「サカナクション2年ぶりの有観客ライブ、その感想。」

SCHOOL OF LOCK!

AuDeeではサングラスな一郎先生。


現在は [AuDee]で、絶賛修行中のサカナLOCKS!。
今回は、12月11日からスタートしたサカナクションのライブツアー『SAKANAQUARIUM アダプト TOUR』、そのツアーの初日&2日目の公演を終えたばかりの一郎先生が、2年ぶりとなったこの有観客ライブを振り返っていきます。

※こちらは、12月14日(火)24:00からSCHOOL OF LOCK!のYouTubeチャンネルで行った、深夜の公開授業の模様を編集したものです。


山口「いやー、帰ってきましたよ東京に!」

職員(カヲル先生)「何日くらい行ってたの?名古屋に。」

山口「えっとね……今回はアリーナツアーの初日だったので、テクリハっていって、テクニカルリハーサル……ステージにメンバーがいない状態で、スタジオで録音したリハーサル音源を使用して照明とか演出のチェックをするんですよ。僕らは一番良い席で見ていて、ここでこう光るんだとか、ここでこういう動きをするんだとか、そういうのをチェックするテクリハっていうのがあるんです。それをやって、翌日ゲネプロっていって、衣装も着て本番通りの時間でやるっていう。」

職員「それを木・金ってやったんだ。」

山口「そう。で、金曜日にゲネプロやる前につるっと通すんですよ、リハーサルで。僕ら今回役者さんを使ったりして、舞台とライブが一緒にあるようなものだから、カメラリハもあるんですよ。カメリハを兼ねた演奏リハーサルがあるんです。それをやってからゲネプロでもう1回通すんですよ。1日2回通す。そして初日を迎えて、2日目ライブをやって。翌日は地方プロモーションってやつ。」

職員「土・日でライブをやって、月曜日の話ね。」

山口「そう、月曜日。地方プロモーションって、コロナ禍全くなかったんですよ。僕らは地方に行ってないから。それに、ラジオ局やテレビ局もコロナでゲストを呼んでなかったんですよ。僕らが行くのも結構久しぶりな感じなんですね。だから、みんなよそよそしいっていうか(笑)。久しぶりにゲストきましたって感じだったからめちゃめちゃ面白かったですよ。名古屋はCBCとか、メーテレとか、中日新聞とか、ZIP-FMとかを回って、話してきたんですよ。そういうのは、どちらかというとまだアルバム3枚目くらいでこれからホールツアーを回ってアリーナに行くぞっていう気持ちのミュージシャンがやるようなプロモーション方法なんですよ。」

職員「全国行脚とかね。」

山口「僕らもそういう時期があって、次の取材に間に合うためにエレベーターを開けてプロモーターが待ってるみたいな。久々にそれをやったんで、結構面白かったし、そういうことをやらなきゃだめだなって思いましたね。こういう時だからこそ。コロナで感じたこととかを行って話していかないと。あと、現地の音楽を愛しているメディアの人たちとコミュニケーションをとって現状をシェアしていくことっていうのをやっていかなきゃだめだなと思いましたね。」

職員「そっか。」

山口「で、僕(中日)ドラゴンズファンだから、向こうは本拠地じゃないですか。だから思う存分ドラゴンズの話をしてきたんですよ。それは昨日の話ね。月曜日の話。で、今日とある番組の収録を名古屋でやってきたんですよ。僕の大好きな人と対談をして、今日戻ってきたと。……超ハード。」

職員「すごいねー。」

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山口「まず、久々のライブですよ。」

職員「そうだよ!どうでした?」

山口「最後にやったのが約2年前で、その時はもうマスクしてたんですよ。最後らへんは。声は出していたし、踊っていたけど、マスクをしている人がちらほらいるなって感じだったんですね。今回は当たり前ですけど、全員マスクで声を出しちゃいけない。手拍子のみ。そういうライブは初めてだったんですけど、でもね……何も変わらなかったね。変わらない。もちろん、声を出せない、歌えないっていうフラストレーションはあったけど、音楽を体験するっていうことはずっと残るだろうなって思ったし、ここで得た感覚は当時自分たちが求めていたものとなんら変わりはないと思いましたね。」

