★陽炎!マジですごい!
一郎先生!陽炎、めちゃくちゃかっこいいです!
イントロ1秒もたたないうちに、ガッと引き込まれました。ピュンピューンって言ってる光線銃みたいな音もすごいスパイスです!
一郎先生のこぶし?ガナり?本当にかっこいい!
さっそく夢中になってます。早く28日になってほしい!そして早くライブで踊りたいです!
男性/14/東京都
山口「先週の授業で、サカナクションのベストアルバム『魚図鑑』の収録楽曲であり、映画『曇天に笑う』の主題歌「陽炎 –movie version-」をお送りしましたが、先生、Twitterで反応を見ていたぞ。新曲をサカナLOCKS!で初披露するときはドキドキするぞ。反応を見ながら、しめしめと(笑)。しめしめと思いながらも、ははーん……みたいな気持ちでもいましたよ。ふふふ(笑)。」
「……黒板をさっそく書こう。今日は先生、テンション高いぞ。」
今回は、サカナクションが主題歌を担当した、映画『曇天に笑う』(3月21日公開)の監督、本広克行 先生をゲスト講師としてお迎えします。映画監督という仕事、そしてサカナクション先生の主題歌にまつわる裏話など、いろいろと話を聞いていきます。
■ 映画『曇天に笑う』予告編【弐】
映画『曇天に笑う』。原作は、唐々煙さんの漫画作品。明治維新後の混沌とした時代の滋賀県大津を舞台に、国の平和を守ることを生業とする曇三兄弟が、破壊の神 大蛇から家族や仲間を守るために死闘を繰り広げていきます。
山口「本日のゲスト講師はこの方です!」
本広「映画『曇天に笑う』の監督を務めました、本広克行でーす。」
山口「ははは!(笑) もっくん、今回はよろしくお願いします。」
本広「よろしくお願いします。」
山口「3月21日に、映画『曇天に笑う』が公開になりますが、これって漫画が原作ですよね?」
本広「そうですね。少女漫画系なんですけど、アクション漫画みたいなものがありまして。とにかく絵が綺麗なんですよ。」
山口「僕、漫画読みましたよ。」
本広「本当ですか。まさか自分が映画化するとは思わなかったですね。」
山口「主演を務めるのは、福士蒼汰さん……かっこいいねー。あと、中山優馬さん。」
本広「ねー。」
山口「っていうか、イケメンしか出てこないですよね?」
本広「そうなんですよねー。これ、1年半前くらいに撮ったやつなんですけど、当時より今の方が人気がある。……ほら、イケメンって旬があるんですよ。」
山口「イケメンには旬がある?(笑)」
本広「旬がある。魚と一緒ですよ。」
山口「キャスティングする時って、映画が公開されるときに旬になりそうだなーっていう人を見越してキャスティングするんですか?」
本広「はい。僕は結構それをやってます。ただ、出資者の方を説得するのは結構大変。」
山口「あ、そうか。そのときはまだ旬じゃないから。」
本広「そうです。いい出世魚ですよ!って言っても、なかなか信用してくれないんですけど……曇天はピシャッとはまりましたね。」
山口「なるほど。主題歌を務めますのは、我々サカナクションなんですが……」
本広「ありがとうございます、本当に。」
山口「あの……今日、松竹の方もいらっしゃっているんですけど、この場を使って、もっくんと松竹の皆さんに、私とビクターの者から、お詫びを申し上げたいなと思っております……本当にご迷惑おかけしました!」
本広「いやいやいや(笑)。」
山口「締め切りを伸ばしまくって、本当にご迷惑をおかけしました!」
本広「一郎さんに発注をするときは、伸びるっていうのは分かっているんですよ。」
山口「いや、でも、やらかしたんだー……もう、映画の話来ないんじゃないかなっていう怖さが(苦笑)。」
山口「サカナクションがこの映画の主題歌を作るきっかけになったのは、もっくんと僕の出会いのきっかけですよね。」
本広「最初は、武蔵美(武蔵野美術大学)の片山正通さんのご紹介からですね。武道館のライブ(「SAKANAQUARIUM2015-2016 "NF Records launch tour"」)を観て。僕の周りには一郎さんのお仲間がいっぱいいらっしゃって、みんなが踊りまくってるんですよ。」
山口「関係者席でね(笑)。」
