図書室。比較的賑やかな校内で異様なまでに静かなこの場所は、普段あまり立ち入らない俺にとって完全に校内とは別個の空間だった。そう、半年とふた月前までは。
俺が図書室によく来るようになったのは、青葉サチというクラスメイトと付き合い始めたことがきっかけだった。サチは静かな性格で、付き合う前は友人間での会話でほとんど話題にあがるもことのない、本当に目立たない子だった。転じて、俺のほうは自分で言うのもなんだけれど、クラスでもけっこう目立つほうだったと思う。付き合い始めたころは友人に「なんでお前が青葉と?」などとよく言われたものだった。それくらい俺らが付き合うには、校内での二人の立ち位置に温度差があったのだ。そんな青葉との出会いは俺にとってすごく衝撃的なものだった。
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