「GUEST講師:松任谷由実 先生・恋愛ソングを書けない山口一郎の『恋愛ソング相談』」
2018.04.26
サカナクション
山口「はい、授業を始めますから席に着いてください。マンガを読んでいる生徒はマンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いている生徒はInstagramを閉じなさい。授業が始まりますよ。今夜のサカナLOCKS!ですが、なんと……この方と一緒にお届けしたいと思います!」
松任谷「こんばんは、この方です!(笑)」
山口「(笑)」
松任谷「ユーミンです!」
山口「よろしくお願いします!」
今回の授業は、今年デビュー45周年!1970年代から日本の音楽シーンのトップを走り続けている音楽偉人。ユーミンこと、松任谷由美先生が音学室に登場です。
山口「先週は、ユーミンさんの番組『Yuming Chord』に私がゲストとしてお邪魔しました。そこでもいろいろと……僕が一方的に質問攻めにしたりとか……」
松任谷「いや、そうでもなかった。質問っていうより自分の話をしてた。」
山口「ははは!(笑) そうですよね。自分の話を一方的に浴びせてしまったという感じだったんですけど……僕、「あなた本当に自分の話しかしないよね。」っていって振られたことがあるんですよ(笑)。」
松任谷「やっぱり(笑)。」
山口「……そういうところなんだよなー。」
山口「黒板書かせてください。今日はちょっと……この授業でいくぞ!」
松任谷「……字って本当にそれぞれ特徴があるねー。」
山口「特徴出てます?」
松任谷「うん。魚っぽい!」
山口「(笑)」
松任谷「うなぎっていうのかな……2〜3匹細長い魚がいる感じがする。」
山口「でも、この(45周年記念のベストアルバム)『ユーミンからの、恋のうた。』のブックレットはユーミンさんの字ですよね?」
松任谷「私です。」
山口「可愛い字ですよね?」
松任谷「可愛い?」
山口「可愛い。」
松任谷「そうですか。」
今回は、実は恋愛ソングが書けないという山口一郎先生が、今月、45周年記念ベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』をリリースし、これまで数多くの恋愛ソングを生み出してきたユーミン先生に、どうしたら書けるのかを相談していく特別授業──『恋愛ソング相談』を行っていきます。
山口「ここからは、僕の相談に乗っていただきたいんですが……先生が先生に相談するって形になるので。」
松任谷「そうだね。大人のための塾みたいなもんだね。」
山口「そうですね。『ユーミンからの、恋のうた。』……この中には45曲収録されています。」
松任谷「45周年だから、45曲ですよ。」
山口「でも、ユーミンさんって全部で何曲くらいあるんですか?」
松任谷「600曲くらい。」
山口「ははは!(笑) もちろんこのベストアルバム以外にも、ユーミンさんは数多くの恋の歌を作られてきています。」
松任谷「うん。」
山口「実は、サカナクションで恋愛の歌というのはほとんどないんです。」
松任谷「ですよね。言われてみれば……」
山口「でも、恋愛していなかったわけじゃないんですよ。数は少ないんですが……」
松任谷「ちなみに何個?」
山口「えっと……はなちゃんでしょ。るみっぺに……どうだろうな……4つ?これ片思いとかも入れていいですか?」
松任谷「いや、それは入れない。」
山口「じゃあ4つですね。」
松任谷「そういう、はなちゃんとか、具体的なの良いですねー。人の話を聞いて曲を作るときに、どう思っていたかではなく、具体的な名前とか、別れた場所とか、何を飲んでいたとか、そういう具体的なことがいいんですよ。大好きなんですよ。そこからストーリーが広がる。」
山口「でも、自分がそれを歌にしようとすると、生々しすぎて……」
松任谷「だから自分のことじゃないほうがきっと作れるでしょう?」
山口「自分のことじゃないことを曲にするってどういうことですか?どうすればいいんですか?」
松任谷「心情は自分の体験を織り交ぜればいいんだけど、シチュエーションとか風景とかは人のを借りればいいんじゃないですか。映画でもいいし。」
山口「はー……でも、恋愛映画って僕ほとんど見ないんですよね。」
松任谷「見なさそう(笑)。」
山口「実は僕、あまりフィクションの歌って書いたことがないんですけど、1曲だけめちゃくちゃユーミンさんに影響を受けて作った曲があるんですよ。」
松任谷「本当?」
山口「ユーミンさんのスタイルに。僕にとってユーミンさんの歌って、"東京"ってイメージだったんですよ。」
