山口「今回は、いよいよですね……来週6月19日にリリースになるサカナクションのニューアルバム『834.194』を、(サカナLOCKS!の)短い時間で全解剖はちょっと無理なので、半解剖……半分解剖していきたいと思います!」
「まずは、先日、サカナLOCKS!で「忘れられないの」のフルコーラスを解禁したんですけど、その感想がたくさんきているので紹介したいと思います。」
★忘れられないの
「忘れられないの」素敵でした!放送の後も繰り返し聴いています。
幕張のライブで聴いた時は、もうとにかく楽しくて興奮している最中だったので、爽やかに踊れる楽しい曲だったなぁ!と思っていたのですが、今回のオンエアで印象が変わりました。
明るいけれど、ちょっと寂しげなメロディーを感じて胸がいっぱいになって、涙が出ました。上京して郷愁を感じるこんな気持ちになるんでしょうか…?
まだ聴いてない曲がいくつもあって楽しみです!今週の講義もしっかり聴きます!
女性/18歳/山梨県
「おー。上京の郷愁ということですけど、この曲が生まれるきっかけは、ユーミン(松任谷由実)さんとの出会いがあったんですね。ユーミンさんが、ポップスとは何かっていうのを僕に教えてくれたんですよ。「ポップスっていうのは、横並びじゃない。今、理解されることでもなく、遥か遠くにあって、人が手を伸ばしても届かないものでもない。5年後に理解されるものがポップスなのよ」って僕に言ってくれたんですね。じゃあ僕もその5年後に理解されるポップスを作ってみようっていうので、この「忘れられないの」を作りました。歌い始めの歌詞がタイトルになるっていう。しかも、シティ・ポップだったり、AORっていうものが若者たちの中で古き良きものとして聴かれてリバイバルしている中で、僕らが思う今のポップスと、当時の素晴らしき音楽をミックスしたらどこに行くのか…そして、5年先はどこに着地できるのかっていう思いで作ったのがこの曲なので。サカナLOCKS!やSCHOOL OF LOCK!のリスナーの皆さんにはいい感じに刺さるんじゃないかと思って作りました。ありがとう、新聞同好会長さん。」
「こうやって、ラジオで新曲を解禁できるっていうのも、僕はすごくいいことだと思うのよ。ラジオを聴いてくれている人たちに音として届いて、その人が生活している空間の中で自分の曲がふっと入ってくるっていうのがね……これはすごくいいことだと思うのね。」
★ワンダーランド
TBSテレビ「NEWS23」のオープニングテーマに新曲「ワンダーランド」が使用されるということで、早速拝見させてもらいました。
新海誠監督が手がけた映像とサカナクションの新曲の相性がとても良く、また、一郎さんが仰っていたように、良い違和感をとても感じました。
6/14の愛知でのライブでまた聴けるのが楽しみです!
男性/19歳/静岡県
「こちらの新曲、「ワンダーランド」はニュース番組のテーマソングとして番組の方ではもうオンエアされています。でも、曲の一部なので。全体で聴くとね……また本当によくこんな曲がテレビのタイアップで使われたなっていうような特殊な曲なんですね。これは、この番組に使われるっていう前提で作った曲じゃないんですよ。もともとは自分たちのアルバムのために制作した曲のデモがあって、それを聴いた『NEWS23』の方が、これをぜひ番組で使いたいと。リニューアルに使いたいんですと、お話を受けたという流れなんですね。サカナクションって、今まであんまりそういうことがなくて、書き下ろすっていうことが多かったんです。そのニュース番組のプロデューサーの方に会ってお話ししたんですけど、サカナクションの考え方にすごく近かったんですよ。僕らは難しいものと分かりやすいものの間の、通訳のようなことをやりたいとよく言っていたんですけど、『NEWS23』も同じような考えで番組を作っていると。すごい偶然ですけどね。その親和性もあって、使ってもらえてよかったなと思いました。あと、番組のタイトルコールみたいなものも僕らが手がけていまして、それもコンセプトをちゃんと話をして、想いがいろいろ入っているんですね。それを注意して聴いてもらえたらと思います。」
★茶柱
一郎先生、アルバム『834.194』の全曲がついに公開になりましたね。私的にはDISC2の「茶柱」という曲がとても気になっています。「茶柱」ってお茶に立つあの縁起のいい茶柱ですよね?まさか、それを題材にした曲が生まれるとは思っていませんでした。
どんな曲か想像しつつ、アルバムリリースを楽しみに待っていたいと思います。
女性/19歳/東京都
「これね、「茶柱」っていう曲はもともとアルバムに収録する予定のない曲だったの。なんですが、私の本当に不徳の致すところで、歌詞が書けずに発売が延期になったことでスケジュールにちょっと隙間ができたんですね。その隙間がせっかくできたなら、「茶柱」を収録しようっていうことでレコーディングしたんですよ。なので、延期になったからこそ収録することができたという曲でね。これはね……沁みる曲ですね。お茶って暑い日に熱いお茶を飲んで体を涼ませるっていう、暑いことを気にさせなくするという作法があるじゃないですか。だけど、今の世の中って悲しい時には楽しいことをしてそれを忘れようとか、打ち消すっていう方向に行っているなって。でも、日本の良き感覚っていうのは、それを受け入れて自分のものにするっていう……自分の中の地層にしていくっていう感覚だったんじゃないかなっていうのがあって。それを音楽にしたり言葉にしたり、歌にしたりするとどういう風になるのかなっていうのでこの「茶柱」って曲を書きました。派手な曲じゃなくて、すごくミニマルなアコースティックな曲なんですけど、僕はすごく好きなんですよ。なので、これもみんなの元に届いた時にどんな反応があるのかすごく楽しみにしています。」
★アルバム完成おめでとうございます!
