先週の予告通り、今回の授業でサカナクション初のベストアルバム『魚図鑑』の収録楽曲「陽炎 –movie version-」を特別オンエアしました。映画『曇天に笑う』の主題歌であるこの曲ですが、この–movie version-は映画館で聴くことができるバージョンです。
ベストアルバムは、3月28日リリースです。
そして来週のサカナLOCKS! では、映画『曇天に笑う』の本広克行 監督をゲスト講師にお迎えします。お楽しみに!
今回のメイン授業は、「音楽ストリーミング配信サービス」についての授業を行ったときに募集した、宿題 [ 音楽ストリーミング配信サービスは、『多分、◯◯!』 ] に提出された生徒みなさんの回答を紹介していきます。
<復習>
*『ストリーミング配信サービス』とは?」の授業 [[→2018年1月18日の授業]
山口「ストリーミング配信サービス、十代の子はあんまり使っている人はいないかもしれないんだけど、これが多分、世界の主流になっていくんじゃないかと思っています。先生たちがベストアルバムを出す理由も、ストリーミング配信っていうものが主流になっていく時代の中で、CDっていうものの考え方はどうなのかっていうのを自分たちで見直すためにベストアルバムを出すっていうところもある。これをみんながどう思っているのか聞きたかったので、今日はその送られてきた宿題を紹介するぞ。」
3月になりましたが、優秀な回答を送ってくれた生徒には、サカナLOCKS!オリジナルの2018年 卓上カレンダーをプレゼントしていきます。
★ 多分、夢!
私はストリーミングを利用しています。学生はお金がないから聞きたいCD全ては買えないし、レンタルもたくさん出来ないけど、音楽が好きだからもっと聞きたいと思い、ストリーミングを使い始めました。
今まではYouTubeでわざわざ調べて聴いていたので、聞きたい曲がある程度あるストリーミングは夢のようでした。
でも、手元に残しておきたいという思いも強いので、まずはストリーミングで聞いて、本当に気に入ったものは購入しています。
確かに曲が揃っていなかったり、音質の問題もあります。でも、新たなジャンルの音楽に触れる機会にもなるストリーミングはやはり、私にとって、多分、夢です!
女/18歳/東京都
「へー。やっぱりYouTubeとかだと、検索して関連するものをクリックして聴いていくしかないけど、ストリーミングになるとジャンルを指定してそのジャンルの中でプレイリストが変わっていって、好きな曲をじっくり聴けるっていうのはありますよね。でも、それを手元に持っておきたいっていう気持ちがあってCDを買うっていうのは独特ですね。僕ら世代になると、逆にストリーミングで聴く音楽とCDやレコードで聴く音楽ってジャンルで分けているかもしれないなー。でも、いっぱい音楽と出会えて夢があるっていうのはよく伝わりました。」
「じゃあ、ぱるにはカレンダー、プレゼント……あ!(モノマネしながら)カレンダー、プレゼントー。ふふふ(笑)。タモリ倶楽部的なね(笑)。」
★ 多分、一つのステップ!
ストリーミング配信サービスは確かに便利で、安い価格で膨大な数の曲を聴くことができます。しかしながらこれは音楽を背景として楽しむのなら良いけれど、音楽を音楽として楽しむのなら、高音質でアーティストの趣向が凝らされたCDの方が配信よりも優位に立つのではないでしょうか。
最近は自分の好きな音楽傾向を解析してオススメの曲をピックアップしてくれるようなサービスもありますし、ストリーミングは便利な一つのステップではありますが最終的に行き着く先ではないというのが僕の考えです。
男/16歳/北海道
「なるほどね。確かにストリーミングの問題点はいろいろある。まずは音質ね。あとは、ストリーミングだから、自分でデータとして持っているわけではないから、価値みたいなものもちょっと違うよね。僕らが作った時の音楽をそのまま聴きたいっていう考え方が、一時期「ハイレゾ」として盛り上がってきたけど、ストリーミングっていうのが出てきてハイレゾ傾向も落ち着いてしまいましたよね。でも、彼が言うように、僕はテクノロジーの進化の一つのステップだと思うんですよ。だって、僕らが作った音も実はCDにするときにでさえ、音質を下げて入れているんですよ。なのでCD自体、僕らが作った音そのものではないんだよね。でもデータであればそれが可能になるかもしれない。僕たちが作ったそのままの曲をそのまま出来たその日に出来立てほやほやを聴けたりするような時代が、ストリーミング配信サービスで来るかもしれないっていうのも、実はストリーミングの夢なんですよね。そこに期待しているっていうのはある。だって僕らの今の仕組みは、作ってから発売するまで1ヶ月かかるわけ。だけど、ストリーミングだったらぽっと配信できたりするかもしれないわけじゃない?それも新しい時代の流れだったりするんじゃないかと思うので、彼が言う、一つのステップっていうのはすごく理解ができる。」
「なので……カレンダー、プレゼントー(笑)。……モノマネしながら言いたいだけだね(笑)。」
★ 多分、2020年には若者は完全移行!
