悲しみはたおれる。
たおれ始めたドミノのように止まらずに、ずっとたおれ続ける。
僕はそんな人生をいま歩んでいるのではないかと思う。
あの日、僕は大切な人を失った。蝋燭に息を吹きかけて消える、強くて弱い火のように、あっけなく。
目を覚まし、自分が生きているということを実感する。ここに来て一ヶ月間。朝、目が覚めると毎日確認する「生きている」という当たり前の実感。
僕は病院のベッドで仰向けになって、真っ白な天井を見て、息をしている。感じるものは何も無い。家族の顔も、医者や看護師の顔も、窓から見える世界を見ても感じるものは何も無い。
僕はベッドから起き上がり、外の天気が良いのを確認すると、外に出た。
|