自習
2016.08.04
サカナクション
山口「はい、授業を始めますから席についてください。マンガを読んでいる生徒はマンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いている生徒は、Instagramを閉じなさい。授業が始まりますよ。もうさっそく黒板を書きますよ。」
「今夜は、授業はしません!自習です!!ふふふ(笑)」
「……先生もね、夏休みがとりたいんですー。今ね、机の隙間みたいなところに指を突っ込んで駄々をこねている感じになってます(笑)。せめてこの、唯一の癒しであるサカナLOCKS!のときくらいは休ませて欲しいと思って、自習にさせてもらいました。以前もこういう日がありましたけどね。先生が休むんだからな!生徒諸君は休まないんだぞ!……お?今Twitterに手をかけた人いるか?マンガを読み直したやつ、いるか?……自習は勉強をする時間だからな!頼むぞ。先生はこの時間、Twitterの下書きをするからな(笑)。みんな、好きなように勉強をしてくれ。」
「おっと、岡崎(サカナクションのキーボード、岡崎先生)からメールが着たぞ。うん、岡崎も頑張ってるな。でも、先生は今休む時間だから仕事はしないぞ。岡崎にも返信しない。各自、みんな勉強するように!ちょっと、先生はYahoo!ニュースを見ようかな……ほう、世の中はこんなことになっているんだな。ははー、なるほどねー。ふーん……。」
「先生な、そういえば、車売ったぞ!(笑) 車、売った。残念だがな。手放した理由もいろいろあったんですけど。」
「……先生なー、最近いろいろ考えるんですよ。ミュージシャンって、アーティストって呼ばれるじゃない。あれ、ちょっと嫌だなって思うんですよね。この授業でもよく言ってるけど。先生ね、ミュージシャンであって自分のことをアーティストだと思ったことはないのよ。ビクターとかはよく言うのよ。アーティストさん、アーティストさん……って。マネージメントも言うんですよ。アーティスト・マネージメントって。でもね、ただの音楽好きの兄ちゃんだからね。アーティストらしいことなんて何にもしてないもの。普通に鼻くそもほじくるしお風呂にも浸かるしトイレにだって行く。最近は毎朝、蕎麦ばっかり食べてるし(笑)。だからね、アーティストらしい瞬間なんて特にないんですよ。だからミュージシャンって呼んでほしいんです。みんなは周りに流されて、ビクターの変な言い方をなぞっちゃって、アーティストって言うけど。他のミュージシャンのことをアーティストって言うのは別に構わないんですけど、先生のことは音楽好きの兄ちゃん、ミュージシャンだって思って欲しいなって思うんだよね。」
「……おっと、ちょっと、みんな、自習中だぞ!手は止めるなよ。先生の話を聴くのはいいけど。先生ね、最近、勉強しはじめているんですよ。音楽のこともそうだけど、音楽以外のこともね。ミュージシャンってなんか切ないなって思うことがあってね。僕らはやっぱり、CDを作ることと、ライブをすることくらいしか大きな仕事がないのよ。表現することがないの。でも、先生はそれがつまんないなってすごい思うのよ。なんでそれしかないかって言うとね、先生が所属している会社が、CDを作ることとライブをやることでしかマネタイズできないんですよ。マネタイズって分かるか?……辞書を引け(笑)。ググってみなさい。要するに、そこでしかお金稼ぎができないから、それしかないんだなって思ったわけ。だったらもっといろんなことを、ミュージシャンとして表現する場所を増やしたいんだったら、それ以外の場所でちゃんとマネタイズができるようにやっていかないといけないなって思っているんですよね。」
「それで先生は最近勉強しているのが、現代アートなんですよ。ハードル高そうなイメージあるでしょう?美術館によく分からない変なものがあって、それが芸術だって言っていて、ハイソな感じするでしょう?でもね、現代アートってめちゃくちゃ面白いのよ。でもギャグ的な要素もあるの。そのギャグ的だと思っていたものの理由だったり背景だったり、解釈……そのコンテクストが分かると、実はその作品として面白いものなんだって分かるわけですよ。そのギャップみたいなのがいい感じだなって思ったんですけど……」
(教室がざわざわし始めました)
「あら!?先生の話つまんないのか?騒ぎ始めているぞ!静かにしなさい。先生の話を聞きながら手を動かしなさい!……先生もちょっと変なテンションになってきましたけど(笑)。」
