300g)
  • しょうが
  • 1片
  • 小さじ2/3
  • サラダ油
  • 大さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、フライパンを熱しサラダ油を入れこんがり焼き、冷ます。
  • 2.
  • オクラはがくを取り、薄切りにする。しょうがはみじん切りにする。
  • 3.
  • 豆腐をきれいに洗いボウルに入れる。
  • 4.
  • (3)に(2)のオクラ、しょうが、塩を入れ豆腐が滑らかになるまでしっかり混ぜる。
  • 5.
  • 霜降りひらたけを入れざっくり混ぜ、器に盛る。
  • recipe LIST

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ARCHIVE

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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