■ イヤイヤイヤ…
「ミュージック」のジャケットデカすぎるでしょ…。え何、1メートル?何があった!!落下したのか!?
キューン25
男/16/兵庫県
「これは、現在発売中の、サカナクションのニューシングル「ミュージック」の初回限定盤のジャケットの話ですね。このジャケット、デカかったでしょ?手に入れた方は、感じているとは思いますが、今回は縦95.5cm×横67.5cmの超大型ポスター使用のジャケットなんですね。ただ、そのままだと、とんでもないCDのサイズになってしまうので、このジャケットは10回折り畳んだ状態で封入されていて、買うまではそのアートワークの一面しか見れない仕組みになっています。複雑なんですね。」
今回は、先週リリースになった、サカナクションのニューシングル「ミュージック」のCDジャケットをもとにした、"ジャケット" についての授業です。いつも山口先生は、ミュージシャンが音楽を作って皆さんの手に届くまでの間に、たくさんの人が関わっていて、いろんな人の想いが込められているという話をしていますが、ジャケットもそのひとつです。
「ミュージシャンというのは音楽を作るのが職業ですが、音楽を作る上で必要なものというのは、ジャケットを作ることもそうですし、ミュージックビデオを作ることもそう。音楽に関連するもの全てに表れるのではないかと、僕は感じています。だから、ジャケットも僕らの音楽の一部だったりするわけです。サカナクションのジャケットのアートワークにおいては、チームワークで作り上げています。それは例えば、僕らが音楽に何年もかけてきた情熱を、デザイナーの方はデザインすることに10年も20年も人生をかけてきているわけですから、その人たちと一緒にその情熱をコラボレーションしていくというのがサカナクションのアートワークスタイルです。それは、アートワークだけではなく、ライブもそうですし、ミュージックビデオもそうです。サカナクションはチームで動いているのが、基本になっています。」
そんなチーム・サカナクションによる、今回の「ミュージック」のジャケットですが、実は山口先生、……今回のミュージックのジャケットの完成パッケージを、まだ見ていないのだとか!さらに、どういうものが作られていったかという経緯も(最初のミーティングの時以降)、一切関与しなかったそうです。ここまでアートワークに関与しない制作というのは、サカナクション史上、初の試みだったのだそうなのです。
生徒の皆さんは、音楽系サイトで、こんな記事を見ませんでしたか?
歌詞の完成に時間がかかったため、あえて「ミュージック」の歌詞がないサウンドから受けたイメージで、即興制を重視して、デザイナーのkamikeneが作り上げた二つのグラフィックからアートワークは成立している。
……これは、どういうことなんでしょうか?
「CDの発売には、入稿というのがあって、発売の1ヶ月前くらいには、歌詞やジャケットが出来上がっていないと間に合わないんですね。デザイナーのkamikene(カミケネ)さんには、ギリギリまで待ってもらったんですけど、僕が歌詞を作り上げることができなかったので、「歌詞が無い状態のミュージックから、即興でデザインしてください!」ってお願いしたんです。そこで僕は、せっかくの機会だから、みんなと同じように、CDを手に入れたときに初めてジャケットを見るっていうことを体験してみたいという話をしました。今回は、大きいサイズのものにしようっていう話には立ち会ったんですけど、内容に関しては一切関わっていないので、僕もこれから初めてそのCDを見てみたいと思います。」
(山口先生の手元に、「ミュージック」のCDが届く)
「おおー!今、僕の手元に、皆さんはもう手にしているであろう、「ミュージック」があります。なるほど、こういう形なんですね。"フジテレビ系ドラマ ドラマチック・サンデー『dinner』主題歌" って書かれたシールが貼ってありますね。こういうシールの色や形をどうするかという細かいところも、話し合ったりするんですよ。まあ、今回僕はノータッチですけど。……それでは、開けます。」
「はい、はい……。あ、紙質までの話はしましたね。そこまでは話し合いに参加しました。あれ?これ、CDどこに入っているんだ?……あ、なるほどね!はい、はい……CD、ありました。そして、チケット先行予約の紙も入っていましたね。ビクターの戦略でねじ込んできたやつ(笑) よし、じゃあこれを開いてみましょう。」
「……デカっ!へぇ〜……。うわぁ!これ、すごい……、こうなってるんだ。いい感じ。コレを手にした人は衝撃でしょうね。これ、神村さんとお話がしたいですね。」
ということで、なんと今回の授業では、このジャケットのデザインを手がけたkamikeneさんに、電話で直接、話を伺っていきたいと思います!デザイナーのkamikene (hatos, normalization) さんは、サカナクション先生のセカンド・アルバム『NIGHT FISHING』以降のシングルを含めたCDのジャケット、そしてアーチストグッズもすべてデザインしている方です。
kamikene (hatos, normalization)
山 口「もしもし!」
kamikene「もしもーし。」
山 口「お疲れさまです(笑)。」
kamikene「はは、お疲れさまです(笑)。」
山 口「すみません、突然こんな形で出演してもらっちゃって。」
kamikene「いえ。あの……(CDを) 開いているところ、聞こえてました。」
山 口「聞こえてました?(笑) 今、初めて見ました!」
kamikene「どうでした?」
山 口「びっくり。やっぱり、インパクトありますね。」
