山口「はい、講義を始めますから席についてください。Twitterを開いている人はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いている人はInstagramを閉じなさい。YouTubeを見ている人はYouTubeを閉じなさい。講義が始まりますよ。」
「今日の気になったニュースを発表します。」
■ ヒマラヤで「イエティの巨大足跡」発見、インド軍が写真投稿
「Yahoo! トップに出てきて(笑)。こんなにテクノロジーが進化した時代に、イエティの足跡が見つかったっていうことがYahoo! トップに載るっていうことは、本当にいよいよイエティがいたんだなって(笑)。見てみたら……記事的には、熊の足跡じゃないかっていう。……それ、Yahoo! トップになる必要ある?っていう記事だったんですけど(笑)。でも、令和の時代になりまして、何がどうなるのかわからない。未来がどうなるかわからない時代が来たんじゃないかと思います。僕はもう……希望に溢れているんですけど。皆さんは、令和をどんな時代にしていこうと思っているのかな?ふふふ(笑)。」
「では、書き込みを紹介します。」
★SAKANAQUARIUM 2019 "834.194" 6.1ch Sound Around Arena Session
今回、ゼビオアリーナ仙台公演に参戦させていただきました!
会場に入った瞬間からいつも以上に海の中で凄く居心地が良かったように感じました。
出来たてホヤホヤの新曲達からデビュー当時の曲まで盛りだくさんで今でも余韻が残っています。
6.1ch Sound Around Liveは今回で2回目だったのですが、音を浴びるとはこういう事なんだなと実感させていただきました。
素敵な思い出をありがとうございました!
7th Album「834.194」がサカナクションにとって最高のものになる事を願っています!
男性/15歳/山形県
「15歳でサカナクションのライブに来てくださったと。現在サカナクションはツアー中なんですけど、6.1chという……6方位にスピーカーがあって、プラス低音だけ出るスピーカーがある。前回の授業でやりましたけど、もう……前から後ろから横から感じると思いますよ。そして、サカナクションは6月に中国の上海と深圳でもライブが決定したわけでございます。初中国ですね。これはいろいろと問題もあるんですよ。中国という場所でライブをするには、機材を全部持っていけない。まず、6.1chでのライブはできない。2chでのコンサートになりますし、ギターは1回のライブで……僕の場合は4本のギターを使い分けるんですけど、これは全部持っていけない。船で運ぶわけですから、機材を。1つのコンテナの中に機材を全部入れて……スピーカーからPA卓、現地で借りれない照明とか特効……そういったものを詰め込むわけです。そこに入りきらなかった分は置いていかなきゃいけないので、何を持っていくかを厳選しないといけないと。なので、中国ではいつものサカナクションと違うコンサートになるかなと思うので、興味のある方は中国に遊びに来ていただけたらと思う。ちょっとびっくりしたのが、歌詞の検閲があるんですよ。そういうことも文化の違いではあるんだなって思ったし、中国でコンサートをやって人が来るのかなっていう……心配なんですけどね。1000人くらいのところでやるらしい。1000人も来るのかなってドキドキですけど。」
「それでは、本日の講義内容を黒板に書きたいと思います。」
「(黒板を書きながら) いやー……もう、あなたたちは慣れたかな?これはもう、UNIVERSITYだから。(ちょっと訛った口調で)……ユニバースティだから。今までのサカナLOCKS!とは違う……今までのサカナLOCKS!とはつんがう、ずぎょうになるからな!(笑)」
今回は、生徒の皆さんに出していた課題『大人が欲しいツアーグッズ』に提出されたレポートを紹介していきます。まずはミュージシャンにとってツアーグッズとはどんな役割があるのか、そして、サカナクションはツアーグッズに対してどんな思いがあるのかについてのお話から。
