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「あーら、また眠くなってきましたなあ…」
『望星丸の決闘』から、およそ20分後。途中で見つけたナゾのレストラン (学食) で腹ごしらえを済ませ、キモチのいい満腹感に満たされた林さんは、目をこすりながら、建物内の廊下をフラフラと歩いていた。
と、どこからか、男たちの低い声が聞こえてくる。
「博士、では次に、魚と化粧品のことなんですが…」
声の聞こえる方にすり足で駆け寄る林さん。すると、半開きになっているドアを発見。中を見ると、いかにも偉そうな男三人が、何やら話をしている。よく見ると、この部屋には『総長室/学長室』との文字が。
はっはーん… 詳しい事情はよくわかりませんが、何やら、悪いことでも企んでいるのでしょう。いっちょここで、盗み聞きでもしてみますか…!!!
林さんは、気を完全に消した時のミスターポポ (cf ドラゴンボール) のように、一旦自分の存在を無にし、部屋から聞こえてくる音に神経を研ぎ澄ませた…
「…そう、だから、魚と化粧品は、非常に密接な関係があるんじゃ。例えば、コラーゲン。よく聞く名前じゃろ? 最近は、『肌にいい』ということで、コラーゲンを配合した化粧品まで出てきておるな。さらに、食べても「肌にいい」と売られているそのコラーゲンという成分は、実は魚からも取れるんじゃ。実際、ワシの研究室で、若い研究者の卵たちが、日夜、コラーゲンと格闘しておる」
「『コラー…ゴン』…??? 聞いたことありませんな…」
男たちの怪しい密談の内容はところどころしか聞こえなかったが、林さんは、以下のことだけは確信して理解することができた。
『コラーゴン』ーそれは、魚から抽出できる『何か』である。そしてそれはおそらく、ヤツらが研究している、悪の細菌兵器の名前である。と。
「博士、もし差し支えなければ、研究室に、一度お邪魔させていただけませんか?」
「お安い御用じゃ、ついてくるがよい…」
マズイ! こっちにくる!
林さんは一旦、横の部屋に隠れ、男たちが出てくるのをやり過ごし、それから尾行を開始した。
どうやら、研究室の前に着いたようだ。
「…ここですじゃ。」
「ほう… 博士、これは?」
「これは、研究材料の様々なものを貯蔵するための大冷蔵庫。−60度まで下がりますぞ」
そこまで言うと、男たちは部屋に入り、鍵を閉めてしまった。
万事休す… いや。
林さんはニヤリと不敵な笑いを浮かべ、ポケットから小さな虫のようなものを出し、空に放り投げた。
見かけは小さな蚊。しかしその実は、高精度な盗聴&盗撮を可能にする、最小にして最強のスパイマシンなのである。ちなみに、この実物の写真は、機密上の理由で、ココに掲載することはできない。
さておき。
林さんは部屋の前で、『メカモスキート』から送信されてくる写真と音声に神経を集中させた。
「これがコラーゲンの現物です。それぞれに魚の名前が書いてありますが、これは、抽出した魚の名前ですな」
これが『コラーゴン』…!!!! 林さんは戦慄した。
他にも、怪しいフラスコ、赤い液体、白衣を着た若い研究者たち…
『メカモスキート』から送られてくる写真は、林さんの想像を絶するものばかりであった。
「ちなみに、ココの学生さんは、やはり男性が多いんですか?」
男が尋ねる。すると博士。
「確かに、ワシの研究室には男が多いんじゃが、ウチの学科は他の学科に比べると、女性も多いんじゃ。さっきも言ったように、化粧品や食料に関することも扱っておるからの。栄養学を学んだり、化粧品関係のことについてそのまま化粧品会社に就職したり、最近は様々な女子学生がおるのお…」
「ふんふん…。あっ、博士、蚊が…」
その瞬間!
嫌な音を立てて、『メカモスキート』からのデータが途絶えた。
「チィッ… さては、気づかれましたな…」
まあいい。既に、重要な情報は掴んでいる。『コラーゴン』。これが、ヤツらの最終兵器の名前に違いない。
林さんは、自分の考えに裏付けをするために、先ほど見つけておいた、『ある場所』へと急いだ…
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