松任谷「そうだね。地元だから。」
山口「僕は北海道出身なんですけど。それに、手を伸ばせば届く距離間の人たちっていうか……セレブとかの話じゃなくて、同じ目線の共感できる。」
松任谷「その通り!そのリアリティをすごく大事にしています。」
山口「その技法を自分で出来ないかなって思ってやってみた曲があるんですよ。」
松任谷「お、聴いてみたい。」
山口「「表参道26時」っていう曲なんですけど。」
山口「表参道の東京の2人がファミレスでなんとなく沈黙が続いている状況をフィクションで書いて……」
松任谷「”左手で書いた"……っていうのがリアリティあるね。もどかしい感じ。」
山口「はい。水で、なんとなく左手で名前を書いてみたっていう。でも、これ以降フィクションで恋愛の曲を書いたことがないんですよ。これで挫折して。」
松任谷「なんで挫折……してないじゃないですか。」
山口「あのー……やっぱりすごすぎて……ユーミンさんが……」
松任谷「照れ屋さんなんじゃない?」
山口「(苦笑)」
松任谷「……あのー(笑)、ほんとはー……出せよ!」
山口「あはははは(爆笑)」
松任谷「出してみろよ!!」
山口「(笑)そうすね……どう出したらいいのかな、みたいな。なんかこう……振られて、打ちひしがれた、振られてどうにもならない自分……みたいな、そっちになっちゃうんですよ。」
松任谷「駄目な自分……共感持たれると思うんだけどな。」
山口「みんな知りたいかなって思っちゃうっていうか……(笑)」
松任谷「知りたいでしょう!」
山口「え、知りたいですかね。なんか……リズムになんないんですよね。手紙になっちゃうというか……」
松任谷「リズムがある手紙にすれば?」
山口「え……それが出来たらやっているんですけどねぇ。出来ないんですよね……ちゃんと恋愛していないのかな?」
松任谷「出来ないっていうことを衒いもなく言えるのがすごいと思う。もうちょっと隠したりするじゃない。」
山口「はー……。ただ、好きな人ができると、その人に向けて曲を作ろうとは思うんですよ。その人が好きそうだなとか、2〜3人に作る感じっていうモチベーションは湧いてくるんですよね。ただ、それが、「あなたが好きよ」とか、「2人でこんなことあったよね」じゃなくて、自分の、心象スケッチを彼女に向けて作るっていうのはやってきていたかなみたいな。」
松任谷「うん、うん。」
山口「ユーミンさんが数々やってきた、「ルージュの伝言」とか、「中央フリーウェイ」とか……ああいう世界観みたいなのには絶対にいけないんです。」
松任谷「「中央フリーウェイ」は比較的ドキュメンタリータッチかもしれない、比較的ね。」
山口「これ、めっちゃ好きなんですよ、僕。」
松任谷「ありがとう。」
山口「これは曲先(※先に作曲をして、後から歌詞をつけること)ですか?」
松任谷「曲先。♪中央フリーウェイ〜って出だしのところは、メロディーと一緒に決まってた、うん。」
山口「その時にはまだストーリーは出ていないんですよね?言葉だけですよね?」
松任谷「そうね。」
山口「そっから作ってったってことですもんね。こういうのが書けないんですよ……釣りに行く過程とかはかけるんですけど。……田舎者だからかな、東京に対する劣等感なんですかね?」
松任谷「そんなことないよ。それを言えちゃうのがすごいよ!」
山口「そうですか?」
松任谷「言えているっていうことは、解消されているってことだし。個性だし。」
山口「あー……」
松任谷「一郎くんじゃないと作れないものを数々作ってきているじゃないですか。だから、これからのキャリアにおいてどう展開していくかって思うところだよね。」
山口「はい。ただ、ビクターの人によく言われるのは(笑)、その「恋愛の曲は書いてくれよ」と、やっぱりそれは共感されるから書くべきだっていうのはすごく言われ続けているんですよね。自分も何度もトライしているんですけど、メロディーまでたどり着くんですけど、ありきたりになっちゃうっていうか……」
松任谷「じゃあさ…… ”I love you.”っていう言葉を、その時の心情を込めて、どういうコードでどのメロディで言うかっていう、歌してみれば?」
山口「だって、人を好きになったときに「愛してる」って僕、言わないですもん。もうよっぽど……本っ当に……こいっつー!……みたいな時に……」
松任谷「それいいじゃん!!本当にこいつー!!って歌詞にすればいいじゃない。」
山口「あははははは(爆笑) 僕が!?」
松任谷「そのエモーションを、曲と……「本当にこいつー!!」で1曲できるよ、感動すると思う。」
山口「ほんとですか。えー……」
松任谷「今すごい来たもの。本当にこいっつーっていうアクションとともに。」