kamikene「面白いよね、開いていく感じがね。」
山 口「これ、裏面と表面があるじゃないですか。どっちが表面って扱いになりますか?あまり概念は無いですか?」
kamikene「うーん……、ただ、どっちを先に描いたかっていうと、ジャケットがある方ですね。何日かヘッドフォンをして、ひたすら「ミュージック」をリピートしながら、そのビートに乗っかって、頭をなるだけ空っぽにして、素材を増やして行く感じで描いていきました。それを、描いていながら、描くことに集中するというよりは、なんか、頭の中で髪の毛がグイグイ伸びてくる映像みたいなイメージが入ってきちゃって、理由は全然良く分かんないんだけど。それが面白いな〜と思って、ジャケット側のデザインを描き終えたら、裏面はまた曲を聴きながら、髪の毛が伸びて行く感じのイメージを描いてみようと思って描いたって感じですね。」
山 口「実は、歌詞の中にも髪の毛を扱う部分があったりして、そういうのが繋がってきているなって思いました。」
kamikene「俺も、後から歌詞を見せてもらって、結構ジャケットの写真から感じる雰囲気とか、描いた2枚の絵とか、なんかよくわかんないけどリンクしてるなっていうのを感じて……言葉にならない曖昧なところ、音から感じて、曖昧に感じている部分の的確さを感じて面白いな〜と思いましたね。」
山 口「実は、今回この「ミュージック」の歌詞を書くときにすごく意識していたのが、"無意識" だったんですよ。考えて書かないこと。音楽から引き出される言葉、こぼれてくる言葉を繋ぎ合わせていってストーリーを作って行くって言うことにチャレンジしたので、だから、すごく時間がかかったんですよね。そういった、音から感じた部分で繋がったことが、言葉とイラストにあったのかもしれないですね。」
kamikene「そうだね。その "無意識" っていうのは、俺もすごい考えて、そこを引き出して描きたいなって思っていました。」
山 口「神村さん、セカンド・アルバムから今作まで、グッズも含めてずっとデザインをやって下さってるじゃないですか。今日ね、久々に電車に乗ったんですよ。そしたら、多分、学生だと思うんですけど、リュックにサカナクションのストラップつけている子がいて、普通にビックリしたというか、感動しましたね。」
kamikene「そういうの嬉しいよね。俺もこの間、よく食べに行ってる、近くの焼き肉屋があるんだけど、そこの店員の彼が、俺がサカナクションのTシャツきてたから、「サカナクション好きなんですか?」って聞いてきて、「昨日ライブ行ったんですよ!すげー感動して、涙が出て……」って話してて。あと、たまに、iPhoneケースをつけている子をチラっと見かけて「おっ!」って思ったり(笑)」
山 口「嬉しいですね……。しかも、神村さん、サカナクションのTシャツ着て焼き肉、食べに行ったんですね(笑) 自分がデザインしたTシャツじゃないですか(笑)」
kamikene「そうそう(笑) 普通に着てるから。」
山 口「それも、嬉しいですけど(笑)」
山 口「今年もまた新しい作品がリリースされるだろうし、ツアーも始まるのでグッズとかに関しても、またいろいろとお話しすることが増えていくと思うんですけど、僕らも音楽を作っていくし、そのなかで葛藤するところも、神村さんには話してきているじゃないですか。きっと神村さんも、僕らとは違うかもしれないけど、サカナクションと一緒に作品を作っていく上で、いろんな葛藤があると思うんですけど、負けたら終わりだなって思うんで(笑)、葛藤しながら、もがきながら、これからも一緒にやっていけたらなって思っています。これからもよろしくお願いします。」
kamikene「よろしくお願いします。あの……ライブ、楽しみにしてます。」
山 口「はい、頑張ります!本当に、今日はありがとうございました。」
さあ今回は、ジャケットについての授業ということで、サカナクションのCDジャケットを数多く手掛けるデザイナーのkamikeneさんに電話を繋ぎましたが、電話の後、山口先生は、kamikeneさんと一緒に作品を作るというなかで、たくさんの葛藤もあり、お互いの想いがうまく通じ合わない時期もあった、と話してくれました。
「神村さんとは、一緒に戦ってきたというか、一緒に作ってきた仲間なので、メンバーみたいなものなんです。元々、僕がkamikeneさんがやっていた『+81』っていう雑誌を見て、そのデザインが好きで、一緒にお仕事がしたいってアプローチしたら引き受けてくれたっていう始まりだったんです。そもそも、僕たちが戦っているフィールドっていうのは、俗にいうポップスで、僕たちは『シンシロ』っていうアルバムから、"J-POPとかに対してアプローチしていこう" と意識を切り替えてやっていきました。神村さんは、そことはかけ離れた、もっと抽象的で芸術的な表現をする世界の方だったので、僕らの姿勢が神村さんには理解できなかった部分もあったし、僕らの挑戦を神村さんに分かって欲しいって思った時期も、ずっとあったんです。そんな葛藤もありながら、でも、お互いのことを理解しつつ、僕らがなぜクラブ・ミュージックとJ-POPを繋ぎ合わせて表現しようとしているかっていうのを、神村さんにはたくさん話したし、神村さんも "今のサカナクションじゃなくて、未来のサカナクションを見てデザインしていくことがストーリーになるんだ" って言ってくれて、本当の意味で戦友っていうか、常に話し合っている仲間なんです。ジャケットひとつにもこういう人間のドラマがあるっていうのを、皆さんに感じてもらえたらと思います。」
M ミュージック / サカナクション