帝京大学ラグビー部監督の岩出さんが語る「負けない作法」(2015/05/30 放送)
今週は、帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之さんをお迎えしました。
全国大学ラグビー選手権で史上初となる6連覇中の帝京大学。20年に渡って監督を務める岩出さんは、今年3月に最新著書『負けない作法』を出していますが、恵さんはこの本に大変感銘を受けて、良いと思った岩出さんの言葉を全部自分でメモしたんだとか。例えば、最後で語られている「人生でアンフェアや理不尽なことがあっても決して感情的にならず、誠実さで対抗していく…」そんなメッセージを読んで、「そうか…誠実に生きていこう!」と思ったそうです。
そして、ラグビーは感情をむき出しにしてぶつかっていくようなスポーツかと思っていたのに、岩出さんがとにかく誠実さが大事だと書いていることにギャップを感じたという恵さん。それを受けて岩出さんはこんなことを話してくれました。
「二極ですよね。エキサイトと冷静さとか、妥協と妥協しない、っていうこと。いろんな意味でラグビーの中にもたくさんそういう要素が含まれてますし。戦うっていうことはエキサイトしないといけない。でも、そのエキサイトでやるだけでは、例えばプレーの戦術も判断も狂いますし、逆に冷静さだけで気持ちを抑えているだけでは、プレーでは受け身になってしまうこともありますから、そのバランスを含めて最終的に自分をコントロールできる人間が一番強くなっていくと思いますね」
『負けない作法』に書かれている“作法”の1つは、「大切なのは興奮したり落ち込んだりしてもその都度、自分にとってニュートラルな状態に戻すこと」。岩出さんはそれについてこんな風に話してくれました。「回復させないといけないですよね、ミスをしたら。その後、修正していくために心が回復しないといけないですよね。その心を回復させるためには、一番どこに戻すかというベースの部分を持っていないと。いつでもいつでもエキサイトしちゃうとそのリバウンドで…」
また、恵さんが「これは凄い言葉でした」と言うのが、「負けの原因は自分で作る。勝ちの要因は相手がくれる」という言葉。岩出さんはこんなことをおっしゃっていました。「チームに自信をつけさしてあげたいとか、もっとレベルの低いことを言うと、勝ちたいだけだったら、弱いチームとやればいいんですよ。でも、必ず公式戦では選べない、練習試合は選べますけど。そうすると、必ず壁にぶち当たりますから、そこでボロが出ますよね」
「相手によって左右されることばっかりに気が行ってしまうと…例えば天候もそうですし、審判もそうですし、チームだけではなくて…コントロールできないんですよね。でなくて、コントロールできることに目を向ける方がいいであろうと。それを上手く、しっかりコントロールしていけば、まず自分たちのベストが出て、相手のベストと我々のベストが出た時に、本当に強いチームだけが勝ち残るんで、その試合の前から相手のことばっかり意識するよりは、まず自分の力を出せることに進んでいけるんじゃないかと思ってますね」
そんな岩出さんにラグビーの魅力について伺うとこんな答えが返ってきました。「人生と似ているような感じがしますよね。しんどいこともしないといけないし、目立たないところでしっかりと頑張らないといけないし、目立つ選手もいれば、目立たないポジションもありますし。かつ、グラウンドに出れば、指導者が身近にいなくて、本当に自分たちでまとまっていかないといけない。で、その中心に自分自身がしっかりとした考えと行動をできる力を持っていないといけない…そういう内面の文化と、激しさとか集中力とかも合わさったところにラグビーの芯の部分の魅力があるんじゃないかと感じますよね」
帝京大学のラグビー部では、掃除したりするのは4年生の役割で、学年が上がるにつれて仕事が増えていくんだとか。そして、一番最初にグラウンドからいなくなるのは1年生。「4年間の中で一番余裕のない時期、余裕のない学年って誰かなと思ったら、やっぱり1年生なんですよね。家庭では今、保護者の方も凄く大事に育ててますけど、放りっぱなしにされてない分だけ、逆に身についてない部分もあると思うんですよね。そういう意味じゃ、自主性というか自分でしっかり行動していく力にはちょっと欠けている学生も多いですよね、最初、1年生には」
大学の体育会系と言えば、縦社会で先輩が怖いイメージ。実際に帝京大学のラグビー部でも長らくそういう空気だったそうですが、岩出さんはそういう雰囲気に一石を投じました。
「なんで成長しないんか?なんで考えないんか?って思うと、余裕がない時の1年生、2年生のことが凄く多くて。上級生になって急に頑張ろうと思ってもちょっと手遅れなんですよね。4年間頑張るっていうことがとても大事で、4年間の中の努力が積み上がっていくと、うちの選手のように体も大っきくなるし、いろんなことの思考も深くなるし、なによりも先輩が頑張ってくれる姿を見てイメージ化されているので、自然と上級生になった時にいろんなことをやれるんですよね」
「4年間は未来のためのレッスンなんですよね。卒業したらすぐ4月からまた新しい環境で厳しさを乗り越えていかないといけないんですよね。あぐらをかいた4年生では成り立たないですよね。なによりもそれが忙しいとか嫌だっていうんじゃなくて、HONORですよね。名誉とか素晴らしい姿とか、そういう形だと思うんですよね」
来週も引き続き、帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之さんをお迎えします!
