映画『バクマン。』対談 (w/ 大根仁監督) - 後編

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山口「はい、授業を始めますから、席に着いて下さい。まずは、SCHOOL OF LOCK! 10周年、おめでとうございます!きたー!僕がサカナLOCKS!を担当してからは、だいたい3年半なんですけど……長い。あっという間ですね。っていうかね、本当に毎回毎回、(番組)編成のときにサカナLOCKS!が終わるんじゃないかとドキドキしていましたけど(笑)。最近Twitterをエゴサーチしていると、“サカナLOCKS!は真面目すぎてつまんない。” みたいなのも見受けられなくなりました。……あ、見受けられなくなったってことは興味さえなくなってしまったのかもしれないけど(笑)。でもサカナLOCKS!は真面目に毎週毎週頑張って、遂に3年半なんですが。最初に生放送教室にゲストで登場させていただいたのが、2009年の2月。アルバムで言うと、『シンシロ』のときですね。……もう大分前ですね。何年前?……6年前。え、その時に生まれた子はもう小学生。……そんな年になってしまったんですね。そのときからこの年まで6年間音楽を続けられてきたということは本当に嬉しいことですし、ずっと応援してくださっている皆さまに、本当に感謝をお伝えしたいと思います。そして、SCHOOL OF LOCK!もね、10周年、15周年、20周年……と長く続いて、音楽のために頑張っていただけたらと思っています。そのために僕たちが出来ることがあれば、微々たるものですが、本当にあぶらとり紙くらいの厚さになっちゃうかもしれないけど(笑)、協力していけたらなと思っています。SCHOOL OF LOCK!も、サカナLOCKS!も、これからもよろしくお願い致します。」

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今回の授業は、先週に引き続き、サカナクション先生が主題歌と劇伴を担当した映画『バクマン。』の大根仁監督をお迎えしています。
先週の授業、2015年10月1日のようすは[⇒コチラ!]

山口「本日のゲスト講師は、この方です!」

大根「はい。映画『バクマン。』の監督をやらせていただきました、大根仁です。よろしくお願いします。」

山口「よろしくお願いします。先週に引き続き、現在発売中のサカナクションのニューシングル「新宝島」が主題歌になっている、映画『バクマン。』の大根仁監督にお越しいただきました。……映画『バクマン。』ついに公開になりましたね。」

大根「なりましたねー!本当にもう。大ヒット御礼でございますよ、本当に。」

山口「僕もね、映画館で観てきましたよ。やっぱりね、音がすごかったですよ(笑)。」

大根「あははは!(笑) 音が良かったと、何しろ(笑)。」

山口「でも、普通の映画より音でかいですよね?」

大根「でかい。でかく設定してる。」

山口「ですよね。僕びっくりしちゃって。生まれて初めてですよ。映画観ながら体が揺れるの。普通映画って、じっと観るじゃないですか。自然と体が揺れてくるくらい、音楽って重要な要素なんだなって。」

大根「うん。サカナクションにお願いした時点で、どこかで音楽映画っていう要素を加えようと思っていたから。」

山口「前回もお話ししましたけど、サカナクションは映画の主題歌だけではなく、映画の中で流れる劇伴も担当させていただいたんですが、大根監督にとって映画の中で流れる音楽や主題歌はどういう存在なんですか?」

大根「本当に、キャストとかスタッフィングとかと同じくらい、音楽を誰にやってもらうかっていうのは重要ですね。映画の中で音楽は、俺の中で、最終的なシーン毎の空気を作るというか……。難しいんですよね。すごくいい感じにしてもらいたいんだけど、そこまで主張して欲しくないっていう。」

山口「やり取りの中でもその言葉ってすごいありましたよね。」

大根「空気は目立たないじゃない、だって(笑)。」

山口「なるほど。大根監督は、『モテキ』という映画も監督されていましたが、『モテキ』でも音楽はすごく重要な役割を果たしていましたよね?」

大根「うん。」

山口「僕はもちろん『モテキ』を見ていたんですけど、その『モテキ』の監督である大根監督から劇伴の依頼をいただいたときに、映画の中での音楽の重要性みたいなものをすごく感じていたので、これはすごい話がきたなっていう風に、その時はプレッシャーもあったんですけど。実際にやりとりして、本当に楽しかったですよね。」

大根「僕も楽しかったですよ。」

山口「でも、主題歌でね……」

大根「またその話!?(笑)」

山口「(笑)前回も話したんですけど。6ヶ月くらいかかっちゃったから。しばらく東宝からは話が……」

大根「東宝はおろか、映画界全体だよ(笑)。」

山口「(笑) まあ、そういったことがありながらも、無事完成しましたが。」

大根「いやー、素晴らしい曲ですよ。「新宝島」は。」

山口「是非、劇場に足を運んで、劇伴や主題歌を聴いて、映画を見ていただきたいなと思います。」


■映画『バクマン。』予告


山口「このSCHOOL OF LOCK!の生徒たちは、10代がすごく多いんですけど、大根監督は10代の頃どんな日々をすごしていましたか?」

大根「10代の頃……。今回の映画『バクマン。』のような、サイコーとシュージンの主人公の2人の会話の中で、2年生になって進路希望を問われたときに、「何もやってこなかったじゃん、俺たち。」って台詞があるんだけど。部活もやってこなかったし、勉強も大してやってこなかったし、そんなに落ちこぼれていたわけでもないしって。そんな感じかな俺も。男は中学生くらいまではまだ小学生ノリじゃない。ほとんどカブトムシとアイスクリームのことしか考えてないくらいの(笑)。」