音楽を一定額で聴けることは、様々な音楽に触れやすい環境になるということだと思います。今まで聞いてこなかったものでも、まず聴くという糸口ができることによって興味を持つことができます。また、スマホが普及した今だからいろんな人との共有が可能になり、音楽がもっと活性化すると思います。つまり、音楽の雑食化です。自分はストリーミング配信を利用しますが、CDも買ったり借りたりします。ストリーミングでは配信用にビットレートが低くなっていたり、スマホのデータ容量を気にしなければならないので、あくまで入口にとどめ、気に入ったものをCDで入手します。個人的にはハイレゾとはいかないまでも、ロスレスでの配信を期待しています。
男/18歳/富山県
「おー。なるほど。彼も、”ロスレス※での配信を期待してます”って。そこなんだよね。(※ロスレスとは、極めて音質を落とさずに音楽データを保つ方法のこと) よく考えてみたら、今パソコンのハードディスクって1テラとか2テラとかあるわけでしょう?僕らの時代からすると、1テラってスーパーコンピュータ以上だからね(笑)。だって、512メガくらいのデータを運ぶのに、洋服箪笥くらいの大きいものを船に乗せるために押しているっていう写真があるのよ。そんな時代から考えると1テラなんて宇宙ですからね。でも、それってそんなに前じゃないからね。20〜30年前とかですよ。だから、これから30年後なんてひょっとしたらハイレゾのデータは今の僕たちからすると1メガないくらいの感覚になるかもしれないですよね。それに、インターネット回線の速さも5Gとかすぐですよ。ケータイの4Gからの5Gの移行がすぐですから。あっという間ですよ。そんな可能性がストリーミングには多いと。こういう肯定的な意見が多いですねー。」
「そんなゆーらりふあーには……カレンダー、プレゼントー。」
★ 多分、損!
私は普段あまり音楽を聴きません。むしろ、音楽を聴く時間がないです。通学は自転車で聴けないし、勉強中も聞きません。
CDは買わず、iTunesで買います。
音楽ストリーイングサービスは、音楽を聴く機会がない私にとっては損!
女/18歳/静岡県
「あれ。音楽を聴かない人からすると、毎月何千円も払って音楽を聴くのは損だと。それだったらCDでもなくて、iTunesでダウンロードして買っちゃうよって話ですよね。だけど、今、iTunesでのダウンロードもなくなって、ストリーミングしかなくなるんじゃないかって言われているんです。……多分、先生の読みでだけど、これからストリーミングの時代になったら、スマートスピーカーみたいなものが、みんなが住んでいるマンションや家の壁に埋め込まれていて、みんなが払っている電気代やガス代の中に "音楽代" っていうものが入ってくるんじゃないかな。もしかしたらもっと包括されるかもしれない。ケーブルテレビとかの料金にそういったものが含まれていて、特別払っているっていう感覚はないまま、家で好きな音楽がストリーミングで聴けるっていう時代が来ると思うんだな。公共料金化する気がする。だから、たまきは音楽を聴かないっていうのは、自分から積極的にアプローチしないっていうだけで、自然に流れてくると、好きな曲を見つけたり、もっと音楽を聴きたいって思うようになる可能性はあると思う。」
「そんなたまきには……カレンダー、プレゼントー。」
今回の授業、一郎先生のまとめです。
「なんか、先生の話は「ストリーミングは素晴らしいものだ!」、「ストリーミングを利用しよう!」って言っているように聞こえているかもしれないけど、先生はCDを買うことをやめろって言っているわけではなくて、CDは残っていくと思う。だけど、もっと「物」としての価値をミュージシャンやレーベルが高めていくっていうのは必要なんじゃないかなって。ストリーミングっていうものが出てくることで、そこに発破をかけてくれることになるんじゃないかなと思う。両方の価値を高めつつ、結果的にみんながたくさん音楽を聴いて、音楽の価値やCDの方が音がいいとか、そういうことに気づいてもらうっていうのも僕たちにとっては大事なことだったりします。だから、CDもストリーミングも含めて、みんなが音楽を好きになってもらえたらと思います。」
ということで、今回の授業は終了です。
来週は、映画『曇天に笑う』の監督、本広克行さんがゲスト講師として登場します。お楽しみに。
ちなみに、サカナクション「陽炎」は、このダンス動画でも聴くことができます。
■映画「曇天に笑う」曇天ダンス〜D.D〜 サカナクション/陽炎