「ライブに行ったことがある方ならご存知かもしれませんが、ミュージシャンがコンサートやライブをするときに、ライブ会場でツアーグッズが販売されていますよね。このツアーグッズですが、ツアーの度に更新されていきます。その他にも、フェスがあったりすると、そのフェス会場で別にグッズを作ったりもするし、夏フェス用のグッズみたいなものも作ったりもします。今まで何度も話してきましたが、このツアーグッズの売り上げというものは、ミュージシャンが活動をしていく上でとても重要になっております。CDが売れない時代と言われてしばらく……何年経つかな?今やダウンロードもなくなって、ストリーミングの時代になりましたけど、ミュージシャンにとって、事務所にとって、CDが売れない時代になったからこそ、大事な収入源になるわけですね。特にサカナクションはそう!サカナクションがもしツアーグッズを一切売らずに全国ツアーに出た場合、ライブのチケット代金だけでツアーを黒字にしようと思ったら、多分チケット代は1人2万円くらいかな(笑)。2万円くらいいただかないと無理どす(笑)。だから、いかにこのツアーグッズが大事なのかっていうのを皆さんと一緒に学んでいきたいなと思っているわけです。」
「ツアーにおいて、まずチケット代というものがあるわけですが、グッズの売り上げというものは、ツアー全体の20〜30%くらいかな。ちなみに、今回のツアーグッズを全て買った場合の金額は、40600円になります。CD1枚が約3000円という中、グッズを全部購入したらこの金額になるということですね。『魚図鑑』の完全生産限定プレミアムBOX 4つ分くらいですね(笑)。なので結構高いと。で、今回のツアーグッズの特徴としては、平林奈緒美さんという、ボディケアブランド THREEとか、以前は雑誌『GINZA』のアートディレクションも担当されていて、魚図鑑のデザインもやってくださった、僕の大好きなデザイナーの方が入ってくださっています。」
「いろいろお話ししていきたいんですけど、ツアーでのグッズの売り上げというのは、ここから、人件費だったり、会場で販売するときにも、会場に何%か支払わなきゃいけない場合もある。マネージメントであったり、デザイナーに支払われる額とかも全部引いて、それ以外にも原価が差し引かれます。この原価っていうもの……利益率っていうものもグッズにとってはすごく大事なことになりますし、これはミュージシャンによってケースバイケースであると。サカナクションはどちらかというとTシャツの生地であったり、デザインに対してものすごくお金をかけています。なので、利益率は極端に低い。サカナクションを好きになってくれたきっかけで、物の価値だったり、ファッションやデザインなど、他のことに興味をもってもらいたいっていうのがサカナクションの大義であるから、あえて、装丁というか……Tシャツを入れる袋にもこだわりをもって、アルバムを作るように、音楽を作るようにひとつひとつ丁寧に作らせていただいているので、あんまり利益率は高くない。サカナクションはライブでの演出も結構お金がかかるし、スピーカーも多く入れているから、このグッズの売り上げを足してギリギリ赤字じゃなくなるかなっていうラインなんですね。基本的には、そこで何か利益を得ようとするよりは、楽しい空間を作ろう、楽しいライブにしようってことの方がメインにあるチームなんじゃないかと。僕らはそこがいいところなんじゃないかと思っていますが。」
「……そんなことを言っておきながら、グッズは売れないと大変なので、今回はちょっとグッズ紹介的なところをこのUNIVERSITY……(訛って)ユニバースティで、やっていきたいと思う。」
「今、手元にはサカナクションの今回のツアーグッズが山盛りになっておる。先生が特にイチオシしたいグッズは……これ!ジップ付きマイノリティ/マジョリティ バッグ!(M/M TOTE BAG) 」
(突然、一郎先生が通販番組のような口調になって……)
「山口さん、今回の商品を教えていただけますか?」
『はい、今回の商品は、このM/M TOTE BAGっていうトートバッグなんだけども、これの素晴らしいところはね……マチがついてる。』
「えっ、マチがついているんですか?」
『うん、マチがついてる。マチが付いている上に、チャックも付いているんだな。このチャックの音……聞く?(笑) (チャックを上下させる音)……チャック、付いているんだなー。』
