ミュージシャンと衣装(w/スタイリスト:北澤"momo"寿志)
2013.04.18
サカナクション
今回のサカナLOCKS!は、ゲスト講師が登場!
サカナクションのスタイリストであり、ミュージックビデオのクリエイティブ・ディレクターなども務める、北澤"momo"寿志先生を迎えて授業を行います。ミュージシャンと衣装についてのお話です。
山口「生徒のみんな、このmomo先生はすごい先生なんだぞ!名前を挙げて行くとキリが無いんですけど、momo先生は、椎名林檎さんや東京事変さん!スピッツさん!RIP SLYMEさん!GLAYさん!!……のスタイリストであり、他にも、CMに出てくる人の服も衣装があって、UNIQLOCK、TOYOTA PRIUS CFもやっていました。あと、寺山修司さんの文庫本の装丁も担当。日本で五本の指に入るスーパースタイリストです!!!」
山口「(爆笑)……言いすぎましたかね。でも生徒諸君、今日はいろいろ勉強できたらいいなと思います。それでは、登場してもらいましょう。北澤"momo"寿志先生です!」
北澤「こんばんは。五本の指に入る、北澤です。……バカにしてんだろ?(笑)」
山口「いや、してない、してない(笑)。今日は、よろしくお願いします。」
北澤「よろしくお願いします。」
まずは、momo先生とサカナクションの馴れ初めについて。
山口「最初に出会ったのは、僕らの初シングル「セントレイ」のミュージックビデオのスタイリストとしてだったんですよね。momoさんが関わる前のサカナクションの印象は、どうでした?」
北澤「可愛かったよね!(笑) 今は、立派になったなあって感じだけど、初めて会った時は、可愛かったんだよね!(下北沢のお店で)僕がふらっと現れたとき、全員がバン!と立ち上がって「サカナクションと申します!!」みたいな(笑)。そしてね、一郎君が熱く語るわけ。"今回の「セントレイ」って曲は、僕らにとってこういう曲で……" って。その話を聞いて、最後に僕が、「全部うまくいくかは分からないけど、泥舟に乗った気持ちでいてね。」って話したんだよね(笑)。」
山口「言ってた、言ってた!(笑)「セントレイ」のミュージックビデオを撮り終えて、momoさんは、しきりに "こんなところにいる場合じゃないから!" って言ってたのを覚えています。」
北澤「……言ったかも。すみませ〜ん…… (笑) 」
山口「それで、"次のミュージックビデオや、その先に、もっといろんなことができるから、一緒にやっていこう!" って言ってくれたんですよね。
北澤「そうだね。」
山口「その次は、「ネイティブダンサー」のミュージックビデオになって、その時から、momoさんはスタイリストだけじゃなくて、クリエイティブ・ディレクターとして入り込んできてくれました。クリエイティブ・ディレクターっていうのは、momoさんの場合は、映像監督の候補者を選んだり、作品のテーマや、コンセプトを決めて、作品を作り進めていく仕事のことです。だから、momoさんは、「ネイティブダンサー」のミュージックビデオを作るときに、監督の児玉(裕一)さんを紹介してくれた人でもあるんですね。」
momo先生とミュージックビデオを作ってきて、山口先生の印象に残っていることは何でしょうか。
山口「「夜の踊り子」のミュージックビデオを作るとき、あれは着物だったじゃないですか。」
北澤「楽しかった〜、あれ。」
山口「すごかったですね〜。フィッティング (衣装合わせ) のときに、その場でどんどん組み替えていったじゃないですか。それを体感していて、「ここに、この色を入れるんだ」って思ったり、モッチ(ギターの岩寺先生)は、女物の着物を着たりしましたよね?」
北澤「でも、一郎君も全部そうだよ。エジー(ドラムの江島先生)とモッチの下の着物以外は全部女性用。一郎君は全部女性用だよ。……昔、"かぶき者"って言って、そういう文化があって。歌舞伎ってあるじゃない?あの、"歌舞く"っていうのは、悪い奴ら……今で言う、ヤンキーが女性用の着物を着て、「オラオラオラ〜」って街を歩いていたことを言って、歌舞伎の語源の一説にあるんだよね。それを意識したところはあるかな。」
山口「へぇ〜……!今の話を聞いて、また「夜の踊り子」のミュージックビデオの印象が違って見えるかもしれないですね。」
山口先生は、momo先生と仕事をするようになって、ファッションやヴィジュアルに対する意識や、自分のファッションにも興味が持てるようになったそうです。
山口「momo先生と仕事する前は、ファッションとか、ヴィジュアルっていうものがミュージシャンにもたらす影響っていうのをあまり理解していなかったんです。世界を変える一曲を作れれば、伝わるんだと思っていました。もちろん、そういう曲を作れば伝わっていくけど、その速度が、ヴィジュアルによって変わってきますよね。」
北澤「そう。料理だって、どんなに美味しいものでも、屋台のようなペラペラの入れ物に入っているのと、盛りつけを良くしたものでは、感じ方が変わるかもしれないからね。俺らの仕事は、そういう仕事だよね。」
山口「あと、momoさんと仕事するようになって、この時代は、ヴィジュアルで伝わり方が全然違うっていうことが分かりましたね。」
北澤「おぉ〜っ!」
山口「僕もね、ファッションが好きになりました。」
北澤「オシャレですよね、最近。」