職員「そっかー。」

山口「ただ、イベンターの人に話を聞いたんですよ。コロナ禍でツアーを始めて、今頃2クール目のツアーを回っているミュージシャンもいるらしくて。結構動員は減ってるって言ってましたね。1回目のツアーを観て、こういう感じならいいやって、2クール目のツアーに行かない人が増えてるって。つまり、騒げないから、こういうライブだったら楽しめないから行かないっていう人が増えてきていて、コロナ禍で2クール目のミュージシャンとかは苦しい思いをしている人たちもいるって言ってました。声を出して騒げたり、密集する楽しさみたいなものがあるじゃないですか、解放っていう部分で。その解放ができないからライブを行かないっていう人が増えていると。あと、若者は返ってきているらしいんですよ。お客さんが若いミュージシャンのファンはライブ会場に来ているけど、就職した人とか、家庭がある人とか、そういう人たちのファンが多いミュージシャンは結構動員が減ってるって言っていましたね。」

職員「そうなんだ。」

山口「うん。それに、正直ミュージシャン側の裏話をすると、演出にかけられるお金は減るんですよ。なんでかっていうと、スタンディングじゃなくて、着席での動員数100%だから。」

職員「全然違うね。」

山口「全然違う。スタンディングと比べると半分以下になるかな。だから、お客さんが少ないんですよ。っていうことは、演出にお金をかけたり、スピーカーにお金をかけたりできないと。かつ、チケットの値段は上がるんですよ。だから今まで通りのライブを求めている人からすると、今まで通り楽しめない上に、チケットも高い。クオリティ……音楽のクオリティじゃなくて、観せるっていう部分でのクオリティも下がっていると。そういった部分で不利になっているんですよね。僕らはそれを想像して、今回は演出にアダプトタワーっていうでっかいセットを持って行ったり、役者さんを入れて音楽と舞台を融合させるとか、コロナ禍でも楽しめるアリーナライブっていうのを想定してスピーカーを足したりとか、いろいろやったんだけど……正直、採算は合わないね。だから、ちゃんとビジネスをしようとしてこの時期ライブをやろうとすると、クオリティは担保できない。完璧を見せようとしたら無理ですね。だから、違うものを体験してもらうっていう形にシフトしてライブを構成していかないと結構厳しいんじゃないかなって気はするし、このままコロナの状況が続いていくと、これが当たり前になるわけじゃないですか。これがライブだっていう認識になっていった時に、完全なる音楽業界の衰退がくるなって気がする。動員は一方的に減るから。で、若い子たちはこのスタイルのライブが当たり前だって思うようになるから。あと、よく議論になるけど、音楽って清廉潔白な人が生み出したものにみんなが感動しているっていう誤解があるじゃないですか。ミュージシャンなんて、音楽でご飯を食べていこうって思うくらいだから、正直なことをいうとろくな大人じゃないんですよ(笑)。」

職員「ふふふ(笑)。いわゆる普通の道があるとしたら、そこからはずれてるだろうなっていうね。」

山口「そう。僕だって頭が良くて東大に行ける人間だったら音楽やってないですからね。そうじゃなくて、文化が好きで、みんなが感動するものを追い求めて人とは違うことを探っていったからこそ今ミュージシャンをやっているわけだから、清廉潔白なものだけに感動してきたわけじゃないんですよね。世の中はそれを求めているけど、そうじゃないんですよ。だから、いろんな意味で非常に難しい時代に突入したなと。お客さんは清廉潔白を求めているし、我々はそういう部分を見せないようにこれからも発信していかなきゃいけないっていう。だから、これからライブっていうものの価値も変化していくし、音楽のリリースっていう部分に関しても変化していくんじゃないかなって思いました。当たり前ですけど、このコロナで変革期が訪れているなっていうのはステージの上に立って感じました。ただ、同じこの時代に生まれて、同じ音楽で感動し合えているっていうことの共有っていう部分でのライブっていうものは本当に素晴らしいと思う。それは絶対に残っていくし、僕らはその感動を残さなきゃいけないし、発明していかなきゃいけないなって感じていますね。」

