「はいはいはい!これは、「アイデンティティ」だね!この曲はねー……実は、4枚目のアルバムに収録される予定だった曲なんですよ(※実際は5枚目の『DocumentaLy』に収録)。この曲のデモを作り上げた時点で、アルバムに収録しますよって、うちのプロデューサー……野村達矢氏に聴かせたところ、「一郎、この曲はアルバムに収録するにはもったいない。次のシングルにとっておこう!」ということで、4枚目のアルバム『kikUUiki』の中から1曲、この曲が外されて、シングルとしてリリースにとっておいたわけですね。すると、いち早くビクターがそれを嗅ぎつけて、これはCMにいいんじゃないかと、すぐに東進ハイスクールのタイアップに選ばれたりしたわけですね。なので、この曲がシングルとなって、世の中に広まっていった中には、そういったプロデューサーの判断とかもあるわけです。僕らはアルバム制作からその1曲が減ったわけだから、また作らなければいけなくなったからね。それはかなりのカロリーでしたね。」
「はい、「アイデンティティ」1曲でもこれだけ語れることがあるわけですね。さて、次はどんな曲が釣れるかなー……私の浮きにどんな魚がひっかかるかなー……」
「これは「Aoi」だ!この曲はね、NHKのサッカーテーマ曲を作ってくれっていう話だったわけです。先生は生粋の中日ドラゴンズ(野球)ファンですからね。サッカーのことなど何も知らない。コンサドーレ札幌くらいしか知らなかったわけです。だけど、サッカーのテーマソングを作る上で、先生は調べに調べ尽くした。海外リーグから日本のJリーグから、全てを一生懸命勉強して、サッカーの面白さを大分理解してきて、今ではすっかりサッカーファン。プレミアリーグのアーセナルFCのファンだぞ。そのくらいサッカーのことを理解した上で書いた曲がこの「Aoi」だったわけです。高校サッカーのテーマソング「ふり向くな君は美しい」をロックにしたらどうなるのっていう曲で、あの曲は日本のサッカーのテーマ曲的なところがあるから、あのテイストをうまくロックに落とし込めないかなって作ったのがこの「Aoi」です。実は、この曲のミュージックビデオを撮ろうと僕は言ったわけ。この曲は良い曲だから、絶対ヒットするからミュージックビデオを撮りましょう!って言ったら、ビクターから「予算ない。」って一蹴されました(笑)。撮っておけば良かったのにねー。もうちょっとバズったと思うのよね。」
「さあ、次の曲は……」
■ サカナクション / セントレイ
「はい、これは「セントレイ」だな!この曲は思い出がいっぱいあるんだな。これは、NHKの『POP JAM』っていう番組で初めてテレビ出演をしたんですよ、この曲で。僕らはそれまでテレビに出たことがないし、そもそもテレビに出ることを目的にバンドを結成したわけじゃなかったわけ。それを、プロモーションっていうことでね……テレビに出るってどういうことか分からないままやって、あっという間に終わって、なんかすごい……馴染まなかったわけ。で、僕はその頃、多摩川の近くに住んでいたんだけど、その日の夜、川に行って、今一緒に会社をやっている西くんと一緒に釣りをしながら、僕は大声で泣き叫んだんですよ。「テレビに出るために音楽をやってきたんじゃない!」って。それは覚えてますね。今じゃもう……明日もMステ出ますけどね(笑)。そんな思い出がある曲です。これは、(草刈)愛美ちゃんがアレンジしたの。懐かしいね。」
「さて、次はどんな曲がかかるかな……」
「はい、これは「モノクロトウキョー」!これはね、「years」っていう曲を知ってるかな?「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」のカップリングなんだけど。その「years」っていう曲の歌詞を書き上げたのが午前3時くらいだったな。ディレクターが下北沢の王将で待っていて、その歌詞を持ってそこまで行ったわけ。王将でご飯を食べながら、良い歌詞できましたねーって話をして、ご飯食べて。そして、そこから歩いて帰ろうとしたときの景色の歌がこの「モノクロトウキョー」の1番の歌詞なんですよ。下北沢の明け方の景色が1番で、渋谷のスクランブル交差点の景色が2番なのよ。これ、思い出すねー。」
「さあ、次の曲はどんな曲がかかるかなー……」
■ サカナクション - 僕と花(MUSIC VIDEO)