アルバム制作お疲れ様でした。
一郎さんは歌詞を完成するまでに多くの時間を要するのは有名な話ですが、
メロディーはどのようにして誕生しているのですか?
女性/22歳/東京都
「メロディーは、本当に僕、ポンポンポンポン、ポンポンポンポン、ポンポンポンポン……(笑) ってできるんですよ、本当に。すごい勢いでできますよ。まず、コンセプトを持って、サカナクションでセッションするんですね。そのセッションしたものに対して僕が適当にメロディーを歌っていって曲になることもあるんですよ、その場で。アドリブで。それでできた曲が、今回DISC1に収録されている「マッチとピーナッツ」っていう曲。なのでね……メロディーはできるのよ。だけど、歌詞がね……。鯉のぼりに目を入れるような作業だから、ちょっとでも納得がいかないと、それまでの鯉のぼりの体のディティールとかを一生懸命作っていても、目の雰囲気が違うと台無しになるじゃない。良い曲であるほど、そこに時間をかけちゃうのよ。……もうね、本当に。本当に……そこは、僕が不器用なんですよ。さくっとできればいいんだけどね。そうはいかないんですよね……才能がないんですよ。だから、努力でカバーしてきたんですけど。やはり歳をとってくるとね、考え方も凝り固まってきますし、自分の中でのハードルも上がっていくんですね。それを1回下げちゃうとなんでもよくなっちゃうから……自分の性格上、それを分かっているので、どうしてもそれを下げられないんですね。なので、考え方みたいなものは変えていかなきゃいけないけど、これからもちゃんと音楽と真剣に向き合っていけるために、今回、発売を延期してまでこういう風にやらせていただきました。良いものになっていると思うので、楽しみにしていただけたらと思います。」
「では、6月19日にリリースされるニューアルバム『834.194』から、1曲新曲をお届けしたいと思います。……初解禁ですよ!!この曲はもともと「マイノリティ」っていう仮タイトルが付いていたんですよ。歌詞の中にも「マイノリティ」って言葉が出てくるんですけど、結構この言葉ってセンシティブじゃないですか。性的マイノリティや民族的マイノリティも含まれるから。でも、僕が言いたかったのは、みんなが好きと言うものを好きと言いたくない……自分の中に本当に好きなものがあるっていう、それを選ぶっていう性質のマイノリティだったんだけど。それを「マイノリティ」っていうタイトルにしちゃうと全部含んでしまうので。違った表現ができないかなっていうので「モス」っていう……虫の蛾ですね。それをタイトルにして完成させた曲です。サカナクションの「モス」という曲を聴いていただけたらと思います。」
「それでは……サカナクションで、「モス」!」
♪ モス / サカナクション (初オンエア)
「ニューアルバム『834.194』から、「モス」という曲です。この曲は、サカナクションの中でも"浅瀬"というかね。一番外側に向けて発信する曲として作り始めたんですけど、コンセプトとしては、C-C-Bと、Talking HeadsとUKインディ……Klaxonsとか、Bloc Partyっていう僕らの時代の青春です……そういうバンドをぐっと混ぜ合わせたらどういう曲になるかっていうのを実験的に作っていった曲だったんですね。でも最初は、C-C-BとTalking Headsと山本リンダだったの(笑)。でも、山本リンダ感って結構な山本リンダ感が出ちゃって……頭の、ジャジャ、ジャジャ……っていうところは山本リンダ。(♪山本リンダの「狙いうち」が流れて……)そう、これ!ここからの……(♪サカナクションの「モス」が流れて……) ほら!!何か感じる?感じなかった?今の!そういうコンセプトで作った曲なので。他にもそういう曲があるから、これはどんなコンセプトで作った曲なのかなって聴いてくれると嬉しいです。」
「……いよいよ出るから!!6年ぶりのアルバムが、本当に出ちゃったらもう……どうなるんだろう?……またしっかりと音楽と向き合っていけるように、このサカナLOCKS! ユニバースティ(UNIVERSITY)でもしっかりと皆さんと音楽のことを学んでいきたいと思いますし、サカナクションの歴史を皆さんと一緒に、同じ時代に生まれたことを刻みたいと思っています。よろしくお願いします。予約の方も始まっておりますので、宜しくお願い致します。」
「さて、来週の火曜日、6月18日には、ユニバースティから校舎を移しまして、SCHOOL OF LOCK!の生放送教室にお邪魔したいと思います!よろしくお願いします!」