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職員「久々の有観客でお客さんの前に立って演奏してみて、どんな思いでした?」

山口「オンラインライブをやってきたじゃないですか。オンラインライブでメンバーとは演奏をしてきていたし、音を合わせるっていう行為はやってきたんですよ。それに対してのオンライン上でのリアクションは受けてきていたから、特にプレッシャーみたいなものはなかったんですけど……異様だったんですよ、始まる前。普通、開演前はざわざわしているじゃないですか。袖にいると、誰も来ていないんじゃないかなって思うんですよ。ちょっと覗くとみんないるんだけど、みんな本当にルールをしっかり守って来てくれていたので。あと、ステージに出ていくと、普通うわーっていう歓声があったんですよ。それもないんです。拍手だけですから。だから、感じてくれているっていう雰囲気はありました。声を発して自分たちに対する感動を伝えるんじゃなくて、手拍子で伝えてくれるっていうのは、また違う印象を受ける。その違いは、僕は結構良かったですね。」

職員「良かったんだね。」

山口「みんな沁みてるんですよ。発散するんじゃなくて、沁みてるっていう状況があるから。」

職員「お客さんも2年ぶりなわけでしょ?サカナクションを生で観ているのは。」

山口「うん。」

職員「Twitterで見た、一郎先生が思わず泣いてしまったっていうのはどういうタイミングだったんですか?」

山口「初日のアンコールの最後の曲の時に、MCでその時感じていることを話したんですよ。その後ある曲を演奏して歌うんですけど、MCを終えて歌ってる時に感情が高まっちゃってうるっときちゃったんですよね。そしたら、最前列のカップルが、その曲を僕が歌った瞬間に、同じタイミングでサカナクションの骨ロゴタオルで顔を隠して泣き出しちゃったんですよ。それに僕もぐーっと引っ張られちゃって、一気にだーって。でも、バンド演奏は始まっちゃってるから、止められないじゃないですか。だからそのままサイレントで歌わずに演奏を続けていたんですよ。そうすると今までだったら、お客さんが歌ってくれたり、『がんばれー!』って言ってくれたりするんだけど、声を出せないから、手拍子でみんな支えてくれて。」

職員「わー……」

山口「またこれについての話がちょっとあるんですよ。」

職員「何、何?」

山口「2年ぶりのライブですよ。初日を迎えて、アンコールで感極まっちゃって泣いちゃったわけです。もちろんカメラにばっちり抜かれていて、モニターにも表情が出ちゃっているわけですよ。恥ずかしいなって思いながら僕は歌っていたんですよ。で、僕らが所属しているメーカーは、何かそういうネタがあると、何かとパブリシティに使いたがる。」

職員「これはトピックスだと。」

山口「そう。僕らの今回のライブ初日の映像も、ワイドショーに出すよって言われていたんですよ。ライブ映像を撮って切り出すと言っていたから、絶対に泣いているのが使われるなって思って。嫌だなって思いながらも、これが今の自分の本当の感じだし、いいやって思っていたんですよ。……そしたら、使わなかったの、山上さん(ビクターのサカナクション担当者)。」

職員「使わなかったんだ。」

山口「僕は絶対に使うと思ったから、Twitterで『泣いちゃった』ってつぶやいたんですよ。」





職員「あれ、振りだったんだ!?」

山口「振りだったんです!僕的には、ビクターが翌日の朝、僕が泣いている映像をバーンと出すものだと思って、振りで『泣いちゃった』っていうある種の予告を出したんですよ。」