山口「この間『Yuming Chord』に出させていただいた時に(※[2018年4月20日の放送])、僕たちが同じタイミングでベスト盤を出して、サカナクションは10年経って次のステップっていうのはあるの?って話になっていったじゃないですか。その時に思っていたのは、やっぱりここから先は……違う自分を作っていかなきゃいけないというか、違う領域っていう部分で、……やらなかったけど、これからやらなきゃいけないこと。っていう中に、恋愛の歌っていうのはあるかなって思っているんですよ。」
松任谷「うん。そう思ったらやるべきだよ。」
山口「やりますか。」
松任谷「うん。ベテランのミュージシャンでも、曲なんか同んなじで良いんだよっていう人もいる。私は、いろいろギャンブルするタイプ。こっちいけば何か鉱脈があるんじゃないかなって、すごいエスニックなものに走ったりとか、デジタルサウンドに行ったりとか、荒井由美の時からすると、結婚して、うちの旦那さんと一緒にAORやソフトソウルみたいな方向に……様々手を染めてきていますよ。自分ではこの声が幸いしているかもしれないけれども、ものにしてきているとは思う。」
山口「それは思いますね……」
山口「じゃあ、『ユーミンからの、恋のうた。』から、山口一郎に向けて、曲の処方箋として1曲何かいただけますでしょうか?」
松任谷「じゃあ、ものすごい女心の機微を出している曲をいこうかな。「心ほどいて」っていう曲を聴いてください。」
♪ 心ほどいて / 松任谷由実
松任谷「(曲を聴いて……)登場人物は約3人。結婚式ですね。」
山口「いや、こんな優しい男?いるかな?いるんですよね……。でも、これは男心ってわけですよね?男心も込めているわけじゃないですか。」
松任谷「そうですね。あのね……良いことを聞いてくれた一郎くん!やっぱり、アーティストっていうのは、男の目線、女の目線、両方持っていないと駄目ですね。片方だけだと、色と形は分かるけど、両方ないと距離がわからないように、男性性、女性性、両方を持っていることが大事だと私は思います。」
山口「僕ね、それは……本当に女心、分からないんですよね。」
松任谷「またそれもそれで魅力ではあるけどね……めちゃくちゃにしてやりたい!!っていう(笑)。」
山口「あはははっは(爆笑)。あっはっはっははは(笑)」
松任谷「一郎をめちゃくちゃにしてやるー!って(笑)。」
山口「結構やられてきてるんすけどねー。」
松任谷「やられてきてる?(笑)」
山口「最後に1つだけ質問いいですか?女性的な目線をつけるには、どういうトレーニングが必要ですか?」
松任谷「私の実体験ということではないけど、誰かを本当に好きになるっていうことは必要だと思いますよ。」
山口「………はい。」
松任谷「その上、人の気持ちはままならないものなんだっていうのを学ぶことは大事だと思います。」
山口「僕ね、本当に好きになった人がいたんです。この人としか結婚しないって思った人がいたんですけど、その恋が叶わなかったんですよ。」
松任谷「よかったね。……それは、栄養になったと思うよ、アーティストとしての。」
山口「(苦笑)。栄養になったプラス、トラウマになっているのかも。それを超える恋がない、みたいな。」
松任谷「じゃあ、それを超える恋にあうと良いね。でも、自分で意識してって、あるものじゃないもんね、うーん。交通事故のようなものだったりもするし……ひどい風邪を引くようなものでもあるし……」
山口「それ、交通事故的な感じだったら、僕、歌にできるかも。」
松任谷「うん。」
山口「……ちょっと、勉強します!もっと。」
松任谷「勉強して得られるものでもないしねぇ。」
山口「飲みに連れて行ってください(笑)。」
今回の授業も終了の時間になりました。
山口「明日の朝11時から放送される『Yuming Chord』にも、私山口一郎がゲストとして出演します。引き続き、そちらでもお話しさせていただきたいと思います。ということで、音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ"音学"の授業、サカナクションの山口一郎と、」
松任谷「松任谷由実でした!」
■ 松任谷由実さんの番組『Yuming Chord』毎週金曜日 11:00-11:30 オンエア!先週に引き続き、今週も、山口一郎先生がゲストで登場します。
番組サイトは[→コチラ]!
■ 『ユーミンからの、恋のうた。』 特設サイトは[→コチラ]!
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