山口「そんな大げさな!(笑)」

大根「ははは!(笑)」

山口「でも、映像の世界に大根監督が入ろうと思ったきっかけは何だったんですか?」

大根「それは、子どものときからテレビが大好きで、東京近郊に住んでいたから、東京に今でもたくさんある、名画座と言われる……2本立てとか3本立てとかを安い金額で観られるっていう名画座に中学くらいから行くようになって、映画をたくさん観るようになって、テレビも好き、映画も好き……で、俺が10代の多感な時期を過ごしたのは1980年代の中頃くらいだから、日本においてもいろんなロックバンドがボコボコ出てきた時期だったんですよね。で、音楽も当然好きになり、テレビ大好き、映画大好き、音楽大好き。それが全部できる仕事がしたいっていう。」

山口「それでいきなり会社に入ったんですか?それとも何か勉強してから?」

大根「一応ね、映像系の専門学校には行っていましたよ。でもそこで何かを勉強したっていうわけではなく。そこに講師で来ていた俺の師匠である堤幸彦っていう監督がいるんだけど、その人に拾われる形で業界に入った。」

山口「そうだったんですか。最初の頃、映像の仕事をし始めたときはどんな仕事が多かったんですか?」

大根「普通にアシスタント業務から始まって、割と早めに……俺、二十歳の時にディレクターデビューしているんですよ。業界に入って1年目に。それが、カラオケビデオ(笑)。」

山口「カラオケビデオ(笑)。」

大根「カラオケビデオのディレクターとしてデビューしました。」

山口「じゃあ、数々のカラオケビデオを?」

大根「カラオケっていうことだけを除けば、すげえアーティストを手がけていたよ、俺。」

山口「例えば?」

大根「サザン(オールスターズ)とか、永ちゃん(矢沢永吉)とか、ビートルズ(The Beatles)のビデオもやったことあるな(笑)。」

山口「うっそ!すごいっすね。」

大根「ははは!(笑)いや、カラオケね(笑)。」

山口「(笑)そんなカラオケ映像を数々手がけたことがある大根監督なんですけど、現在発売中の「新宝島」のDVDの中に、「新宝島」のカラオケ映像っていうのが入っていて。もう観たことがある人もいるかもしれないんですけど。実は、そちらの映像を大根監督に撮影していただきました。」

大根「はい。そうなんですよー。」

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山口「あれ、もう……僕ら世代からすると、90年代をカラオケボックスとかで謳歌してきた世代からすると、まさにその時代の映像感があるんですけど、今の子たちが見たらあれはどう思うんですかね?」

大根「うーん……。今は配信じゃない?カラオケの映像って。だから、曲を入れるとランダムに映像を選んでしまうというか。でも、90年代の中頃までは、1曲ごとに全部そのカラオケの世界観に合うようなカラオケビデオをちゃんと作っていたから。」

山口「そうなんですか。あのカラオケ映像っていうのは、敢えてあの80年〜90年の時代感を模倣したんですか?」

大根「うん。……って言うとさ、俺が望んで作ったみたいになってるから(笑)。そもそもの成り立ちをちゃんと説明してくれる?(笑)」

山口「あ、まずね(笑)。「新宝島」のカラオケ映像っていうものを特典で作りたいなと思って、その内容も現代のものじゃなくて、ちょっと古い、懐かしいものをわざとらしく作りたいなっていうので、」

大根「ちょっとダサめのものをね。」

山口「そうそう。で、ちょっと大根監督にそういったセンスというか、一番分かりやすく理解してくれる監督さんはやっぱりって、『バクマン。』のつながりもあったので、大根監督にお願いしたら快く。」

大根「つーか、やってたもん俺、カラオケ!って。ノリノリですよ(笑)。何?ダサいもん作れば良いの?得意!って(笑)。」

山口「あはは!(笑) で、実際に作っていただいて。あれはカメラとかも当時のものを使ったんですよね。」

大根「そうですね。専門用語になっちゃいますけど、池上(通信機)のHDK-79Eというですね、80年〜90年代前半でよく使われていためっちゃ重いカメラ(笑)。」

山口「僕も出演しているんですけど、カメラチームと当日話をしたら、“黒いゴミ袋に入れて置きっぱなしになっていた”って言ってました(笑)。」

大根「機材会社の、捨てようとしてたやつ(笑)。だってもう使うやつ居ないんだもん!」

山口「それを引っぱり出してきたんですって(笑)。実際にその当時のものを使うんだなって。実際にその当時のものを使わないとあの感じって出ないですか?」

大根「出ない。だから今回撮って思ったのは、フィルムはもう使わなくなった8ミリとか16ミリとかっていうのはノスタルジーがあるじゃない。ビンテージ感というか、郷愁。かっこよくなる。でも、ビデオの古いやつって、何も役に立たないなっていう(笑)。でも俺はビデオの世代だから、フィルム育ちじゃないから、俺にとっては郷愁を感じた。」