職員「はははは!(笑) あれ予告だったんだ!」

山口「予告だったんですよ!そしたら、一切泣いてるの使われてないの。ちょちょちょ、ちょっと山上さんと。どうしたの、今までの僕の美味しい失態を全部朝のワイドとかのネタに使ってきた下世話な山上さんが、なぜこの2年ぶりのライブの初日のアンコールで感極まって歌えずに、サイレントで演奏をしている楽曲の一番良い映像ですよ。それをなぜ使わないんだと。」

職員「ふふ(笑)」

山口「それを、昨日の夜、名古屋のくるみっていうすごい美味しいお店でご飯食べながら、懇々となぜ使わなかったんだっていう議論をして。僕は信用して……信用してっていうのもなんだけど(笑)。絶対使うと思っていたのに、使わなかったのはなんでなのかなって思って聞いたら……やっぱり愛なんですよ。」

職員「……何、急に良い話?(笑)」

山口「ふふふ(笑)。愛なんですよ。やはり2年ぶりにライブをやってね、本当に純粋に流してしまった涙を、朝のワイドで流すことによって汚したくないと。その涙を商品として汚したくないと。」

職員「あー。そういう意見なんだ。そんなピュアな気持ちを吐露した山上さんに対して、一郎先生は何て言ったんですか?」

山口「これから使い所がないなら、僕がティザー映像で使いますって(笑)。」

職員「これからもツアーあるしね(笑)。」

山口「そう(笑)。あとね、正直な話しても良いですか?やっぱりチケットが売れないんですよ。売れてるんですけど、キャパシティを100パーセントに広げたんですよ、今回。そうするとやっぱり余りますね。遠征ができないから。」

職員「そうだよね。遠征ができないとか、行きたいけど行けない職業の方とか、まだその気持ちになれない人とかが絶対いるんだよね。」

山口「そうそう。僕らも大手を振って宣伝できないんですよね。ライブやってるからみんな来てくださいって言いにくいところもあるわけ。だって、それぞれみんな事情があるし、仕事の事情だけじゃなくて、経済的な事情もあるじゃないですか。だから、思いっきりおすすめできない気持ちもあって、手詰まりになってるなって感じはありますね。」

職員「そうだね。」

山口「ただね、別にチケットを売りたくて今こんな話をしているんじゃなくて、本当に今回のライブはすごいライブなんですよ。スピーカーも、コロナ禍のライブを楽しむ環境に合わせた新しいスピーカーシステムを考えて、会場ごとに合わせたスピーカーシステムを導入しているし、大きなタワーを使った、舞台とライブを融合させたちょっと特殊なライブなんですよ。僕らもどんな感動があるかが分からないままスタートしているから、これは観ておいた方がいいなって。このライブは今しかできないんですよね。いつも通りに戻ってきたら、こういうことをやる必要がないから。今まで通りのライブをやればいいからね。だから難しいなと思う。」

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山口「前も僕サカナLOCKS!で言っていたけど、やっぱり、音楽でビジネスをするっていうこと事態、何か矛盾しているところがあるんですよね。だって、音楽を作っている時には、売れる曲を作ろうって思って作っていないわけですから。初期衝動として、自分の感情を形にしているだけじゃないですか。それを自ら商品化して、周りが商品にしてビジネスにしていくのって、もちろん音楽を続けていく上ではすごく必要だけど、それを必要以上にやっていませんか?っていう……そういう疑問も持っているわけですよ。このコロナでいろんなことを見つめ直すタイミングがきているなって。」

職員「ずっと言ってはいたけどね、一郎先生。でも、実際ライブのステージに立って体験してよりそう思ったんでしょうね。」

山口「思う。だから、新しいシステムのアップデートがロックバンドのアップデートになるんじゃないかと思ってやってきたんですけど、やっとステージに立てたので、また新しくやっていこうと思っています。」


ということで、今回はここまで。
次回の配信では、生徒の悩みにLINEコールを使って直接話しながら答えていったもようをお送りします。次回の更新は、12月24日の予定です。お楽しみに!

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