10月末から、山口一郎先生が『 全国音楽教育取決委員会 』のぶどう狩りに出張している間に、山口先生所有のDanelectro 12弦ギターをかけた宿題が出ていました。それは……
というもの。今日は、提出された生徒の宿題を紹介しながら、プレゼントの当選者を発表したいと思います。
山口「この宿題が、難しいと大好評!(笑) サカナLOCKS!の生徒たちの間で大評判ですよ。でも、僕の12弦ギターをもらえる宿題なんですよ。そんなに簡単でどうするんだと。こういう難しい宿題に果敢に攻め込んで来る生徒にこのギターを贈りたい。先生が全く使わなかった(笑)、このDanelectroの12弦ギター……(ギターを撫でながら)良い色でしょう? 見て下さいよこれ……ホコリかぶって(笑)。なんでこのギターをあんまり使わなかったかというと、チューニングが面倒くさいっていうね(笑)。12弦あるっていうことを、生徒諸君は忘れちゃいけないよ。でも、レコーディングで使ったりしましたよ。……あ!「ミュージック」でモッチ(岩寺先生のことです)が使った。その演奏は採用しなかったけど(笑)。しかし生徒諸君、これは先生が買って家にあったギターだというのは間違いないわけですからね。このプレゼントをかけての宿題採点、いきますよ!」
「改めて見ると、これはすごく難しい宿題ですね。音楽の必要性を答えるだけでもすごく難しいのに、それを更に、短歌にするなんて……。これは本当に難しいし、学校の授業でやったりすると面白いんじゃないですかね。そのくらいの難易度ですね。」
それでは、生徒から届いた短歌を見ていきましょう。
弟と 一緒に踊る ミュージック 家族を繋ぐ 大切なもの
女/13/埼玉県
「ほぉ〜。弟と一緒に音楽で踊って、それをお父さんとお母さんが「こいつら、音楽が好きなんだなぁ〜」って見ていて、心温まる感じ。音楽で家族がひとつになるということを短歌にしたわけですね。景色が見えるし、夢見る乙女は思い出す。の音楽の必要性が短歌になっているわけですね。」
★山口先生の評価は……80点!
歌詞の意味 わかったようで わからない ぼんやり見える 曲の景色
女/18/福岡県
「素晴らしい! これは何が素晴らしいかって、くしょみは、歌詞の意味が分からないものを音楽の中から排除するわけではなく、分からなくても見えてくる曲の景色、音楽のグルーヴやリズムで感じる物が自分の中の本質なんじゃないか。音楽はそういうものなんじゃないかということを言っているわけですね。これは、音楽の本質的な部分を捉えていてすごく良いと思います。」
★山口先生の評価は……80点!
「みんな、すごいね! すごいよ〜。次。」
音の顔 それは自分の顔だから 自分探しに 必要な友
男/13/広島県
「素晴らしいですね、この句も。まず、音を、顔、自分の顔、自分探しに必要な友達に置き換えているっていうところがすごいですね。面白いと思いますね。音楽を聴くことで自分が構築されるし、自分探しのパートナーともしている。日常の中に音楽は深く入り込んでいるんだということを短歌にしているんですね。リズムも良いし、段階も良いよね。13才ですよ……ビックリしちゃうね。僕、13才の頃は釣りしかしてなかったですよ(笑)。」
★山口先生の評価……90点!
死にたいと つぶやいた夜 ラジオから ふと聴こえたのは amazarashi
男/18/神奈川県
「う〜ん、リアルですね。本当に死にたいかどうかは分からないけど、彼がそんな気分になってそうつぶやいてしまったら、ラジオから聴こえたのはamazarashiの曲だったと。それで死にたい気持ちがどうなったのか、結果は書いてないけど、その感情のときに聴こえてきたamazarashiの曲で自分の感情が動いたんだと。つまり、自分の心を動かすのはいつも音楽だったんだということをこの句で歌ったわけですね。情景描写が写真のようですね。すごいと思う。素晴らしいと思う。共感する人も多いんじゃないですかね。"現代短歌"、みたいな感じ。」
★山口先生の評価……90点!
