今回の授業は、生徒の皆さんに出していた宿題『「ストラクチャー」の歌詞を考えよ!』を、生徒の皆さんから届いた歌詞を山口先生が実際に歌いながら採点していきます。
宿題『「ストラクチャー」の歌詞を考えよ!』とは……
"サカナクションのニューアルバム『sakanaction』に収録されている「ストラクチャー」。この曲の後半部分に「ラララ」で歌われているメロディーに歌詞をつけて提出しなさい。"
……というものでした。
山口「みんながどんな歌詞を書いてきたか、先生は本当に楽しみです!でも、これは授業ですから!ガチで、プロデューサー目線で批評していきたいと思いますので、生徒諸君、覚悟するように!」
皆さんの歌詞を紹介していく前に、まず今回の宿題のポイントを山口先生が教えてくれました。
1 言葉数・リズム
「「ラララ」のメロディーは、言葉数が決まっています。それをオーバーしたり、足りなかったりしたら、歌えませんからね。だからその言葉数は大きなポイントです。」
2 聴いただけで理解ができる
「これは "歌" になるわけです。歌になって、響きとして、日本語として伝わるものである必要があります。読まないと解らない歌詞は、今回、NGとさせていただきました。」
3 歌い始めの母音
「これがすごく重要で、「ストラクチャー」を聴いてもらえばわかると思うんですけど、歌い出し、最初の「ラ〜」が『一文字なのか』、『二文字なのか』、『どの母音なのか』によって、聴こえ方が変わってくるわけです。そこも注目点とします。」
4 語りすぎない
「このポイントは難易度が高いですね。「ストラクチャー」という曲は、後半にようやく歌詞が出てくる、前半は何分も歌が無いインストの曲です。聴いている人はずっと音楽を追いかけて聴いている中で、いきなり歌が出てくるわけですね。つまり、言葉が出てくるという事は、そこで景色が増えるという事です。それを加味して考えていない歌詞はNGとさせて頂きました。……ということで、「ラララ」の部分に全部歌詞を書いてきたやつは全部NG!(笑) そんなに説明しなくても良いんです。もちろん、たくさん書いて来てくれたことは、先生はすごく嬉しい。それは評価します。だけど、たくさん書きたい事がある部分を、1〜2行に削ぎ落としていく事。それは実は、俳句や短歌と同じで、歌詞にも必要な技術なんです。だから、ダラダラと書いて来たやつは全部NG!(笑) これが今回のポイントとさせていただきます。」
なかなか厳しい気もしますが、一番良かった歌詞は、サカナクション先生がスタジオでレコーディングしてくれる訳です!ちなみに今回、届いた歌詞には、いくつか傾向がありましたので併せてご紹介しますと……
・女の子のロマンチックな歌詞が多い。
山口先生曰く、普通は、男性が書く歌詞の方がロマンチックなのだそうですが、サカナLOCKS!の生徒は、女の子の方がロマンチストが多いようです。
・男の子は、恋愛の歌詞が多い
「君が好き」や、「君に会いたい」というフレーズがよく見られました。
・「夜」「朝」「月」「雨」という単語が多い
これには、山口先生も「北国の閉鎖された感じ?……これは、今回のアルバムを聴いて来てくれた生徒たちが、そういったものをテーマにあててくれたのか。「ストラクチャー」のサウンドから導きだしたのか……?」と言っていましたよ。
それでは、生徒の皆さんから届いた歌詞を紹介していきます!
(何度も言いますが、今回のオンエアでは「ストラクチャー」のビートに合わせて、山口先生が実際に歌っていましたよ!)
あぁ 星がにじむ まるで月が空の 穴のよう
女/18/愛知県
「サカナクションが大好きなラジオネームだな〜(笑)。……うん、なるほどね。彼女は、この音楽を聴きながら空を見上げたんでしょうね。空に星が滲んでいて、月は、ポッカリ空にあいた穴のように見えたんですね。これは、情景的には素晴らしいと思います。ただ、この前に流れてくるサウンドから、いきなり出て来た歌詞としてのパンチっていうのはちょっと欠けるかもしれない。でも、景色が浮かんでくるから、結構面白いかもしれないね。」
65点!
ああ 街を泳ぐ 活きる熱きる(いきるいきる)者の ストラクチャー
男/13/福岡県
「なるほどね……タイトルを歌詞に持ってきましたね〜。[活きる熱きる]っていう部分は、文字を見た時のフックになりますね。ただ、僕は、結構曲のタイトルを歌詞に盛り込むのを避けるんだよね〜。歌っていて、ちょっと恥ずかしかった(笑)。……なんでなんだろう。この歌詞からは、街を泳ぐ、立ち向かっていく人たちのストラクチャー、この曲はそういう曲なんだ、みんなで騒ごうっていう、熱を感じますね。響き的には良いんじゃないでしょうか。……最後の[ストラクチャー]は恥ずかしかったけど(笑)。」
60点!