山口「オシャレになってきた……って自分で言うのもなんだけど、気にし始めた!(笑)」
北澤「うん、オシャレになってきた。……どうしちゃったんだろ!(笑)」
山口「(笑) 衣装合わせのときに、momoさんがいくつか候補を持ってきてくれる中から僕が買い取るっていうことが恒例になってきてますもんね。そこから段々……。だから、僕が今好きなブランドってsacaiとか、kolorとか、全部momoさんが選んでくれたものだから、影響受けてます。」
北澤「うん、良いと思います。」
そんなスタイリスト、momoさんがサカナクションをスタイリングするときに意識しているのは、どんな部分なんでしょうか。
北澤「そこですよね〜……!」
山口「初期は、フードがある服を僕が着ていたりしましたよね。でも、ある時からシャツに変わりましたよね。」
北澤「そう。一郎君はね、シャツがいいなって思っていたんだよね。詞の世界と、ヴィジュアルと、全体的にマッチするのはシャツなんじゃないかってずっと思ってたんだよ。シャツ、似合うし。」
山口「普段着でも、よく着てますからね。」
北澤「でも、サカナクションをやるときに気にすることは、普通に他の仕事と一緒なんだけど、5人いたら、一人ひとりのバランスが整っていて、5人揃ったときにも整っていて欲しい。5人集まったら、サカナクションって感じがするようにね。」
山口「ライブ衣装は?何か違いってありますか?」
北澤「ある、ある!俺は、衣装を着て、テンション上がって欲しいわけ。「よし、行くぜ!」って、思い切りステージに行ければ良いけど、「なんか、ここが引っかかるな〜」って (洋服の袖の長さなどが) 気になって曲に集中できなかったり、それを忘れて頑張ろうとはして欲しくないの。ミュージシャンの演奏を邪魔しちゃいけないと思うんだよね。だから、発汗性とかを一番考えるかも。」
山口「照明の影響とかは?」
北澤「照明も考える。ライブって照明が常に変わるから意外と難しいんだよ。例えば明度。明るさは結構重要で、暗転したときに一人だけ白いシャツの人がいて、ぼわーんと浮かび上がっちゃうのは良くないんだよね。わざとやった方が良い場合もあるけど……、そういうのは考えるかな。」
山口「なるほど。」
ここでひとつ、山口先生からmomo先生に質問です。
山口「もし、3人組のテクノ・ポップ・アイドルがデビューすることになって、プロデュースは山口一郎、曲はサカナクションが全部作ります。それで、スタイリストはmomoさんにお願いするとしたら、どんなスタイルにしますか?」
北澤「うん。まず、その子たちを見せてくれって話になるんだけど……。やっぱり、人ありき、なんだよな。僕らの仕事は、洋服があって、それを人にはめていく仕事だと思っている人もいると思うけど、それはファッション誌のやり方なんだよね。洋服を見せるために、モデルを選ぶ。でも、ミュージシャンはその逆で、その人がいて、どんな服をはめるかっていうことになるから、難しいですね……。」
山口「ほぉ〜、なるほど。……じゃあ、「アミエミ」! Tom Tom Clubみたいに、サカナクションから、草刈愛美と岡崎英美が別ユニットでデビューすることになったらどうですか。サウンドは、今のサカナクションがやります。」
北澤「じゃあ、全然違う服にするだろうね。……その方が面白くない? 違います!っていうのが、見るからに分かるようにしないと面白くないかもね。」
山口「今、サカナクションの中では、ザッキー(キーボードの岡崎先生)は飛び道具的なポジションじゃないですか。その感じは変わりますか?アミちゃんと、エミちゃんの衣装は揃えます?それとも、ギャップを持たせます?」
北澤「あ〜、えっとね、ふたりとも違うけど、引きで見た時は、揃って見えるように作れると思う。」
山口「あはは!(笑)」
北澤「できるよ!もう、絵は浮かんでるもん。」
山口「お、すごい!momoさん、ミュージックビデオの時も、絵が浮かんだら速いですよね。」
北澤「速いんだよ〜!「見えた!」って言ったら、速いね (笑) 」
といった感じで、今夜の授業もそろそろ終わりの時間です。
山口「いや〜、momo先生とは普段からいろいろと話してはいるけど、今日は、ラジオでじっくりスタイリングについて話してもらえるなんて、新鮮ですね。」
そして来週も、北澤"momo"寿志先生に登場していただいて、生徒のみんなに出していた宿題、『ミュージシャンの衣装で大切なことは何ですか』っていう質問に対する、生徒たちの答えを採点していただきたいと思っています。
山口「もう、厳しくお願いします!」
北澤「分かりました!」
山口「ちなみに、momo先生から見てうちの、とーやま校長と、よしだ教頭の服はどうでしょうか?ここに3月に僕が生放送教室に出た時の写真があるんですけど……。」
北澤「……これ、言わなきゃいけないんですかね?」
山口「怖っ!!(笑)」
北澤「いや……いいんじゃないですかね……。でも、こういうのを見ると、僕は全体のバランスとか見ちゃうんだよね。」
山口「いや、真ん中の僕は置いといて……」
北澤「いやいや、でも、そうなんだよ。一郎先生のこのブルーのおかげで、2人は救われているんですよ。この青があるおかげで、トーンのバランスが良くなって……、一言で言うと、まあ、春らしくて、良いんじゃね?ですね。」
山口「 (笑) 」