川上洋平 × 辻一弘 対談!
2018.03.27
[Alexandros]
(カッ、カッ、カッ、チャイム……ガラガラ……)
洋平先生「進路室へようこそ!さあ!今日はもうヤバイ授業!凄い授業でございます!緊張して噛み噛みになることを今から謝罪しておきます(笑) 先日発表されました本家本元アメリカのアカデミー賞で、日本人としては初のメイクアップ&スタイリング部門を受賞した辻一弘さんが進路室にお越しくださいます!!
変な話…グラミー賞を受賞した方が来るよりも緊張しています(笑) 先生、ミュージシャンなんだけど映画大好きだから…。
これはちょっと、ヤバイね!ではここで辻さんのプロフィールを簡単に紹介しておきます!
辻さんは高校在学中に独学で特殊メイクを学び始め、27歳の時単身渡米。
「メン・イン・ブラック」「PLANET OF THE APES/猿の惑星」などに携わって来ました。何度かアカデミー賞のメイクアップ部門に
ノミネートされましたが受賞はならず…。
その後、映画業界から離れ、現代美術の分野に転向したものの世界的俳優ゲイリー・オールドマンからオファーを受け、昨年「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」で特殊メイクを担当。
先日発表された第90回アカデミー賞で見事オスカーに輝くという…この方、素晴らしいですよ!それでは、この後すぐ!辻一弘さん登場です!」
洋平先生「ここからは本日のゲスト講師、辻一弘さんをお招きしております!まずはアカデミー賞受賞、おめでございます!」
辻先生「ありがとうございます。」
洋平先生「僕の目の前にはオスカー像があるんですけど…もちろん直に見るのは初めて!こんなに金ピカなんですね」
辻先生「そうですね。重たいですよ。」
洋平先生「えぇ!持ってみても大丈夫ですか?手袋とかしなくても…。」
辻先生「大丈夫ですよ。」
洋平先生「(大きく息を吸って)…では、失礼いたします。(オスカー像を手に)おぉー!けっこう重たい!」
辻先生「(笑) 」
洋平先生「ありがとうございます!これを聴いている生徒のみなさんも今まさに、たくさんの報道で辻さんがどんな方なのか分かっているとは思いますし、色々調べた時に“え〜!?この映画もあの映画もやっていらっしゃるの!?”って、みんなビックリしていると思うんですけど…僕もほとんど観ています。『ミンボーの女』(1992)まで観ているんですけど。」
辻先生「(笑) 」
洋平先生「生徒の中で1番多かった質問が…これだけ多くの作品をやっている中で、‘今までで、辻さんが1番難しかったメイクは?’という質問なんですが。」
辻先生「なんやろ…今回の作品のメイクも色んな意味で難しかったです。やっぱりメイクっていうのは、人の顔に作り上げてもう1人の人間を作っていくという工程なので、少しでも何かが違ったりすると、すぐ分かってしまうんですよね。特に人間の場合は…。クリーチャーとかモンスターだと、ある程度は想像の生き物なので、誤魔化しが利くんですよ。でも人物は少しでも何かが違ったりすると、観ている人がメイクを理解していなくても分かるんです。」
洋平先生「はい。」
辻先生「それを出来るだけ無くして、観ている人が別の人物…今作でいうとウィンストン・チャーチルを信じられるように、メイクを仕上げていくっていうのは難しかったです。」
洋平先生「なるほど!今はアーティストとして活動されているわけですけど、今回なぜ映画界に復帰しようと思われたのですか?」
辻先生「2012年に映画界から来る仕事を全部断って、自分の作品作りに集中してやっていたんですけど…。1番最初に特殊メイクをやりたいと思ったきっかけが、アメリカのメイクアップアーティストである故ディック・スミスさんが手掛けたリンカーンのメイクを観た時なんですよね。“これは面白い!”と。“これやりたい!”って子供の時に思ったんです。」
洋平先生「高校生の時ですよね?」
辻先生「17歳になる前かな…16歳の終わりぐらい。」
洋平先生「生徒のみなさんにも多い年齢だと思います。」
辻先生「僕は学校が大嫌いで…小学校の時から。」
洋平先生「そうなんですか!?(笑) 」
辻先生「(笑) 学ぶことの面白さを教えてくれる先生が少なかったのでね。それで学校を卒業したら、何をしようかなってずっと考えていて、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を観た時に“こういう特殊効果をやりたいな!”って思ったんです。その時はまだ特殊メイクには全く興味がなくて。」
洋平先生「そうだったんですか?」
辻先生「はい、ホラー映画とか嫌いでした。怖がりだったので(笑) 」
洋平先生「意外な(笑) 」
辻先生「そこから色々なことをやっていく内に特殊効果もあんまり自分には向いてないな!と思い始めた時に雑誌の記事を見て、“これしかない!”って特殊メイクにのめり込んでいったんです。その日から色々調べたり、自分で勉強して、自分の顔でメイクを試したり。それがきっかけで、そういう仕事をする機会も自分の経験でもなかなか無くて、ずっとやりたかったんですけどね。でもずっとやっていたのはSFとかコメディばっかりでした。そして仕事を辞めてから、ゲイリー(・オールドマン)さんから伝令がきて、わざわざ直接頼まれたので、これは人生で1回あるかないかの機会だと思って、“やってみようか”と受けたんです。」
