「年齢・ジャンルで分けるっていう発想がない」宮本亜門さんの挑戦(2015/05/23 放送)
先週に引き続き、今週も演出家の宮本亜門さんをお迎えしました。
まず演出の魅力について伺うとこんな答えが返ってきました。「人間が人間のことをやるのが演劇なので(笑)、とにかく何があっても人間なんですよね。人間って怖かったり恐ろしかったり、あーめんどくさい!とかいろいろあるんだけど、なんて凄いんだろう!とか。それがまた自己発見に繋がったりするし、やっぱりこの深みというか…堪らないですね」
まず演出の魅力について伺うとこんな答えが返ってきました。「人間が人間のことをやるのが演劇なので(笑)、とにかく何があっても人間なんですよね。人間って怖かったり恐ろしかったり、あーめんどくさい!とかいろいろあるんだけど、なんて凄いんだろう!とか。それがまた自己発見に繋がったりするし、やっぱりこの深みというか…堪らないですね」
ご自身のことを「僕の顔もリーダーになれない顔…って自分でもヘンだけど、リーダー的じゃないじゃないですか。なんか威厳のある顔じゃない。(蜷川幸雄さんのような)なんかああいう怖さ、羨ましいですよ」という亜門さん。駆け出しの演出家だった頃、先輩の役者さんたちが仕事に酔っ払って来たことに対して舐められてると感じ、机をひっくり返して怒ったところ、余計に引かれてしまい、プロデューサーに「これじゃ本番迎えられませんよ」と言われてしまったことがあるんだとか。
そして、まとめるというよりも、役者さんたちのやる気が出るようにオープンな場所にすることが今の僕のやり方です、と話してくれた亜門さん。「演出家らしい発言が良いとか悪いとか全然思わない。どうでもいい話ですね。その代わり、観客に最高のものを見せたいんだ!という気持ちは同じだよね?ってことは何回も確認をして、だからこういう提案もあるし、こっちもあるけど、僕はこう思ってる、どう思う?って。やっぱり海外で仕事を多くしてから、だいぶ話すようになりました」とおっしゃっていました。
そんな亜門さんに、演出家として一番嬉しい瞬間について訊ねるとこう答えてくれました。「やっぱり僕にとって、俳優が変わっていく瞬間。そして舞台の上で、僕は関係なく役者と出演者がぐあーっと交流し合っている時。いやぁ、こういう場が作れたあ!って、きゅーっときちゃうんですよね。嬉しくて」
50代後半の亜門さんですが、「若い人は…」といった言葉は嫌なんだそうです。「年齢・ジャンルで分けるっていう発想が僕にはまったくないんです。僕もそうやって見られてきて苦しんだ人間だから、この人たちはこうだ、っていうまとめ方は僕の頭の中にはないんです。だから、面白いと思ったらどんどん合わせるっていう…」
そんな亜門さんは、2013年から市川海老蔵さんの歌舞伎『ABKAI』の演出に挑戦。来月にも公演が行われます。「これは日本昔ばなしを中心にやっていて『花咲かじいさん』からやって今度は桃太郎と鬼ヶ島と竜宮城の話とか。まぁ、それを面白おかしく歌舞伎風に仕立てた、ってことをやってます」
東京・銀座の新橋演舞場で演劇を観て育った亜門さんは歌舞伎も観てきたそうで、海老蔵さんとやってみたいと思っていたんだとか。「けれんみをガーッってやった時の海老蔵さんの目の寄り方も、エネルギーも、不動明王ですよ。よく現代に生きてるなっていう(笑)。ま、私生活もよく現代に生きてるなと思いますけど。あのテンションと凄みっていうのはやっぱり面白いと。ま、いろいろ非難されることも含めて面白いと僕は思うんですね」
そして、亜門さんが現在チャレンジしているのは、大分県が拠点で、海外ではこれまでに600万人がステージ観ているという和太鼓グループ『DRUM TAO』のステージ演出です。「今どんどん興味がプラスしているのは…もちろん演劇も大好きだし、ミュージカルも大好きなんですけど…言葉のないものなんですよね」
「これはぎりぎりエッジーだけど、もしかしたら面白いぞ…と思うものはまず引き受けちゃう(笑)。いつもいろいろとお話は頂きます。(その理由は)やっぱり変わってるからじゃないですか。つまり、変わってるというか、ある意味で危険なところもこの人はなんかやるかもしれない、っていう…」
また、7月にはモーツァルトのオペラを亜門さんが演出した『魔笛』が東京で上演されます。これは2年前にオーストリアで初演されたもの。モーツァルトと『魔笛』について亜門さんはこんな風に熱く語ってくれました。
「これ最高なんですよ。モーツァルトはメチャメチャ面白いヤツで。正直言うと、手紙を読んでますとね、別に知り合いじゃないんですけど(笑)、ホントに下品な言葉が大好きで、やらしい人で、ラジオで言えないことばっかり言うんですよ(笑)。なんですけど、その人が作り出す音楽があったかいんですが、彼が一番最後に作ったこの『魔笛』ほど素晴らしい曲がない!ぐらいに素晴らしくて…」
「で、それがオペラという形ではなくてですね、ドイツ語で“ジングシュピール”って言うんですけども、音楽劇にしてて。つまり、大衆のお芝居、ちいちゃな芝居小屋で作ったものがこの『魔笛』なんです。だから、台詞もあったりするんです。ホントに愛おしいぐらい、もう何回も涙流しちゃうぐらい良い音楽が入ってるんですよ。人間愛に満ちてる。こういうのがきっかけでオペラの凄い世界の美しさみたいなものを知ってもらうといいな、と思って」
さらに、亜門さんは今年の秋に、京都の上賀茂神社で式年遷宮の奉納劇の演出を担当するそうです。「境内の中で出来るんですよ。ぜんぶ建物を使って。お客さんは野外になりますけども、その雰囲気たるや、幽玄の中で…これはちょっと歴史的な瞬間だと思います」
亜門さんは最後に、様々なことにチャレンジしていくモチベーションについて、こんな風に話してくれました。
「(高校時代に)引きこもった時も同じなんですけども、音楽を聞いて、こんなに素晴らしいじゃないですか!って思ったのが演出家に繋がったのと同じで、僕は今、日本の文化もそうだし、いろいろなもの…オペラであるとか、例えばダンスもあり…素晴らしいものが山のようにあるので、戦争と反対のことをやりたいんですよね」
「やっぱり文化の凄みっていうのがあるし、それをなんとか…もうオリンピックも含めてなんだけど、いろんな方たちを感動させたい!で、お互いが知って、なんだ人間って凄いじゃん!っていうのが僕のモチベーションかな。それはお袋からバトンタッチされているので。ちょっとでかい話になって恥ずかしい、と言われちゃうかも知れないけど、そこでしか僕は生きてる理由がないんですよね」
番組では、そんな亜門さんから挑戦に関するメッセージを色紙に頂きました。「真善美 人生、二度なし」。こちらの色紙を1名様にプレゼントします!このホームページ右のメッセージフォームから「宮本亜門さんの色紙希望」と書いてご応募ください。


宮本亜門さん、2週に渡って素敵なお話をどうもありがとうございました!