山口「僕もね、あのビデオを見た時に、デジタルの劣化感は少し前まではダサいものだったけど、ひとまわり回って逆にかっこいいものに感じました。」

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大根「俺もアリなんじゃないかなって。」

山口「全然アリでしたよね。しかも今iPhoneアプリであるんですよね、あの画質になるやつが。だから、また見直され始めているんじゃないかなって。だから、作ったものはダサいつもりが、今の若者たちは逆にかっこよく感じるかもしれないです(笑)。」

大根「感じねーだろ!(笑) 今回の「新宝島」に関しては(笑)。」

山口「(爆笑)」

大根「だから、バクマンのテーマソングでカラオケっていうオーダーだったから、当時のカラオケビデオでよくあるのが、男女の設定。恋する男女の物語。これでいきたいなって思って。っていうことは、『バクマン。』のパロディ的なこともこの中で出来るなって。だから、漫画家を目指す若い男と、それを支える女が出会って……っていう、ちょっとした物語を考えまして。」

山口「やっぱりカラオケビデオを作るのにルールってあるんですか?カラオケ映像っぽい小道具とか。」

大根「そういうのはあんまりないけど、あんまりごちゃごちゃした編集は嫌われる。だって歌詞しか見ていないんだから、歌う人は。」

山口「そうですよね。」

大根「だから、後ろに流れる映像としてあんまり主張してくれるなと。また、今回登場してくれている女優の東加奈子っていう人が、美人なんだけど、ちょうど良い感じの美人というかね。あの時代感を表現できるという。」

山口「僕ね、この間ちょうどCMで見たんですよ、あの方を。そしたら、なんかカラオケ映像のときのあの人しか見たことがなかったから、なんか随分、清楚な人なんだなって思って。映像の中ではもう、こう……」

大根「ちょっとバブリーな感じでね(笑)。」

山口「これも本当にね、ひとつの遊びとして。映画を観て、そしてこの映像を観てもらえたりすると、大根監督の幅の広さというか……(笑)。」

大根「まず俺が言いたいのは、俺発信ではないですよってこと(笑)。ここは声を大にして言いたいですよ。でも楽しかった。初心に戻った、本当に。」

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山口「楽しかったですね。……あとね、僕ね、もう二度と演技したくないですね。」

大根「ははは!(笑)」

山口「全然演技できてない。」

大根「バーテンダー役として一郎先生にも登場してもらっていますが(笑)。」

山口「バーで立っているだけのシーンとかあるじゃないですか。」

大根「とはいえさ、ミュージシャンだし、フロントマンだし、ミュージックビデオとかを撮られることは多いわけじゃない。何らかで芝居をしているはずで、普通に出来るだろうなって。ミュージシャンって大抵演技も出来るから、経験上。でも、俺が見てきたミュージシャンの演技の中でも相当下のランク(笑)。」

山口「あはは!(笑) いや、ひどいっすよね……。」

大根「だからこそ面白かった!(笑) あれでサラっと上手くやられていたらちょっとイラッとしたかもしれない(笑)。」

山口「本当っすか……まぁ、出来ないっすね。でも、その出来ない具合とかも楽しんでいただけたらなって。」

大根「もう俺、1発で決めちゃったもん。ハイOK!って。もう絶対これ以上こいつは無理だって(笑)。」

山口「あはは!(笑) いや、でも本当に楽しかったですね。それも見ていただきながら、映画『バクマン。』も是非。まだ見ていない方は映画館に足を運んでいただけたらと思います。」


■サカナクション - 「新宝島」特典DVD ダイジェストムービー


そろそろ今回の授業も終了となりました。

山口「今回は、映画『バクマン。』の大根仁監督をお迎えしてお届けしてきましたが、今はまた電気グルーヴの映画もありますよね。あれは公開いつですか?」

大根「あれは12月の末ですね。電気グルーヴの25年間のヒストリーを追ったドキュメンタリー。いろんな人の証言とともに送る。」

山口「僕もちょっとコメントで。」

大根「出ていただいているんですよね。」

山口「電気グルーヴを知らない若い世代の人たちも観ていただいたら絶対面白いと思います。」

大根「面白いと思うよ。サカナクションファンとかは特に観て欲しい。」

山口「見てもらいたいですね。日本のテクノシーンを作ったと言っても過言ではないグループなので。」

大根「エレクトロや打ち込みミュージックを日本に浸透させたのは電気グルーヴの力は絶対大きいよね。」

山口「大きいと思います。知らないかたも絶対に楽しめる映画なので、そちらも楽しみにしていて欲しいと思います。……これでもう、僕が6ヶ月歌詞が書けなかったという責任はそろそろ果たせたかなという……(笑)。」

大根「そうね(笑)。もうそろそろ大丈夫(笑)。」

__ 映画『バクマン。』オフィシャルサイトは、コチラ


■ サカナクション 「新宝島」

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