書き出しからすぐ、4行の中に「女に餓えている」という赤裸々な言葉が4回も出てくる『お目出たき人』。のっけから「この人大丈夫かしら」と主人公の行く末が心配になりますが、これが全然大丈夫じゃないんですね。近所の鶴さんに恋い焦がれ、脳内恋愛がどんどんエスカレートしていく主人公。ここまで自分に都合の良いように物事を解釈できる人ってある意味凄い……いや、やっぱり危ない。しかしそんな不穏な空気を一掃してくれるのがこのタイトルなのではないでしょうか。嘲笑も含んだ目で主人公をお目出たいと表現していることに「あ、ちゃんとわかっているのね」とほっとさせられます。それにしても鶴さんから見た主人公との物語は、一体どんなものだったのでしょうか。ホラーじゃなければいいのですが。
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