喜びも 嘘も涙も 何もかも 映し出せるよ この鏡なら
女/13/愛知県
「え……? あ、ラジオネームが北海道で、住んでいるのは愛知県ね。OKOK。うん、綺麗だね。全部を映し出せる鏡だと、音楽を鏡に置き換えているわけですね。音楽だったら、全部の感情を表現できるし、表現されていると彼女は思っているわけですよね。この子も13歳ですよね。すごいね〜……。先生、13歳は釣りしかしてなかったよ(笑)。何回も言うけど(笑)。でも、13歳の子が思う悲しみとか喜びってどんなものなんだろう。先生の今の喜びは、休みがあるとか、ツアーが決まったとか、ありふれたというか……そういうものだけど、13歳の子の喜びってどんなものだろう? 好きな子とフォークダンスで手を繋いだりとかかな?(笑) そういうところが気になるな〜。好きです、この句も。」
★山口先生の評価は……80点!
という感じで、高得点の生徒が多かったですが、そろそろ山口先生の私物、12弦ギターの当選者を決めたいと思います。
「たっくさん送られてきたんだけど、この難しい宿題でさえ、生徒たちは12弦ギターという甘い蜜に吸い寄せられたミツバチのように(笑)、集まってたくさん応募してくれたんですね。本当にありがとうございます。この中から決めたいと思います。……どれにしようかな〜。どれも良かったんだよな……。それでは発表します!12弦ギターが当選した短歌はこちら……!
死にたいと つぶやいた夜 ラジオから ふと聴こえたのは amazarashi
男/18/神奈川県
「……ブルに12弦ギターをプレゼントしたいと思います! おめでとう!」
「大賞に決めた理由は、音楽の必要性っていうと、もっと大きな目線で社会的に音楽を見たり、広い範囲で音楽を歌わないといけないのかと思いがちだけど、彼は自分の日常の中に音楽が落ちてきたときのことを短歌にしたんですよ。それって、自分個人的な音楽の必要性を短歌にしているんだけど、それが誰にでも共感できるものになっているわけです。それはすごく説得力があるし、リアリティを感じるわけです。これは、僕が音楽の必要性を短歌にしてくれと言ったときのひとつの意味合いをちゃんと担っていて、それを理解した上で表現したのではないかと思ったので、今回の大賞に選びました。……でも、amazarashiが好きな彼は12弦ギターを使うことは無いね(笑)。ジャンル的にね。でも、使わなくてもオークションで売れば結構高く売れるんじゃないかな。一応、Appleのステッカーも貼ってあるのでね。トム・ヨークの真似をして貼り始めたんですけどね。使わなくなったらオークションで売って下さい(笑)。」
ということで今回の授業も終わりの時間です。
「先生、ぶどう狩りの出張に行っている間にいろいろと考えたんですよ。音楽って何なんだろうなと。自分にとっての音楽って何だろうって、当たり前のことですけど……。生徒諸君は音楽を受け取る側だし、いろんな音楽が世の中にあることも分かっているし、流行みたいなものも捉えていると思うんだけど、先生は音楽が日常なんです。それしか無いわけですよ。だけど、自分との付き合いっていうのも一生あるわけです。音楽を作っていく自分とも付き合っていかなければならないという……。そのバランスが取れなくなっていたんです。だから、先生は今Twitterもやっていないんですよ。それは、自分とちゃんと向き合いたいと思ったからなんです。自分が音楽や音楽を聴く人たちにとってどんな存在なのか、どういう影響を与えて行くのか、そこを見つめ直したいと思って、自分の心も体も理解して、再スタートを切りたいと思っています。やっぱり、テレビとか出ていると思っている以上にストレスがかかっていたんですね、自分の心と体に。先生、蕁麻疹が出たのなんて初めてですよ。全身に、顔にも……まだ治っていないけど。でも、生徒諸君の今日の短歌を見て、たくさん宿題が送られてきているのを見て、ひょっとしたら僕以上にみんなは音楽のことが好きなんじゃないかと思いました。僕が音楽を好きって言う以上に、みんなは音楽のことを信頼しているし、作り手の僕よりも、みんなが音楽を信頼しているんじゃないかと思って、僕ももう一度音楽について考え直したいと思っています。活動休止とか、解散とかそういうことではないんです。……実際一年くらい休みたいけど(笑)。ここで潰れてしまったら、これ以上のところまで行けないというのも分かっているんですね。そもそも、僕らはそんなに有名になるべきバンドではなかったんですよ。でも、そうなってしまった上で潰れかけているんですね。でも、ここを乗り越えることもできるし、脱皮もできると思うので。みんなはそんなに心配してないと思うけど(笑)、心配しているのはオカンくらいだな。生徒諸君、いつも励まされています。ありがとうございます。」