「これは何にいいかというと、お子さんのいらっしゃるお母さま方はこのバッグは非常に使えると思う。保育園へのお迎え、幼稚園へのお迎え、そんなときにこのチャックつきのバッグにいろいろ入れて持っていくと便利だなと思う。で、たまにお父さんが迎えに行くときは、"MINORITY"の方を見せていただいて、お母さんが迎えに行くときは"MAJORITY"の方を見せてほしいと思う。こうやって、持つ位置によって自分たちのテンションや精神状態を伝えるっていうね(笑)。これで4000円は安いと思うなー。しかもね、このバッグのいいところ……どこにもサカナクションっていう文字が記載されていないという。中にも、外にも。……記載漏れ!(笑) これね……今気づいた。ちょっと入れればいいのに、どうして入れなかったんだろう……っていうくらい、デザインのことしか考えてないっていう(笑)。グッズであることはとりあえず置いておくという……タイトなスケジュールの精神状態もここに反映されているけども。」
「あとね、小物もいろいろあるんだけど、小物が売れると大物が売れないっていうね。今日は先生みんなから課題を募集しているんだが、聞きたいこともあるんだな。グッズはたくさんあった方がいいのか、それとも少ない方がいいのか……これは先生、知りたいなー。いろいろ選べた方がいいのか、それとも、これ、これ、これとバシーンとあまり選べない方がいいのか、意見をユニバースティの方にいただけたらと思います。」
「じゃあ、課題をちょっと紹介していこうか。」
★大人が欲しいツアーグッズレポート
サカナクションはこれまでのライブおよびグッズで、どのアーティストよりも強く、視覚/聴覚/触覚に訴えて来たと思います。さらに今回のツアーではこれに味覚(たべっこ水族館。笑)が加わり、残すはいよいよ嗅覚だけとなりました。そこで私の考えた、大人が欲しいツアーグッズは「香水」です。お馴染み平林奈緒美さんによるパッケージデザインの香水となると、かなり本格的で大人向けだと思います。また、香りの調合はメンバー好みにして頂き、男女混合のサカナクションだからこそできるユニセックスな香水に仕上げて欲しいです。コスメのお値段はピンキリなので素人には値付けし難いですが、例として以前椎名林檎さんのツアーでは4,000円でパルファムが販売されていました。
愛媛県/21歳/女性
「おー、そういうコンセプトね。これね……香水っていうのは、実は考えたことがあるんですよ。しかし、匂いを開発するのに1年〜1年半かかる。ましてや、サカナクション全員で考えるとなると、5人全員の意見を吸い上げながら……メールベースで意見を言い合わなければいけない(笑)。時間も含め、3年くらいかかるんじゃないかな。しかも、匂いというのは本当に好みが分かれますよね……だから非常に難しいんじゃないかと思う。だけど、香水は作りたいとは思っている。曲のタイトルとかで匂いに関わるものがあったりしたときには、ちょっと作ってみたいかな。そういうストーリーがあるときに初めて動けるのかなと。例えば、薔薇の曲ができたら、薔薇の香りのものを作るとか。そういうことになりそうな気がするね。匂いを作るプロもいるわけだから……そこにミュージシャンが入り込んでいくというのはちょっと難しい。失礼に当たるんじゃないかなっていう気がしている。ただ、僕たちが一度通ったところを突いているというのはいいんじゃないかと思うので……60点!」
<鳩時計の音> (※授業終了の合図です。)
「……あら!今日はちょっと……グッズのお金の話が盛り上がりすぎて時間がなくなったぞ。たくさんレポートが届いているので、次回このレポートを読み上げていきたいと思う。」
ということで、今回の授業も終了の時間になりました。
「今日はグッズというものがツアーの中でどういう位置にあるのか、そういう話をさせていただきましたが、これはミュージシャンによって全然契約内容や考え方が違うと思う。僕が正しいと思うグッズの考え方としては、体験というものにお金を使いたい……音を良くしたいとか、面白いコンサートにしたい……そのためのお金をグッズで補完する。僕はそういう考え方の方が健全だし、続けていく上でリスナーとの関係性もちゃんと保っていけるんじゃないかと思います。だから、僕らの考え方がこうだっていうのを今日はお伝えできたかなと思います。次回は学生諸君のレポートを読み上げていきたいと思う。」