「はい、これは「僕と花」だね。草彅剛さんが主演のドラマの主題歌で、サカナクションは初のドラマ主題歌ということで書いたんです。これも覚えていますねー。ドラマの主題歌だからって、そんなに激しい曲にしたくなかったの、僕は。だけど、サビにパンチがないとビクターの山上さんが言うわけですよ。「もうちょっとパンチがあった方が良いんじゃないかなー」って。だけど僕は「そんなことない。別にパンチが必要なわけじゃなくて、ドラマに合うものにするべきじゃないか」って言って、結果そんなに売れなかったっていうね(笑)。ドラマ主題歌でありながらそんなにヒットしなかったんだねー、この曲は。だけど、完成度はすごく高い曲ですから。」
「さあ、次はどんな曲がかかるかなー……まだいけるかな?」
■ サカナクション / ナイトフィッシングイズグッド
「はい、これは「ナイトフィッシングイズグッド」ね。これはセカンドアルバムの曲なんだけど、僕が弾き語りで作った曲に、QUEENみたいな展開をする曲が作りたいなって、プログレッシブな曲を作った方が良いんじゃないかっていうことでアレンジして作ったんですよ。これは、北海道で作った曲ですね。最初はあんまり良くないって言われたんですよ、当時のディレクターに。だけど、演奏を上手くして、パソコンでトラックを使って合唱を混ぜたりとかして、うまくバランスをとったりして曲としての完成度を上げていったことで、曲の評価が高まっていって、僕たちの自信になっていったっていうのが、この「ナイトフィッシングイズグッド」だったんですね。当時のシーンは、まだ音楽フェスがそんなに軸を占めていなかったわけ。フェスブームの始まりかけで、だけど、フェスで勝ったバンドが一番話題をさらっていくっていう時で。Twitterとかも始まったばっかりだったからね。フェスでいろんなバンドと横並びになった時に、耳に残ったり、「ん?」ってなる曲を作ろうって言って作った曲なんですね。懐かしいですねー。」
「じゃあ、最後くらいかなー……あと1匹くらい釣ったらリリースしたろうかなー……このアルバム。」
♪ 陽炎 / サカナクション
「これはねー、「陽炎」ってやつだな!これは、本広克行監督……先週、先々週と来てくださった、もっくんの映画の主題歌用に書いた曲なんですよ。BPMが130以上あるのよ。130以上でどこかファンクやソウルの要素が入った曲を作ろうっていうコンセプトだったの。なかなかファンクやソウルってBPMが120前後でゆっくりな曲が多いの。こういうグルーヴはこのBPMではないのよ。それを作りたかったわけね。で、もっくんの映画はイケメン揃いなのよ。その映画の主題歌で、変に音楽がさらっていくと、そのイメージを壊しちゃうじゃん。壊さないギリギリのラインを主題歌として作りたいんだけど、サカナクションとしてはサビとしてのパンチが欲しいわけよ。そのラインをうまく探ったのがこのサビなのよね。……実は、もう1個サビがあるの。別バージョンが。それは、次のサカナクションのニューアルバムに収録されるんじゃないかなって。前も話したけど、曲をアップデートするっていうことをやっていきたいわけよ。みんなのiPhoneとか、"ソフトウェアをアップデートしますか?" とか出るでしょう?そういう風に、曲もアップデートしていって良いんじゃないかと思うわけ。だから、この曲がアップデートされて次のアルバムに入るのをサカナ研究家の皆さんは楽しみにしていただきたいと思いますね。」
そろそろ、今回の授業も終了の時間になりました。
「今回は、3月28日にリリースになるサカナクションのベストアルバム『魚図鑑』に収録されている曲について、釣り上げながらお話ししていくっていう形をとったわけですが、皆さんもこのアルバムを市場で手に入れていただいて、自ら解体していただけたら嬉しいと思います。明日は『ミュージックステーション』の方にサカナクションの皆さんが出演されるということでね。(小声で)ちょっと実験的なことをやるって話なんでね……これはまだ秘密で、あんまり言うなって言われているんだけどね。……あと26日には、LINE LIVEをやるのよ。僕が弾き語りで1曲歌うとか歌わないとか……こう匂わしておくと期待してみてくれる人が増えるだろうと(笑)。これからサカナクションは飛ぶ鳥落とす勢いでどんどん頑張っていきたいと思っていますから、よろしくお願いします。今回は"浅瀬"の曲だったので、次回は"中層"の曲を綺麗に中骨を落とす感じでしゅっとさばいていきたいと思います。」
ということで、来週は『魚図鑑』のDISC2 "中層" 解体ショーをお届けします。お楽しみに!
LOCKS!SCHOOL OF LOCK!の講師陣
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