ニューアルバム『sakanaction』が出来上がるまでの話
2013.03.11
サカナクション
「これは、僕たちのバンド名でもあり、明後日リリースする6枚目のアルバムタイトルでもあります。今日は、改めてこのアルバムが出来上がるまでの話をしていきたいと思っています。」
♪ ボイル / サカナクション
「聴いていただいたのは、サカナクションのニューアルバム『sakanaction』から「ボイル」という曲です。この曲は、今回のアルバムで歌詞を書くのに、ものすごく苦悩したことを書いたものになっています。この曲を聴くと、自分の机の上でパソコンに向かって文字を打って、歌詞を書いていることを、今でも思い浮かべますね……。」
「2011年に震災があり、2012年にアルバムを作っていく中で、何を歌ったらいいのか……、何を作っていったらいいのか……、ものすごく迷いました。「音楽を使って、安易に生徒の背中を押すことや、安易にネガティブな言葉を使ってみんなの不安を煽るようなことはできない」と、先生はすごく悩みました。先生の周りにいるミュージシャンに当時の話を聞くと、みんな "2012年はスランプに陥った" って言っていました。音楽業界だけじゃなく、ファッション業界でも、スランプっていうものが発生していたみたいですね。……正直、何か制作をして、"0を1にする" という仕事をしている中で、2012年にサクサク作り上げることができる人は、ちょっと信用できないと思ったりしました(笑)。なぜなら、あれだけのことを背負い込んで、2012年に何かを作るということは、本当に繊細で、難しいことだったのではないかと思うからです。だから、悩んでいた友人のミュージシャンを見て、先生は安心しましたね……「同じように、今を切り取ろうと必死になっているんだ」と思いました。それを経て、サカナクションは、次のアルバム『sakanaction』を作ることになったわけです。」
「幸い、サカナクションにはドラマやCMのタイアップソングや、NHKのサッカーテーマソングを作ったり、僕個人的には、SMAPさんへオリンピックテーマソングの提供をしたりと、次々と "表に向かって" 僕らの音楽を知らせるチャンスが訪れました。2012年から2013年にかけて、そういうことがサカナクションの周りで起きたことを踏まえて、アルバムをどういうものにしていこうか考えていきました。」
「シングルから僕らのことを知っていった人たちに、僕らの音楽はどう捉えられていくのか、正直、悩みました。テレビに出ていったり、CMやドラマの中で僕らの音楽が流れていく度に「本当はそういう世界に行くつもりで音楽を始めたわけではないのに……」と思ったりして、僕らを知ってもらうために、外に発信していくことを繰り返すのに、ちょっと疲れた時もありました。スタジオで制作する度に、メンバーも「こうすれば、サビは盛り上がるよね。」とか「この展開で大丈夫だよね?」とか、予定調和のような確認をしていく制作が続いたりして……。せっかく北海道から出てきて、音楽シーンに爪痕を残そうと必死になってやってきて、タイアップもたくさんもらって、やっと旬が来たという時に、そういうやり方でしか音楽を作れなくなっている状況に、先生は、メンバーや僕らの音楽を待ってくれている人たちに対して、申し訳ない気持ちになりました。」
「だから、このアルバムは、僕の家に集まって、高校の頃の放課後のように、僕の部屋で、みんなの好きな音楽を作ろう。シングルとアルバムの曲が混ざらなくてもいいじゃないか、と提案しました。今、僕たちが好きだと思う物でひとつのアルバムを作れば、それが今のサカナクションだし、それを聴いてもらって、その反応を見て、成長して行けば良いじゃないか……そういう気持ちで今回のアルバムを制作していきました。」
「このアルバムは『表裏一体』をテーマに作っていきました。シングルやタイアップソングが "表の曲" だとして、そうじゃない "裏の曲"、そして、"表裏一体化した曲" というものも、今回の制作で生み出すことができました。その曲は、ドラマの主題歌に抜擢されました。それが「ミュージック」です。」
♪ ミュージック / サカナクション
「「ミュージック」は、このアルバム制作を始めて、僕の部屋で最初に作った曲でした。"表" に向かってずっと曲を作っていくというところから、急に、楽曲制作の拠点を僕の部屋に移して、「好きなことやろうよ!」って始めたので、メンバーはみんな、急には気持ちを切り替えられませんでした。その結果、偶然にも、表に向かって発信していこうという気持ちと、好きなことをやろうっていう気持ちが、いい感じに混ざり合った曲になりました。「ミュージック」は『表裏一体』した、サカナクションの "表" も "裏" も混ざり合っている曲なので、そういう風に聴いてもらえると、先生は嬉しいです。」
「僕たちが作っている音楽は、今の僕たちがどんなことが好きなのか、どんな音を鳴らしたいのかを、純粋に形にしたものです。よく音楽評論家は、"ダンスミュージックと歌モノをひとつに混ぜ合わせるというのが、サカナクションらしさだ" と言ってくれますが、生徒のみんなも、Twitterをやっていたら立派な批評家だから(笑)、みんなに批評してもらえたらと思っています。」
さて、そろそろ、今回の授業も終わりの時間です。
「先生は新しいアルバムも作り終えて、もう……明後日、発売ですよ。サカナクションは、次のアルバム、次のシングルと、また新しい活動をしていくことになります。……音楽を作ることに終わりも無いしね。今回、制作をやってみて思ったけど、締め切りが完成だね(笑)。これからまた、新しいこともチャレンジしていくし、2013年、2014年と……、ずっと、できる限り、サカナクションは音楽を作っていきたいと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。」
そして、ここで発表します!
来週、3月18日(月) に、山口一郎先生が「生放送教室」に登場します!
夜10時から2時間まるまる、ニューアルバム『sakanaction』についての授業をお届けしますので、生徒の皆さんは、ニューアルバムをしっかり聴き込んでおくように!
「それでは、来週、生放送教室でお会いしましょう!」
M-1 ボイル / サカナクション
M-2 ミュージック / サカナクション