洋平先生「そのエピソードは本当にかっこいいというか、僕はそのエピソードを聞いた時に凄過ぎて鳥肌が立っちゃいました。この番組なんですが、10代の悩みを聞いて、僕も自分なりに悩み相談とか受けてるんですけど…辻さんのように”ここまでぴったりの先生は他にいないな!”と今日思いました。やっぱり一番みんなの共通の悩みは、夢はなんとなくあるし、やりたいことはなんとなくあるんだけど、自信が持てないという人が多くて…僕も”背中を押してください!”とか言われることがあるんですが、まず何をすれば自信が持てるのかっていうのをお聞きしたいです。」
辻先生「人の意見を気にせずに、簡単なことから1つずつ何かをして、それを繋げていかないとどうしようもないので、最初に大きいことに飛びついてやろうと思ってもうまくいかないし、失敗はあたりまえで、失敗を繰り返して、そこから学ぶことで上手くなっていく訳です。
いま活躍している人も、いっぱい失敗をした上での結果なので、あんまり失敗を気にせずに、”失敗は必要なものとして繰り返す”というのが大事です。あとはもう”続けること”です。評価を得るために何かをすると絶対にうまくいかないので、自分が何をやりたいか、それを出し続けるっていうのが、1番必要なことで、だから焦らずに続けていくということですね。」
洋平先生「そこの見極めというか…”本当に自分がやりたいことで好きで好きで仕方ない”ということだったら、そこを突き進むしかないんですよね。」
辻先生「親に何を言われようと気にしない、親はどっちみち自分のことしか考えていないので(笑)」
洋平先生「先生じゃなくて、親とか友達とかに”君の夢は大きすぎるよ”とか”諦めなさい”とかいう風に言われてしまうと、多分先生に言われるよりも堪えると思うんです。」
辻先生「僕もそういうこと言われ続けて、劣等感っていうものを植え付けられて、それを晴らすというのは大人になるまで続くことなので、そこらへんを気をつけないとですね。親としても大人の責任というか、子供は大人の持ち物じゃないので、そこらへんはちゃんとサポートして、やりたいことをやらせてあげるっていうのを理解していないとですよ。結局生きていくのは本人なので、誰の責任でもないので。」
洋平先生「今、ものすごくいい話を10代のみんなもそうだし、生徒の親の方達も聞いたと思うんですよ。でも、本当に10代の子たちはいろいろな夢があって、その中でもやっぱり海外に行きたいっていう子たちに向けてのメッセージってあったりしますか?」
辻先生「法律的な問題点っていうのは必ず付いて来るんですけど、何かしら方法は必ずあります。やっぱり外を見る、いろんな国で自分を証明するという事を経験するのは非常に大事で、それをやるとやっぱり日本の良さもわかってくるから、絶対に少しの間でも住むべきだと思うし、
それを経験すると自分のスケールも大きくなるんです。ここで生活してると”上が見えない!”。あと、それ(現状)がいいと思って死んでいくことになるので、可能性はやっぱりどんどん探って経験していかないとダメだと思います。」
洋平先生「僕もまず取り敢えず行ってみよう思って行って、そこで凹むんですけど、やっぱり俺はここは負けない!とか、ここは勝てるな!っていうのを見つけられた時は強いですよね。」
辻先生「”本当に好きなことをやる”っていうことは大変なことで、でもその結果として他の人生じゃ得られないことが絶対ついて来るから。大変なことは当たり前なので、そこの中でやっていかないと。例えば1回経験して結果出したら、その苦労ってどうでもよくなるので…もう忘れてしまうから。大変でも、辛いと思っても、それに潰されないようにやっていかないと。」
洋平先生「そうですね”成功するまであきらめない!”本当に今日はありがとうございました。」
辻先生「ありがとうございました。」
M Forever Young / [ALEXANDROS]
洋平先生「辻一弘先生のインタビューをさせていただきました。インタビューというか、対談に近いような時間でした。本当に自分も勉強になったんですが、特にこれから夢を叶えていこうという生徒のみんなにとって、すごくいい話が聞けたかなと思います。1番印象に残っているのは、幼い時に親の言うことを聞かなかった、先生の言うことも突っぱねたというお話ですね。
そうなんですよ!やっぱり夢を目指すってことは、みんなが応援してくれる事じゃなくて、なんならみんな反対することの方が多くて…そこで自分を貫いた人だからこそ“あの言葉”っていうのはすごく重いなと思いました。またどこかでお会い出来ればと思います。」
洋平先生「実は、辻さんとの対談。今日オンエアした内容以上にお話しているので、”もったいなさすぎる!”ということで、急遽この放送後記に全編の音声を載せますので、是非聴いて欲しいなと思います。永久保存版くらいの感じで聴いてください!!」
洋平先生と辻先生の対談ノーカット版はこのページの上部にあるぞ!
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