本広「関係者席って、地蔵のように居ればいいって思っていたんですけど、これは何だろうって思って。みんな、踊り終わってTシャツを脱いで着替えて……でも、そこからもっと知りたいなと思ったのと、あのときにGOCOOさんとのコラボをやっていて、圧倒的に和太鼓の音と、ロックの……一郎さんたちの、歌詞が混ざっていく感じが感動的でしたね。」
山口「今回の『曇天に笑う』のオープニングとエンディングの音楽もサカナクションがやらせていただいたんですが、そのオープニングが、あの武道館のときにコラボしたGOCOOさんとの曲です。」
本広「あれはもう……すごいかっこよかったですね。」
(♪映画『曇天に笑う』の冒頭で使われているサウンドトラックが流れて)
山口「(あ、この曲ですね。なんか……ジャパニーズ・トランスって感じですよね。)
本広「うん。和太鼓でこういう風にできるんだなって思って。そこからカメラワークとかカット割りとかも考えていきましたね、音からまず今回は。松竹映画なので、まず最初に富士山がバーっと流れるんですよ。そこに、和太鼓の音楽がドンドンって入ってくると、世界に行くような感じが……」
山口「違和感がありますよね、いい意味で。」
本広「そうなんですよね。頭にクレジットを入れるんですけど、アルファベットの英語表記にさせてもらって、これ、かっこいい映画だなーって。」
山口「これ、オープニングがね、ドローンでぐわーっといくじゃないですか。太鼓に合わせて、あの……あれして、あれするんですよね!(笑)」
本広「ははは(笑)。結構大変でしたけど、ああいうのをやると、映画の現場やスタッフが盛り上がりますね。」
山口「そして、GOCOOのメンバーもオープニングに出演されていて。」
本広「はい、出演していただいています。」
山口「僕もね、出たかったんですよ。ちらっと入り込む……みたいな。でも無理でした、時間がなくてね。」
本広「そうですねー。抜き(※)でも撮れたらなと思っていたんですけどねー。」
山口「ははは(笑)。抜きでね、それは嫌です(笑) でも、オープニングもすごいことになってます。」
(※ 抜き:ひとりだけ別で撮影すること)
山口「今回僕たちに主題歌を頼むことで、もっくん的にはどんなことを望んでいたんですか?」
本広「やっぱり、時代劇ってどうしても大人のものみたいな感じがあるじゃないですか。子供たちはそんなに観てくれないかなっていうのがあって。」
山口「確かに、時代劇といえばおじいちゃんおばあちゃんが夕方とかに見る……みたいなイメージですもんね。」
本広「はい。それを、どうやったら若い世代に観てもらえるかなって。日本の和の美しさとか、もうちょっと砕けた感じにするのに、サカナクションの音はすごくいいなって。たまたま片山さんからご紹介いただいて、ごはんを食べているときに一郎さんの考え方って結構いろんなものをリスペクトして壊していく感じが、今回の映画にピッタリだなと思っていて。」
山口「僕ね、今回本当に難しかったんですけど、面白かったんです。」
本広「あ、本当ですか。」
山口「で、締め切りの本当にギリギリまで考えていたんですよ。実は、2パターンで迷っていたんです。」
本広「はいはい。」
山口「映画に本当に寄り添うパターン。歌詞が、曇天の世界観に完全に寄り添うものと、自分の考えを持って作っているものの2パターンがあって、今回はもっくんといろいろお話ししたりして。映画を作っていく上で、前から僕は思っているんですけど、映画のエンディングというか、主題歌って実はいらないと思っているんですよ。せっかく映画の世界観で終わっているのに、全然関係ない歌がバーンと入ってきて……僕、あれが本当に嫌だったんですよ。」
本広「うん、ありますね。」
山口「もっくんは、僕らに頼んでくれたっていうことは、いろんな理由はあるにしろ、映画の作品性として、映画に寄り添って作って欲しいっていう気持ちがあるんだろうなっていうのがあったから。あと、もっくんにとっても、曇天もそうですけど、その前の映画も、外に向かってチャレンジするというか、大衆映画に対する考え方と、舞台とかをやられていて、大衆ではないところをぶつけあって作っている、せめぎ合いみたいなものを映画を見ていて感じたから、そこに当てていかなきゃいけないんじゃないかと思って迷っていたんです。」
