★ 夏休みだわ、なにしよう
一郎先生が表紙のPenを見ました。もの派という動きが現代アートにあるなんて初めて知りました。掲載されている菅さんの作品がすごくクールで、実物が見てみたくなりました。夏休み中に美術館に見にいこうと思います。
女性/17/福岡県
「おー、先生、出てたな。『Pen』っていうカルチャー誌があるんだ。そこでね、"もの派"っていう美術のひとつの流れがあるのよ。音楽でいうと、ロックとかジャズとかいろんなジャンルがあるように、現代アートにもいろんな派閥があるの。"ミニマル派"とか。もの派の全く反対なのがミニマル派っていう派閥なんだけど。もの派っていうのは、物質と物質を向き合わせて、ある種……緊張感っていうのをどういう風に作るかっていう、音楽に通ずるところもあるのよ。だから先生はもの派がすごく好きなんだけど。……もの派って、世界でも"Mono-ha"って言われてるんだ。日本語の"もの"だからね。面白いから、ぜひ調べて欲しい。李禹煥(リ・ウーファン)っていう作家がいいぞ。」
「夏休みに美術館とかに行っていろいろ体験するっていうのは若いうちにしておくと刺激になる。最初は分からなくていいんだよ、どんなものでもそう。分からなくても、分かってくると面白いから。音楽もそうでしょう?最初はよく分からなかったけど、歳をとると分かるようになってくる……とか。」
「では、黒板書きます。」
今回は、生徒の皆さんに出していた、宿題『曲名俳句』の授業です。曲名俳句とは、俳句(五・七・五)で、季語が曲名という俳句のことです。今回は、この曲名俳句のスペシャリスト(?)を解説員に向えます。
「SCHOOL OF LOCK!の音学室からお届けしています、"音学"の授業、サカナLOCKS!、山口一源斎……山口一源斎でございます。わたくしは……曲名俳句の中では、その名を轟かせた達人でございます。そんな私が、サカナクションの山口先生に呼ばれて、このサカナLOCKS!のこの場所に降り立ちました。」
「曲名俳句がどういうものかというと、例えばこんな感じでございます……
“夏が来た プールに飛び込む ウルトラソウル”
ははは(笑)。この句のいいところを先生が説明すると、ウルトラソウルって何なんだって……詠んだ人のウルトラソウルかな。プールに飛び込む時の一つの感情が表現されているわけだよ。B 'zさんはこの間、ROCK IN JAPAN FESTIVALに出場されて素晴らしいステージを演られていましたけど……うまいねー、やっぱり。だから、このB 'z先生の感情を自分に憑依させているっていうのがこの句の中に入り込んでいる良さですな……これは100点満点でいうと、85点とか90点ランクの素晴らしい句だと思います。」
それでは、生徒から提出された俳句をチェックしていきます。
曲名俳句!
夏の夜 空駆けてゆく R.Y.U.S.E.I群
女性/17/福岡
■ 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE / 「R.Y.U.S.E.I.」Music Video
「夏の夜に空を駆けていく流星群……三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」というタイトルをとり、この句を詠み上げています。流星群っていうのは、時折空を漂うものであり、人を惹きつけるものである……と。流星群が来るとYahoo!ニュースにも載りますね。そういう一時のそういう素晴らしい一瞬を、夏の夜に魚民女子は感じているわけですね。とても風情があると思う。」
「ただ、先生が気になるところは、三代目 J Soul Brothersは素晴らしいミュージシャンではあるけど、これが例えば、フジファブリックの”流星群”(※『流線形』の歌詞、流星群のこと)であれば、また句の内容も変わってきたのではないかと。しかし、三代目 J Soul Brothersをセレクトしたところに魚民女子の狙いがあるのか……隠喩されているのか……その辺は測りかねる。」
★ 曲名俳句
最後の夏 終わらせたくない モーメント
男性/16/岩手県
♪ Moment / SMAP
「この「Moment」という曲は、SMAPの曲であります。しかも、このサカナクション(山口一郎)先生が書き下ろした曲のタイトルでございます。これは、ロンドン五輪の応援曲だったわけです。句の内容は、夏のオリンピックにもかかっている。16才の全部ゼロの、中学校最後の夏を回顧し、夏のオリンピックへの想いも重ね、そのレイヤー感がこの句の重みを増している。」
「しかしながら、先生はひとつ思うところがある……!!」
「……このサカナLOCKS!のこの授業でサカナクション先生が書いた曲をセレクトするというあざとさはサカナLOCKS!向きではないと……ちょっと思うね。参考にしていただけたらと思う(笑)。」
★曲名俳句
いざ四国 渚を駆けて ひとり旅
スピッツの渚という曲を流しながら旅をしたのを詠みました。
男性/17/三重県
■ スピッツ / 渚
「この句の素晴らしさは、17才という若さで一人旅……旅に出て、自分を高めようと、自分の思い出をセンチメンタルの中でしっかりと根付かせようと。そして、スピッツの「渚」という曲の爽やかさが四国に風景を更に思い出させてくれる……75点!」
「……急に得点制になったな(笑)。」
「いいねー、みんな。ただ、曲のタイトルのチョイスが普通のものが多いね。もうちょっとひねりがあるのが入ってくるとね……寺山修司的なひねりが入ってくるといいなと思うんだけどね。」
★曲名俳句
揺れ動く フロア今夜はブギー・バック
男性/16/埼玉県
■小沢健二 featuring スチャダラパー - 今夜はブギー・バック(nice vocal)
「この句は、二節目と三節目に曲のタイトルがかかっている……繋がっているところに素晴らしさがある。」
「ただ、先生は一言言いたいことがある!この句は、この曲の中の風景である。16才の男子がフロアに行って踊っていることは想像しにくい。だからイメージだな……ひょっとして、先生が主催した未成年も参加可能なクラブイベント『NF』に来て感じたことであれば、一言、注釈を入れてくれるとこの句の意味が分かってくるな……もしかしたら、早く大人になりたいという切実な想いがこの句の中に込められている……それか、踊ることが恥ずかしい自分が、揺れ動くフロアを眺めている……そういった精神状態を俯瞰でこの句で歌っているのかもしれない。……60点。」
★ 俳句
頼みます 転売なんて もうやmellow
女性/15/千葉県
「……これ、ダジャレだな(笑)。これはサカナクションの「mellow」って曲だな……ははは(笑)。転売は良くないな。今の音楽業界の時事ネタが句の中に入っているのは俳句の中の面白みではあるけど……(歌のメロディーに合わせて)……♪もうやmellow……40点(笑)。」
「皆さん、たくさんの曲名俳句、ありがとうございました。」
今回の授業も終了の時間ということで、山口一郎先生が教室に戻ってきました。
「山口一源斎師匠はやっぱり厳しいから……引き続き、この俳句を募集しなさいと伝えられました。曲のタイトルが世の中にはいっぱいあるわけです。「渚」とか、「流星群」とか、俳句の中で使われそうなタイトルをセレクトするのはあまり面白みがない。俳句というか日記に近いからな。そうじゃなくて、寺山修司や重律俳句の種田山頭火とかな……字余りとか全然ありだしな。俳句を読んでみるといいぞ。石川啄木先生の短歌とかも勉強になるな。だからもう一度募集したい。これは夏の宿題です。」
ということで、引き続きこの曲名俳句の宿題の提出、お待ちしています。
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