鶴が出てくる昔話といえば、鶴がおじいさんとおばあさんに恩を返す『鶴の恩返し』と思っていた私にとって、鶴=嫁バージョンの『夕鶴』はとても新鮮でした。一見、欲に負けた愛の話に思えますが、小川さんの指摘にあったように、物語の中ではつうの独占欲なども見え隠れし、手に負えない色々な“欲”を描いていることに気づきます。戯曲なので、ほぼセリフだけで物語が進んでいきますが、そのセリフにも「人間社会でつうが超えられない壁」「つうの言葉は与ひょうにしか通じてない」など、さまざまな暗示が潜んでいます。戯曲を本で読むという機会は少ないものですが、文字で読むからこその楽しさ、深みを木下順二は教えてくれます。
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