本広「なるほどー。」
山口「実は、「陽炎」は2パターン(世に)出そうと思っているんですよ。」
本広「え、できたんですか?」
山口「それが……まだやってる(笑)。」
本広「(笑)」
山口「でもね、–movie version- は曇天のために作ったから、……曇天のためっていうよりは、正直に言うともっくんのため。もっくんと僕の曲なの。」
本広「いやー、嬉しい。そんな……」
山口「だから、この曲のタイトルは「陽炎 – もっくんver.- 」なの(笑)。」
本広「(笑)」
山口「だから、歌詞も映画に寄り添いすぎず、説明することが好きじゃないから、説明はしすぎず、映画の世界観に入り込みすぎず離れすぎないラインを狙ったんですよね。」
本広「あのね……最初は、僕が北海道に行った時、一郎さんが出来たよーってメールをくれて。もっとスローで悲しい方がいいかな……バラードの方がいいかなとかどこかで思っていて。でも、一郎さんから「いいでしょう?扉が開く感じで。」って言われて、イメージしていたものの形がどんどん変わっていく感じ。すごくいいですねー。めちゃくちゃ評判いいし。」
山口「なんか、僕の中で、現代風演歌……ロック演歌じゃないけど、どこか日本の歌謡曲さが必要かなと思ったんですよね。」
本広「子供の頃に聴いた……堺正章さんの『西遊記』のね。」
(♪1978年〜放映されていた、テレビドラマ『西遊記』の主題歌 : ゴダイゴ「Monkey Magic」が流れて)
山口「そうそうそう!これこれ。」
本広「このゴダイゴさんの曲をイメージしたんですよ。……あ、どうしようって(笑)。北海道の空港で聴いてうおーってなって。あれは変な気分でしたよ。どんどん馴染んでいくんですよね。」
山口「救いがあるし、懐かしさもあるし、若い子たちは演歌をあまり聞かないけど、それを自然と聞き入れられるというか、コブシがきいていても違和感がない、みたいなラインを目指して。」
本広「なるほどー。それでがなり……コブシが。」
山口「ありでしょう?」
本広「あり!いやー……今、聞いて感動した(笑)。そうなんだー……。」
山口「ふふふ(笑)。あとね、メロディーがキャッチーすぎると、最後持っていっちゃうんだよね、映画をね。だから、いい温度で止めておいた方が、福士蒼汰くんとか中山優馬くんとかのかっこよかったなっていう雰囲気を壊さないかなって……」
本広「先生……めちゃめちゃ考えていますね、本当に。」
山口「めっちゃ考えてますよ。」
本広「普通、適当なタイアップとかだと、はい出来ましたって感じで、アーティストの方とは一切会わないですね。これでいいんですねって感じで、流れ作業のような感じにしちゃうんですけど。」
山口「本当はね、『曇天に笑う』も全部の音をやりたかったの。」
本広「マジですか……!」
山口「いまの映画って、映画館のサラウンドシステムが上手に使えてないんですよ、全然。」
本広「そうなんですよ、それはあるんですよ。サラウンドブームみたいなのがあるんですけど、どうしてもセンターに寄っていくんですよね。だんだん諦めちゃうの。」
山口「でもねー……いろいろあるはずなんですよ。」
本広「じゃあ、次やりましょう。次!」
山口「やるやる!」
本広「……!?」
山口「……あの……今ビクターから、"だったら締め切り守れ" っていう……(笑)。」
本広「身も蓋もない……(笑)。」
さて今回の授業は、そろそろ終了の時間になってしまいました。
山口「今回は、3月21日に公開になる映画『曇天に笑う』の本広克行監督をお迎えしてお伝えしてきましたが、まだいろいろ話したりないじゃないですか。」
本広「そうですね、やっとエンジンかかってきた感じ(笑)。」
山口「映画のことももっと詳しく本広監督から聞きたいので、次回も監督にゲストとして登場していただけたらと思います。」
本広「お願いします。」
山口「来週も、いろいろお話聞かせてください。よろしくお願いします。」
ということで、本広克行監督とのお話は来週も続きます!お楽しみに!