ああ ただ待ったんだ ただ鳴ったんだ 体 絡まった
男/16/石川県
「ほぉ〜……。文字だけを読んでも、リズム感が良いですね。日本語として美しい。歌っていても、聴いていても、何て言ってるんだろうって気になるような語感はあったと思いますね。そして、ただ待っていた中で、鳴ってきた音に体が絡まってしまったっていう、結構深い歌詞になっていますね。僕は歌詞の中では、わかりやすさを "親切心" って言うんですけど、親切すぎる事で、逆に不親切になってしまう事があるんですね。だけど、不親切なものは、メロディやリズムによって、親切に変わっていくこともある。kyowが考えてくれたこの歌詞は、意味としてはすごく難しいけど、リズムでそれをカバーしているという、面白い歌詞になっていると思います。」
80点!
もう めんどうなことは あしたのぼくに まかせよう
女/17/鹿児島県
「ちくわ、言葉数が足りないわ!それに、歌詞の意味ね……、できることは今日やっちゃおう!うーん、ちょっと歌いにくいな。」
30点!
ああ 涸れ落ちそうだ 枯れ落ちそうな花が 見えたから
男/15/愛知県
「これは、花を見て、自分の気持ちが動いたんですね。自分が涸れ落ちそうで、歩いている途中に、枯れ落ちそうな花が見えたんですよ。そのせいで自分の気持ちも落ちてしまったという……。曲やメロディーに対して、反対な、ネガティブな事を歌っていますね。そのバランス感覚は面白いかと思います。倒置法を使っているところもなかなかいいね。ただ、ちょっと暗すぎるかな〜。こうなると、次、もうひとつ歌詞が欲しくなりますよね。もっと深くわかる1行があるといいね。ずっとこの歌を歌い続けて、一番最後の1行だけは、ポジティブにしたりすると、溜めが効いて、かつおだしの歌詞が活きてきそうです。」
70点!
さあ Twitter閉じて マンガはしまいなさい 今すぐに
女/16/愛知県
「コラァ〜!!トマト幻想曲、コラッ!!!先生、ちょっと、恥ずかしいよ!(笑) 先生は本気なんだから。常に全力でやってるんだから、こういうことをやってこないように!(先生は知ってるんだぞ。生徒諸君がTwitterを閉じていない事!ちゃんと調べてるんだからな。しっかりTwitter閉じなさい!)」
0点!
さあ 新たな我(われ) 沢の流れを手に 受け止めて
そう かけたヒビも 甘い光として 飲み込んで
男/48/岐阜県
「すごい!嬉しい!48才の方が考えた歌詞……本気ですね〜![沢の流れ]、つまり、時代の流れや社会の流れを新しい自分で受け止めようと。それで、[かけたヒビ]っていう所は、日々と、手の皹をかけていると思うんですけど、これは、自分にとって辛い事、歪(ひず)みになる事も、優しいものとして飲み込んでいこうという、洗練された歌詞なんですね。これは合唱っぽいですね。そういう部分も加味した上で、大人な言葉選びをしているという……、本気の歌詞ですね!……まあ、先生は年齢関係なく、バシバシ厳しくいきますけどね(笑)。その辺は先生平等だから。音楽は平等! ただ、ちょっと難しいかな。[新たな我]でしまるところも、何を歌ってるんだろうって、よくわからなくなるところもあるのでね。」
60点!
そろそろ、授業も終わりの時間です。
「でも、みんなすごいと思いますよ。11才から48才の方まで、いろんな言葉をこんな風にかけるなんて。……やっぱり、みんな音楽を聴いているんですね。その歌詞に何度となく影響を受けてきてね。替え歌を作って遊んだ時期は、僕にもあったんですよ。そういう事をして楽しんでいる人もいるんだろうなと思いました。実際に歌詞を書いて、それを仕事として皆さんに伝えている、山口一郎先生としては、こういう風にみんながチャレンジしてくるというのは、先生も気を抜けないなと思いますし、こんな風に採点しているわけですから、しっかり自分の言葉というのを見つめ直していかないといけないなと、皆さんの歌詞を見て、本当に深く考えました。皆さん、宿題の提出、ありがとうございました。」
さあそして、一番優秀な歌詞は誰でしょうか!
「今回、該当者は……なし!まあ、まだ出るね!(笑)」
ということで、この宿題は引き続き,募集します。山口先生が教えてくれた今日のポイントを踏まえて提出してくださいね。