「……でね、先生がやりたいのが、誰にも曲を聴かせない曲を書きたい。先生ね、曲を書くときに、絶対に誰かに聴かれるっていう前提でしか曲を書かないんですよ。作ったらそれが商品になるわけですから、それを売りたいわけですよ、ビクターとかはね。商品にしなきゃいけないの。でも、商品にしないの。誰のためでもない、自分のためだけに曲を作るっていうのをやりたいなって思うんだけど、これはどうしたらいいかな。……これをどうしたらいいかなって思った時に、たどり着いたのが現代アートの考え方なんですよ。誰にも聴かせないっていう前提で、半年くらいかけて音楽を作ります。で、作りました。それはまだ誰にも聴かせてないわけだから、先生だけのものなんですよ。HIP LAND MUSIC(所属事務所)のものでもない。先生のものなの。SCHOOL OF LOCK!でも流さない。これを曲の入ったハードディスク……要するに、曲のデータが1トラックずつ入っているデータだ。それをジップロックかなんかに入れてだな(笑)、コンクリートの中に埋めるんだわ。上からコンクリートをかけて、コンクリートの塊の中にハードディスクを入れたいんだ。で、そのコンクリートに曲名を書くんだ。それを売りたいんだな。……つまり、その曲は先生しか聴いたことがないの。で、その中に入っている曲は、買った人のものになるわけ。ちょっと難しい話になるけど、原盤権っていうものがあるんですよ。曲の権利を持っている人。つまり、買った人は、その曲の権利も全部自分のものにできるわけ。つまり、そのコンクリートを叩き割って、ハードディスクを取り出して、iTunesに配信してもいいわけ。CDにして流通に出してもいいわけですよ。サカナクション先生の曲を。だけど、コンクリートの状態での作品なわけだから、割ると価値が変わるわけ。割ると音楽になるの。割らないとコンクリートなんだけど。そういうものにしたいんですよ。そうしたら、先生は割られない前提で曲を作るわけだから、誰にも聴かれない前提で作る。作品としては違うものになるわけだな。先生はそういうのをやりたいんだな。こういう疑問をいっぱい投げかけていきたいんですよ、サカナクション先生はね。」
「あとね……、新曲が発売延期になっちゃったけど、その理由を言うと……ちょっとこの間も話したけど。(ベースの草刈)愛美ちゃんに子供ができて、時間の使い方が変わったことでいろいろ変わったことでいろいろ苦戦したなってこともあったんだけど。でも、今先生の家をスタジオ生活しているんですよ。引っ越し作業もして、段々スタジオになってきていますね。そこでレコーディングを始めるので、また自宅制作に戻るかなって感じがしています。」
「そうだ、以前、サカナLOCKS!でサカナクションのイントロクイズをやったでしょう。あれをきっかけに、先生たちがスペースシャワーTVでやっている、『NFパンチ』っていう番組で、サカナクション カルトQっていうのをやることにしたんです。サカナクションのカルト問題。サカナクションのコアファンにしかわからないような問題に答えていく大会に、サカナLOCKS!から出場者を募集したいと思う。予選があるからな、筆記の!そこに、都内に来られる10代で、私こそサカナクションのコアファンだっていう生徒を募集したいと思う。40名くらいで筆記テストをするぞ。先生はテスト監視員で行くからな。物差しを持って、カンニングした人の手を叩く係(笑)。そこで予選して勝ち抜いた人を、スタジオでカルトQに出場してもらうっていう。サカナクションのコアファンにしか分からない問題に答えてもらう大会に出場してもらいます……『NFパンチ』出演権を得られるっていうことですね。しかも、その大会には、うちのサカナクションのメンバーも出ますからね。メンバーとの対決が行われます。今日から、『NFパンチ』のウェブサイトから応募しているのでね。そこをみて応募してもらえたらと思う。夏休みの思い出作りに来てくれてもいいし。筆記テストに答えられないとだめだからね。難しいぞ。「山口先生が今使っているドライヤーのメーカーは?」とかね(笑)。Instagramとか見たら分かるんだなー。しっかり見ていたら分かるんだな。「山口先生の家のラグの色は何色?」とかね。「山口先生のメガネはどこのブランドでしょうか?」とか、「山口先生の家の電子レンジは何ワットまでいけるでしょうか?」とかね(笑)。キリがないんだけど(笑)。カルト問題がいっぱい出るので、それに答えられる生徒を募集します。」
■『NFパンチ』Official Site
「あー、もう一気にしゃべったので先生は疲れたぞ。……先生はとりあえず休みを作りたいなー。1日くらい。作りたいなー。……無理だね(笑)。ビクターね、本当にひどいのがね、ご飯の時間をスケジュールに入れないのよ。……またビクターの愚痴になるけど。昼からインタビューとかを1時間刻みで入れて、ご飯も食べないでバーッとやって、終わるのが夜中の1時とか2時とか平気でやりますからね。で、結局24時間やっているデニーズに行くんですよ。これも、くぅー!(※紙をくしゃくしゃにして悔しがる)……でね、そのデニーズの支払いは僕なんですよ。それもね、くー!最近になると、僕が財布を出すと、その瞬間に「ごちそうさまです!」って言いますからね。うーん……
(そのまま一郎先生の音声がフェードアウトで授業終了!)